Alternative TitleStudy of Introducing Social Networking Sites into Enterprises
Note (General)本研究は、企業がSNSを導入する効果を明らかにし、効果的な導入指針を提案することを目的とする。近年、インフォーマル・コミュニケーションを促進するためのITツールとして、注目をされているのが、SNS(Social Networking Sites)である。SNSは物理的な制約はなく、手軽に導入することができるため注目されており、多くの企業で人間関係構築や情報・知識共有等の効果を期待し、企業内SNSを導入しているが、失敗する事例も散見されている。そこで、本研究は、企業内SNSを導入する効果を明らかにし、効果的な導入指針を提案することを目的とした。本研究にて得られる指針は、管理者にとっては、メリット、デメリットを適切に把握した効果的な運用を可能にすることが期待される。また現在企業内SNSの導入を検討している企業に対しても、企業内SNSを使いこなすための指針を提供することができる。本研究では、まず企業内SNSの利用実態を明らかにすることを課題とし、世界初とされる大規模企業内SNSがNTT東日本で導入された2005年以降の23社の企業内SNS導入事例報告を用い、企業内SNSの導入目的、活用方法、導入効果について文献調査を行った。その結果、企業内SNSの導入目的は、人間関係構築、情報・知識共有であり、導入初期からこの目的が変わっていないことを明らかにした。活用方法は、大企業だけでなく中堅・中小企業の企業内SNS導入が広がっていること、安価な汎用サービスが広がっていること、パソコンからのアクセスから、スマートフォンやタブレットからのアクセスへ広がっていることを明らかにした。次に企業内SNSが有効性を発揮している際にはどのような流れになっているのか、企業においてどのような役割を果たすことにより有効であるのかを明らかにすることを課題とした。そのために、実際に企業内SNSを導入している企業の企業内SNS管理者と利用者を対象に調査を行った。その結果、企業内SNSの有効性は、企業における意思決定過程の選択肢を得る洞察段階と最善の結果を得る選択段階で発揮され、意外性のある情報収集や選択基準を与えることを明らかにした。さらに有効に働く際の流れを組織の意思決定モデルであるサイモン-松田モデル(浅居(1988))とゴミ箱モデル(マーチ・オルセン(1986))に基づき、明らかにした。最後に企業内SNSは多くの利用者に利用されてその効果を発揮するため、利用者が利用しやすい環境にすることが重要であることが明らかになった。そこで、個人や企業属性によって感じるメリットやデメリットはあるのか、利用方法の違いによって感じるメリットやデメリットはあるのか、を明らかにすることを課題とした。そのために、実際に企業内SNSを利用している幅広い企業に所属する人を対象に調査を行い、その結果をもとに、デメリットを克服するための方法について考察した。調査の結果、個人や企業属性、利用方法の違いによってメリットやデメリットの感じ方が異なることを明らかにした。さらにデメリットを克服する方法として、マネジメント権限のある役職者(課長、部長)は、SNSに参加することができないといった利用体制を整備するなどの工夫をしている事例が参考になること、基本的に実名での利用をしつつも、一部のコミュニティでは、名前の表示をせず、事務局のオーナー以外は誰かを特定できないようにするなど、工夫をしている事例が参考になることを述べた。 最後に本研究をふまえて、企業内SNSを効果的に導入するための指針を考察した。導入目的については、例えば「社内の知り合いを増やすこと」「業務内容や業務状況を共有すること」など人間関係構築、情報・知識共有に関する目的を設定するとよいと考える。運営方法については、企業内SNSは場の形成が重要であるため運営者の工夫が必要であること、スマートフォン、タブレットをうまく活用することも効果につながると考える。本研究の独自性として、関連研究では、個々の企業または特定の業界に限定して効果を明らかにしていた。しかし、本研究は複数企業または複数業界にまたがる包括的な調査を行い、企業がSNSを導入する効果を、一般性の高い知見で明らかにした。また関連研究では、メリットにのみ着目されていたが、企業内SNSが利用されていない企業も存在する現状を考え、デメリットにも着目をして効果的な導入方法を提案したことがあげられる。本研究は、企業内SNSを導入するにあたり、明確な目的を設定したり、企業において果たす役割を述べたり、利用者に対して利用方法を明示したり、運営を工夫したりすることの重要性を示唆した。このようなことは企業内SNSに限らず様々な情報システムについてもいえることである。情報システムは、その導入目的や導入効果の明示、利用方法、運営方法も大切であることを示唆できたと考える。
2016
Collection (particular)国立国会図書館デジタルコレクション > デジタル化資料 > 博士論文
Date Accepted (W3CDTF)2017-01-01T19:17:28+09:00
Data Provider (Database)国立国会図書館 : 国立国会図書館デジタルコレクション