Note (General)本論文はMMIC技術を用いたマイクロ波ドハティ増幅器の小型化・広帯域化に関する技術の研究成果についてまとめたもので全五章からなる. 第一章の序論では,昨今の携帯電話の普及とそれに関するデジタル無線通信システムの発展について述べ,近年の携帯電話基地局装置用等の無線電力増幅器には低消費電力・高効率化,小型・広帯域化に向けた技術検討が必要である事を述べている.またそのために増幅器に求められる性能として高効率化技術,高ダイナミックレンジでの高効率化技術,小型化・高集積のためのMMIC化技術について述べている.特に高電力効率化のためには,基本波と並んで数次に亘る高調波の処理が重要であることを述べ,高電力効率特性の広ダイナミックレンジ化のためにはドハティ増幅器構成が優れていることを述べている. 第二章では,トランジスタ素子の信頼性を維持するとともに,マイクロ波高出力動作が可能となる内部整合回路に,更なる高電力効率動作実現させるために必要な高調波処理機能を付加した新しい高調波内部整合回路を提案している.まず,高効率増幅回路として注目されているが,高次の高調波処理回路を個別に設計しなければならないF級・逆F級増幅器に関し,トランジスタ近傍にて高調波処理を行うことができ,目的基本周波数の整合には影響を与えずに容易に扱う事が出来る内部高調波整合回路(IHN)についてその設計法を提案し,GaAs MMICプロセスを利用して試作し,特性を確認している.実際には低消費電力・高効率増幅素子として期待されているGaN HEMTに内部高調波整合回路を適用し,基本波整合がソース/ロードプル測定によって容易に行える事を確認し,内部高調波整合回路の有効性を確認している.また得られた高調波内部整合回路付GaN HEMTを用いて実際に逆F級増幅器を試作し,その特性について検証するとともに,内部高調波整合回路の影響によって生じる損失について検証を行っている. 第三章では,広い出力ダイナミックレンジにおいて高効率動作が期待でき,並列接続型に比べて挿入損失を軽減出来る直列接続型ドハティ増幅器に対し,負荷変調機能を有した整合回路技術を検討している.回路の実現にはGaAs MMICを用いることを前提とし,小型・広帯域に設計する事を検討している.MMIC化するにあり,小型実装に起因する基本周波数の2分の1の周波数に起因する奇モードの不安定性から生じる奇モードループ発振について考慮しなければならいことを見出している.さらにこのループ発振の発生について解析し,抑制するための回路設計法を提案している.この奇モードループ発振の抑制を実現した集中定数素子負荷変調回路を用いた広帯域直列接続型ドハティ増幅器MMICを設計・試作し,その評価結果について述べている.また,奇モードループ発振抑制技術を適用していない直列接続型ドハティ増幅器MMICとの比較を行い,広帯域特性を得るためには奇モードループ発振抑制技術が極めて有効であることを示している. 第四章では,四分の一波長線路を用いない負荷変調回路を有するドハティ増幅器において,ドハティ増幅器を構成するキャリア増幅器とピーク増幅器の飽和出力電力の不整合から生じるバックオフ時の効率特性の低下について解析している.また,この特性の低下を解決するために,キャリア増幅器に使用するトランジスタサイズとピーク増幅器に使用するトランジスタサイズを,両者の飽和出力電力が等価となるように変更した等飽和出力並列接続型ドハティ増幅器をGaAs MMICプロセスにて実際に設計・試作し,その効果を確認している. 第五章は結論で,以上の研究成果を総括している.このMMIC技術を用いた高効率増幅器の小型,広帯域化に関する研究は今後のデジタル無線通信システム用増幅器に求められている小型化,広帯域化,低消費電力化に貢献できることを示している.
2016
Collection (particular)国立国会図書館デジタルコレクション > デジタル化資料 > 博士論文
Date Accepted (W3CDTF)2017-07-03T04:10:06+09:00
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