Alternative TitleStudy on “Co-Traffic” as Community Management for Mobility
チイキ モビリティ オ ソダテル 「 Coコウツウ 」 ノ ケイセイ ニ カンスル ケンキュウ
Note (General)type:Thesis
地域住民の住生活とは、住居が確立することで完結されるものではない。住居内に留まらず、住居から外に出て、通学、通勤、通院、買い物、余暇活動などあらゆる外出機会が発生し、住生活を形成する要素となる。ただしいずれの外出目的を達成するには、住居と外出先を結び、住生活に必然的に伴うモビリティが確保される必要がある。そうしたモビリティを確保する手段として機能してきたものが、地域公共交通である。我が国においては地域公共交通の再生を求める中で、法制度の変遷に伴い、地域公共交通に関する取り組みが全国各地で展開されてきた。そうした中で、地域住民が利用者としての役割を超え、運営者として地域公共交通を主体的に運営していくという取り組みが発生している。しかし全国の地域公共交通の取り組み1,203件の調査により、主体性に関する認識は低く、特に地域公共交通計画においては地域住民の「参加」とはいえ形式的な内容に留まり、従来のように利用者としての役割にすぎない現状が明らかとなった。こうした関係は、北原の「つくる人」「たべる人」の考えに基づくと、行政や交通事業者・交通サービスの供給者「つくる人」から、地域住民・交通サービスの利用者「たべる人」へという一方通行的関係性にあるといえる。本研究において地域公共交通における「参加」「協働」を定義する意味でも、地域住民が実質的に運営に関与する交通システムに関して、全国の地域公共交通の取り組み1,203件より抽出したところ、67件に留まるという事実が明らかとなった。この67件より、持続可能性の観点から調査対象として8件を抽出し、交通サービスを単独で実施している4件、交通サービスを含む多様な事業を複合的に実施している4件に分類し、事例研究として実地調査およびヒアリング調査を実施した。いずれの事例からも、地域住民が利用者としての役割を超え自ら動かしていくという実質的な参加による運行体制、既存の公共交通とは異なる効果が明らかとなった。しかし一方で課題として、後継者不足など運営組織の存続性、運営における支出超過による公的補助金への依存がみられた。仮に補助金の支給が廃止となった場合、交通サービスも廃止となる危険性が潜んでいると考えられる。地域公共交通とは、公的補助金が不可欠という前提の下、行政や交通事業者が専門的に主体となり運行せざるを得ない現状がみられる。しかし北上市NPO法人くちないの事例では、公的補助金に依存することなく経営の安定化を図るための独自的な経営手法が明らかとなった。有償運送サービスの運行においては、既存の路線バスの利用へと接続することで公共交通機関を維持し、交通事業者と連携している。さらには有償運送サービスと路線バスの結節点に「店っこくちない」を開設し、待合環境を構築しながら、高齢者の買い物支援も実施しており、事業間での複合効果を創出している点も特徴的であめ。こうした有償運送サービスを含めた地域住民主体の取り組みは、北上市内の各地域で独自的に策定してきた地域計画において明確に位置づけられ、策定の上で行政と連携している。こうした双方向的な連携体制こそが、持続的な地域住民主体の運行体制へとつながると考えられる。そこで本研究において提起する新しい概念が「Co交通」(Co-traffic)である。「Co 交通」とは、行政や交通事業者のみならず、地域住民との連携により形成され、様々な主体の協働により地域モビリティを支える関係である。交通サービスの供給者である「つくる人」、交通サービスの需要者である「たべる人」、両者が協働の関係にあるというのは、これまでのようにモビリティを確保する・されるという一方通行の関係ではなく、両者の双方向のやりとりがあって始めて成立するものである。それゆえCoはCooperation, Community の意味を含む接頭語として、本概念に用いている。以上、本研究で目的としてきた持続可能な地域モビリティ形成に向けた方策となる地域住民主体の交通システムの運営体制とは、(1)独自的な経営手法による経営の安定化、(2)計画への位置づけによる公共性の確保、(3)「まち育て」への包括化、以上3点によるものである。その過程で行政や交通事業者をはじめとした多様な主体が関わり合うことで展開されていく新たな関係「Co交通」が形成される上で、究極の目的とは、地域モビリティを育て安心した移動の実現ではない。それによる地域住民の安心した住生活の実現、そして「交通まち育て」の実現である。少子高齢化及び人口減少という課題に向き合う中で「Co交通」は有益な概念となり、地域モビリティを育てる上での技術となり得る。地域モビリティが形成されることで、結果として住生活を総合的に支援する「Co交通」の仕組みこそ、地域住民の住生活の持続的な形成、ゆえに「交通まち育て」の形成につながるものである。
Collection (particular)国立国会図書館デジタルコレクション > デジタル化資料 > 博士論文
Date Accepted (W3CDTF)2017-07-03T04:10:06+09:00
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