並列タイトル等Effect of cellular senescence on osteoblast differentiation of mesenchymal stromal cells
一般注記[要旨]加齢に伴い, 骨量が減少し骨髄脂肪が増加することが知られている.この原因として,細胞老化が骨芽細胞への分化を抑制し,脂肪細胞への分化を促進するためであると考えられている.しかし,細胞老化が間葉系間質細胞の骨芽細胞への分化を抑制する機構は,十分に解明されていない.我々は骨髄間質系株化細胞であるST2細胞の骨芽細胞分化に及ぼす細胞老化の影響を検討した.ST2細胞を55回以上継代し,細胞老化を誘導した.この継代数55回以上 (late passage) のST2細胞の性質を継代数8回以下 (early passage) の ST2細胞と比較した.Late passage ST2細胞はearly passage ST2細胞と比較し,顕著な細胞増殖の低下を示した.また,老化マーカーであるSenescent-Associated β-Gal (SA-β-Gal) 染色陽性を示した.リアルタイムPCR解析の結果late passage ST2細胞は老化マーカーp16 mRNA,p21 mRNAの発現が増加し,Lamin B1 mRNAの発現が減少した.これらの結果からlate passage ST2細胞は細胞老化を呈することが示唆された.次に,ST2細胞を石灰化誘導培地で培養すると,late passage ST2細胞は石灰化不全を示した.Early passage ST2細胞をWnt3aで刺激するとアルカリホスファターゼ活性が誘導された.一方,late passage ST2の培養では,Wnt3aによるアルカリホスファターゼ活性の誘導が低下した.Wnt3a誘導性が減少する原因を検討するためにWnt/β-カテニンシグナル阻害因子の遺伝子発現を調べるとlate passage ST2細胞においてDkk1 mRNAの発現が上昇した.CHIR99021を用い,Wnt/β-カテニンシグナルを活性化させると継代数にかかわらずアルカリホスファターゼ陽性細胞が増加した.late passage ST2細胞へsi-Dkk1を導入するとDkk1 mRNAの発現量が減少しWnt3aへの感受性が改善された.他の老化誘導方法 (p16あるいはH-Ras G12Vの過剰発現) を行ったST2細胞において老化マーカーやDkk1 mRNA発現の上昇が確認できた.また,p16やH-Ras G12Vの過剰発現による細胞老化誘導されたST2細胞においてWnt3aによるアルカリホスファターゼ活性の誘導は低下した.以上の結果から細胞老化を誘導されたST2細胞はDkk1の発現が上昇し,Wnt誘導性のアルカリホスファターゼの発現が低下することで骨芽細胞への分化が抑制される可能性が示唆された.
2022
identifier:甲第250号
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受理日(W3CDTF)2022-11-07T16:56:35+09:00
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