海外の特許を特許分類から調べる

海外の特許を特許分類から調べる方法を紹介します。
特許分類とは、特許出願された発明の内容や技術分野を明確に区分し、審査や調査を容易にするための、特許資料に関する独自の分類のことです。

1. 海外の特許分類

海外の特許分類には以下のようなものがあります。

1-1. 国際特許分類(IPC)

国際特許分類(International Patent Classification:IPC)は、特許文献(特許内容を掲載した文献)の国際的な利用の円滑化を目的に作成された世界共通の特許分類で、100か国以上で採用されています。
特許文献の「Int.Cl.」(IPCの公式な略語)の項に記載されており、IPC第8版(2006年1月発効)が最新の分類ですが、技術の進展に柔軟に対応するため適宜改正が行われています。

特許庁ホームページの「国際特許分類(IPC)について外部サイト」では、IPC第8版の概要やIPC分類表および更新情報などを公開しています。
IPCは、全技術分野を8つのセクション(A,B,C,D,E,F,G,H)に分類し、このセクションをクラス、サブクラス、メイングループ、サブグループへと展開することで、より詳細に特許技術を特定します。

IPCの構成例:C04B35/64の場合

「C」、「04」、「B」、「35」、/に続く「64」が、それぞれセクションからサブグループまでに対応します。

Cセクション化学;冶金
04クラスセメント;コンクリート;人造石;セラミック
Bサブクラス石灰;マグネシア;スラグ;セメント;その組成物
35メイングループ成形セラミック製品;セラミック組成
64サブグループ焼成または焼結方法

1-2. 欧米共同特許分類(CPC)

欧米共同特許分類(Cooperative Patent Classification:CPC)は、欧州特許庁(European Patent Office: EPO)と米国特許庁(United States Patent & Trademark Office:USPTO)が共通して採用する特許分類で、2013年1月1日に発効しました。
国際特許分類(IPC)のサブグループ末尾に数字を付加することで、IPCよりも細かい分類を可能としています。なお、CPCのセクションは、IPCの8セクションにYを加えた計9セクションから成り、日本でも一部の特許にCPCが付与されています。

CPCの構成例:IPCがB60K7/00の場合
IPCの例B60K7/00牽引車輪内または牽引車輪に隣接するモータの配置
CPCの例①B60K7/0007牽引車輪内または牽引車輪に隣接するモータの配置>電気式のモータ
CPCの例②B60K7/0015牽引車輪内または牽引車輪に隣接するモータの配置>油圧式のモータ
CPCの例③B60K7/0023牽引車輪内または牽引車輪に隣接するモータの配置>空圧式のモータ

欧州特許庁が提供するEspacenetの「Classification search外部サイト」で、キーワード(英語)等からCPCを特定することができます。

1-3. 欧州特許分類(ECLA)

ヨーロッパ特許分類(European Classification:ECLA)は、かつて欧州特許庁(EPO)が採用していた特許分類です。ELCAは、国際特許分類(IPC)をベースとしたもので、IPCサブグループ末尾に数字とアルファベットを交互に付加することで、IPCよりも細かい分類を可能としています。
2013年1月1日以降は、米国特許分類(USPC)と統合し、欧米共同特許分類(CPC)へ一本化したことで、過去に付与されてきたECLAは機械的にCPCへ変換されています。

ELCAとCPCの対応表(コンコーダンス)は、欧州特許庁の「CPC Concordances外部サイト」から確認できます。

1-4. 米国特許分類(USPC)

米国特許分類(United States Patent Classification:USPC)は、かつて米国特許庁(USPTO)が採用していた特許分類です。「422/1」のように、先頭の数字(クラス)とスラッシュ以降の数字(サブクラス)から成ります。
USPCは、欧米共同特許分類(CPC)への移行により、2014年12月31日をもって実質的に廃止されています(ただし、デザイン(意匠)特許や植物特許は例外的に引き続きUSPCが設けられ、それぞれ先頭にD、PLTの文字が付加されます。(例:D18/37))。

USPCの分類の定義などは、米国特許庁ホームページの「Classification Symbol Lookup外部サイト」で調べることができます。

1-5. 日本語から海外特許分類を検索できるツール

日本語から海外特許分類を検索できるツールには以下のようなものがあります。

  • 特許・実用新案分類照会(PMGS)外部サイト
    独立行政法人 工業所有権情報・研修館が提供するデータベース、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)外部サイト内のコンテンツで、「コード照会」および「キーワード検索」のタブがあります。
    「コード照会」では、検索対象を「IPC(最新版)」とし、検索ボックスに最新版のIPCを入力して照会することで分類の説明(日本語)を参照できます。
    「キーワード検索」では、検索対象を「IPC(最新版)」とし、検索ボックスにキーワード(日本語)を入力して検索することで、対応するIPCを調べることができます。
  • 分類対照ツール外部サイト(特許庁)
    「キーワード検索」の検索ボックスから、キーワード(日本語)に対応するIPC、FI(日本の特許庁が採用する独自の特許分類)およびCPCを検索することができます。
    このほか、IPC、FI、CPCの対応関係を表示させることもできます。

2. 海外の特許を特許分類から調べるツール

海外の特許を特許分類から調べることのできるツールには、以下のようなものがあります。3.で具体的な検索例も紹介します。

  • Espacenet外部サイト(European Patent Office)
    欧州特許庁が提供するデータベースです。欧州特許(EPO特許)のみならず、欧州各国の特許、米国特許、PCT特許、日本特許など、1782年以降の1億5000万件を超える特許を収録しています(2024年7月現在)。
    IPCまたはCPCから、以下のように検索できます。
    • IPC:検索ボックスに、「ipc=」に続けて記号を入力して検索
    • CPC:検索ボックスに、「cpc=」に続けて記号を入力して検索
  • Patent Public Search外部サイト(The United States Patent and Trademark Office:USPTO )
    米国特許庁が提供するデータベースです。1790年以降の米国特許および2001年以降の米国特許公開公報を収録しています。
    Advanced Search外部サイトでは、Suffix(接尾辞)を用いて、IPC、CPCまたはUSPCのクラスから検索できます。
    • IPC:Search欄に、記号に続けて「.ipc.」と入力して検索
    • CPC:Search欄に、記号に続けて「.cpc.」と入力して検索
    • USPCのクラス:Search欄に、クラスに続けて「.clas.」と入力して検索
  • PATENTSCOPE外部サイト(World Intellectual Property Organization : WIPO)
    世界知的所有権機関が提供するデータベースです。約490万件の公開済みPCT国際出願を含む、約1億1,700万件の特許文献を収録しています(2024年7月現在)。
    IPCから、以下の手順で検索できます。
    ① 検索条件から「Int. Classification(IPC)」を選択
    ② 検索ボックスに記号を入力して検索
  • Google Patents外部サイト
    Googleによる特許データベースです。100を超える世界中の特許発行機関が発行した特許公報等が収録されています。
    CPCから、以下のように検索できます。
    • 検索ボックスで、「CPC=()」のカッコ内に記号を入力して検索
  • Derwent Innovation Index外部サイト(当館契約データベース:館内限定)
    クラリベイト社が提供する特許データベースです。1963年以降の、約60の世界中の特許発行機関の特許情報を収録しています。特許情報には、独自の英語タイトルと英語抄録が付与されています。
    IPCまたは独自の特許分類である「マニュアルコード外部サイト」から、以下の手順で検索できます。
    ① 検索条件から「国際特許分類コード」または「ダウエントマニュアルコード」を選択
    ② 検索ボックスに記号またはマニュアルコードを入力して検索

3. 検索例:インスタントコーヒーの製造に関する海外の特許

検索例として、インスタントコーヒーの製造に関する海外の特許を、「2. 海外の特許を特許分類から調べるツール」で紹介した各種データベースで特許分類から調べる方法を紹介します。

検索のポイント

(1) 「インスタントコーヒーの製造」に対応するIPCおよびCPCを調べる

特許庁の「分類対照ツール外部サイト」を使います。
キーワード検索の検索ボックスに「インスタントコーヒー」と入力し、検索ボックス右方の「IPC」および「CPC」にチェックを入れ、検索します。
検索結果からIPC、CPCとも「A23F5/24」が「インスタントコーヒーの製造」に対応する分類記号であることがわかります。

(2) IPCおよびCPCを用いて各種データベースを検索する

該当の分類番号が付与されている特許の一覧が表示されます。
※ データベースによっては、「A23F5/24」で検索した結果に、下位分類(例:A23F5/26、A23F5/36など)が付与されている特許文献が含まれている場合があります。

  • Espacenet外部サイト
    ページトップの検索ボックスに「A23F5/24」と入力して検索します。
    IPCまたはCPCのどちらかに限定して検索する場合、検索ボックスに「ipc=A23F5/24」または「cpc=A23F5/24」と入力して検索します。
  • Patent Public Search外部サイト
    Search欄に、IPCの場合は「A23F5/24.ipc.」、CPCの場合は「A23F5/24.cpc.」と、それぞれSuffix(接尾辞)を付して入力し、検索します。
  • PATENTSCOPE外部サイト
    トップページの検索条件から「Int.Classfication(IPC)」を選択し、検索ボックスに「A23F5/24」と入力して検索します。
  • Google Patents外部サイト
    トップページの検索ボックスに「CPC=(A23F5/24)」と入力して検索します。
  • Derwent Innovation Index外部サイト(当館契約データベース:館内限定)
    トップページの検索条件から「国際特許分類コード」を選択し、検索ボックスに「A23F-005/24」と入力し、検索します。
    ※Derwent Innovation IndexをIPCから検索する際には、IPCのサブクラスのアルファベットの後に「-」を入れ、メイングループの数字を3桁で入力します。
    例:C04B35/64 → C04B-035/64

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