Alternative TitleStudies on technologies to enrich video services in digital broadcasting
Note (General)日本のテレビジョン放送は,2000年に衛星デジタル放送,2003年に地上デジタル放送がそれぞれ開始され,2011年にはアナログテレビ放送からデジタル放送への移行が完了した.そして,現在のデジタル放送における映像サービスは,HDTVを中心として提供されている.映像サービスを今後さらに高度化しようとするとき,2DTV放送のいっそうの高画質化・高精細化と3DTV放送の導入が考えられるが,その実現において映像サービスの鍵となる要素技術は映像フォーマットと映像符号化方式であり,そのためには要求条件に基づくシステム設計が必要となる.本論文では,デジタル放送における映像サービスの高度化のための映像フォーマット,映像符号化方式,所要ビットレート等のシステム設計を行うことを目的に,現在のHDTV放送に比べてより高精細な2DTV放送,および,3DTV(二眼視差方式立体テレビ)放送を導入するための技術的条件を明らかにしている.そして,今後さらなる高度化を検討しようとする際に考慮すべき課題と検討方法を提言している.まず,衛星デジタル放送における2DTV映像サービスの高度化の検討においては,現在の衛星デジタル放送で提供されているHDTV以上の高画質・高臨場感サービスを実現するために,HDTVと比べて高精細化・広色域化した映像フォーマットを提案した.広色域化の方式としては,HDTVの表色系との互換性を備えつつ広色域化可能な方式を提案した.また,検討時点の最新の映像符号化方式であったMPEG-4 AVCを高精細な映像フォーマットに適用するために,符号化技術の動向を調査・予測し,目標とする導入時期においてその技術が実現可能であることを確認したうえで仕様を決定した.さらに,マルチフォーマットテスト画像を用いた符号化画質の主観評価実験によって,放送品質として十分な画質を得るための所要ビットレートを映像フォーマットごとに明らかにし,高度衛星デジタル放送の伝送容量の中で,高度化技術に基づくさまざまなサービス提供例を示した.これらの成果は,情報通信審議会答申や国の技術基準,ARIB標準規格に反映されている.HDTVを超える超高精細度映像ならびに広色域映像を放送方式に採用したのは,国際的にも初めてのことである.一方,3DTV映像サービスを既存の放送伝送路に導入するための検討においては,3DTVの左右両眼に対応する二つの映像をどのように符号化・伝送するかが放送方式選定の課題であった.そこで,本研究ではまず,3DTVに適用する映像符号化方式と2DTV放送との両立性の観点から,種々の3DTV放送方式を分類した.そして,3DTV放送方式の選択に関連する基本要求条件として,2DTV受信機での受信・表示の必要性,3DTV用符号化方式と2DTV用符号化方式の関係,3DTV番組制作と2DTV放送との関係の三つの条件を設定し,これらの基本要求条件に応じた3DTV放送方式を選定した.次に,要求条件に応じて選定した放送方式の所要伝送ビットレートを推定し,既存の放送伝送路(地上放送,BS放送,CS放送)に対してそれぞれ導入が可能と考えられる放送方式を選定した.さらに,符号化画質の評価実験によって,2DTVおよび3DTVの放送品質を確保しつつ既存の2DTV放送伝送路に導入可能な3DTV放送方式とその条件を明らかにした.本研究の検討結果に基づき,フレームコンパチブル方式による3DTV放送の運用ガイドラインがARIB標準規格に追加規定されているほか,今後,シェアードキャスト方式やMPEG-4 MVC方式による3DTV放送についても,事業者からの要望に応じて標準化が検討される予定である.本論文ではさらに,以上の成果に基づいて,今後の映像サービス高度化の検討プロセスについて議論した.今後さらにデジタル放送の映像サービスを高度化しようとする際には,新たな放送サービスが既存サービスからの移行を目的とするのか追加サービスなのか,導入しようとする伝送路は既存の放送伝送路なのか追加チャンネルなのか,さらには,既存の放送受信機でも視聴可能な後方互換性の要否が重要な前提条件となる.そして,これらの前提条件に基づき,方式選定に影響する要求条件の設定,要求条件に適合する技術方式の検討,技術方式の実現性の検討,主観評価実験による実証,の各ステップで順次検討する必要がある.以上,本論文は,デジタル放送における映像サービスを高度化する具体的事例として高精細の2DTV放送と3DTV放送の二つについて主観評価実験を行ないつつ技術的条件を明らかにしたとともに,今後高度化した新たな放送を導入しようとする際の検討方法を具体的に議論したものであり,将来の放送の高度化の検討においても参照されることが期待される.
2013
Collection (particular)国立国会図書館デジタルコレクション > デジタル化資料 > 博士論文
Date Accepted (W3CDTF)2018-01-02T17:18:43+09:00
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