Alternative TitleStudy on Address Power Reduction Methods for Electronic Displays in Consideration of Visual Masking Effect
Note (General)電子ディスプレイの消費電力削減は昔からの大きな研究テーマであるが，昨今の画素数の増加はアドレス駆動回路の電力の増加を促し，これを削減することが重要な課題となっている．本論文は，映像信号に視覚マスキングを主体とした視覚特性を利用した画像処理を施すことにより，画質を保持しながらアドレス駆動電力の削減を可能とする表示方式の構築と，その有効性を確認するために実施した主観評価実験についてまとめたものである．視覚マスキング効果の定量的評価手法，プラズマディスプレイおよびMEMS シャッター方式ディスレイのアドレス駆動電力の削減を目指した表示方式の構築について以下の7 章にまとめた．第1 章では，電子ディスプレイの消費電力の削減が求められている研究の背景と目的などを述べた．第2 章では，視覚マスキングの概要と先行研究において明らかにされている視覚マスキングの特徴を述べた．本論文で提案する手法では，アドレスデータを平滑化することで信号の遷移回数を減らし消費電力を低減する．この際に画素値の誤差（以降平滑化誤差と称する）が生じる．この平滑化誤差と背景画像との間に働く視覚マスキングについて考察した．平滑化誤差はランダムノイズに似た空間周波数特性を有する．平滑化誤差と背景画像との間で視覚マスキングが生じる要因について考察し，その中から本論文では空間周波数特性，コントラスト，平均輝度の3 つの特徴量に着目することにした．第3 章では，平滑化誤差と背景画像間の視覚マスキング効果を定量的に判定する手法を提案した．まず，コントラストと平均輝度をブロック状に段階的に変化させた画像を背景画像とし，それに平滑化誤差を想定した信号（白色ガウスノイズあるいはインパルスノイズ）を加え，その信号が視覚マスキングにより視認されなくなる平均画素値とコントラストの条件を求めた．なお2 つの刺激の空間周波数特性が一致する時に最も視覚マスキングが強くなるという知見に基づいて，コントラストと平均輝度を変化させた画像と加える信号の空間周波数特性は一致させている．次に自然画像において，求まった条件に該当する領域を抽出する手法を述べた．この領域のみでアドレスデータの平滑化処理を行うことにより画質の低下を防ぐことが可能となる．領域抽出のために，類似輝度セグメントと呼称する指標を導入した．これは，画像を局所的に類似した濃度を有するセグメントに分割し，セグメントの大きさで3 つの特徴量を間接的に取得できる指標で，3 つの特徴量を直接演算で取得するよりも容易に求めることができる．第4 章では，ノイズを含んだ画像からノイズを除去して画像を復元するという画像処理において，第3 章で提案した視覚マスキング領域抽出手法を応用しその効果の検証を行った．視覚マスキングの強さに従って画像をいくつかの領域に分け，領域ごとにノイズフィルタの強度を調整する．視覚マスキング効果によりノイズが視認されないと判定された領域では，スムージングを行わないことで，細かいテクスチャなどの高周波情報を保存できることを示した．これによりノイズが効果的に除去され，提案手法が有効であることを確認した．第5 章では，視覚マスキングにより平滑化誤差が視認されない領域の抽出手法をプラズマディスプレイに適用した表示方法を提案した．アドレスデータの平滑化を行う際に平滑化誤差が生じ画質劣化の原因となるが，抽出された領域のみでアドレスデータを平滑化することで，平滑化後の画質を維持しつつアドレス駆動回路の容量性負荷で生じる電力損失を削減する．241 枚の評価画像に提案手法を適用し，電力損失と比例関係にあるアドレスデータの遷移回数がおよそ50%削減できることを確認した．この結果から，アドレス駆動回路での電力損失を半減できる見込みを得た．また，主観評価実験により，平滑化後の画質は平均オピニオン評点が4 以上と高い評価であることを確認した．第6 章では，提案方式をMEMS シャッター方式ディスプレイへ応用し，アドレス駆動回路の電力を削減する表示方式を提案した．平滑化誤差が視認されない領域のみでサブフィールド間のアドレスデータを平滑化することで，1 フィールド期間のシャッターの開閉回数を減らし，シャッターを制御している静電容量型アクチュエータの駆動電力を削減する．241 枚の評価画像に提案手法を適用して，アドレスデータの平滑化後のシャッターの開閉回数の削減率がおよそ25%になること，および平滑化後の画像で画質が維持されていることを確認した．第7 章では纏めとして，本研究の成果，残された課題，および将来への展望について記した．
2016
Collection (particular)国立国会図書館デジタルコレクション > デジタル化資料 > 博士論文
Date Accepted (W3CDTF)2018-01-02T17:18:43+09:00
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