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博士論文
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DOI[10.24561/00019134]to the data of the same series
日本企業の設備投資不振の要因分析 : 成長期待、不確実性、失敗経験の影響
- Persistent ID (NDL)
- info:ndljp/pid/11659807
- Material type
- 博士論文
- Author
- 田中, 賢治
- Publisher
- -
- Publication date
- 2020
- Material Format
- Digital
- Capacity, size, etc.
- -
- Name of awarding university/degree
- 埼玉大学,博士(経済学)
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Note (General):
- type:text日本の設備投資は、いわゆるバブル経済崩壊後の1990 年代初めに落ち込んで以降、長期にわたり低調な状況が続いている。設備投資の規模を企業利益やキャッシュ・フローの大きさと比較すると、設備投資の低調さが浮き彫りとなる。2008 年に勃発した世界金融危機時にも設備投資は深く落ち込んだが...
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Digital
- Material Type
- 博士論文
- Author/Editor
- 田中, 賢治
- Author Heading
- Publication Date
- 2020
- Publication Date (W3CDTF)
- 2020
- Periodical title
- 博士論文(埼玉大学大学院人文社会科学研究科(博士後期課程))
- Degree grantor/type
- 埼玉大学
- Date Granted
- 2020-03-23
- Date Granted (W3CDTF)
- 2020-03-23
- Dissertation Number
- 甲第23号
- Degree Type
- 博士(経済学)
- Conferring No. (Dissertation)
- 甲第23号
- Text Language Code
- jpn
- Target Audience
- 一般
- Note (General)
- type:text日本の設備投資は、いわゆるバブル経済崩壊後の1990 年代初めに落ち込んで以降、長期にわたり低調な状況が続いている。設備投資の規模を企業利益やキャッシュ・フローの大きさと比較すると、設備投資の低調さが浮き彫りとなる。2008 年に勃発した世界金融危機時にも設備投資は深く落ち込んだが、2010 年度以降、設備投資の緩やかな増加傾向が続いている。しかし、企業利益の拡大ペースはそれよりも遥かに速く、この間、企業利益と設備投資との乖離は広がり続け、足元の乖離幅はかつてない水準に達する。それと同時に、企業の現預金保有の拡大が加速している。これらは世界金融危機以前には見られない現象である。企業収益が堅調にもかかわらず、なぜ設備投資が盛り上がらないのか。本稿では、このパズルを解き明かすために、世界金融危機以降の回復局面における設備投資の抑制要因について考察した。世界金融危機を乗り越えてからも設備投資の不振が続く現象は、日本だけに限った話ではなく、欧米でも設備投資の不振が議論の対象となってきた。先進各国の先行研究を紐解くと、設備投資の抑制要因として、①成長期待の弱さ、②不確実性、③コーポレート・ガバナンスの問題、④財務面での制約、⑤過去の設備投資の失敗経験、が浮かび上がってくる。一方、日本で議論の中心となったのは、保守的経営とコーポレート・ガバナンスの役割である。しかし、先行研究ではそれらの設備投資への負の影響を認めつつも、設備投資の下押し圧力をそれだけに求めることはできないという論調が多く、加えて、世界金融危機以降の回復局面には、これらの影響が和らいだ可能性が指摘されている。日本企業を対象としたこれまでの実証研究では、欧米で議論の中心となった、成長期待の低下や不確実性の影響などの議論が不足しており、包括的な検証が不十分であると言わざるを得ず、設備投資が力強さを欠く最大の要因が何かについては判然としない。そこで、様々な角度から設備投資の抑制要因を実証分析することで、設備投資が力強さを欠く主たる原因は何かを明らかにすることを目的とした。採用した分析手法は、上場企業のパネルデータを用いた設備投資関数の推定である。先行研究を踏まえた議論から浮かび上がってきた5 つの要因の影響を包括的に分析するために、新古典派の標準的な投資理論に基づき設備投資関数を導出した。具体的には、Abel and Eberly(1994)で展開された、不確実性を考慮に加えた設備投資行動のモデルをベースとして、トービンのq 型の設備投資関数を導き出し、この設備投資関数に5 つの抑制要因を説明変数として導入することで、設備投資が力強さを欠く理由を検討することとした。対象期間は、設備投資が異常に盛り上がったバブル経済期の影響を排除するためバブル崩壊後の1993 年度から2015 年度とし、23 年間にわたる上場企業のパネルデータを構築し、設備投資関数の推定を行った。主たる分析手法は、この設備投資関数の推定であるが、不確実性が設備投資へ及ぼす影響と、過去の設備投資が企業パフォーマンスへどのような影響を及ぼしたかについては、別途分析を行った。これらの実証分析によって得られた結論は以下の通りである。まず、投資機会を表すトービンのq は2012 年度以降上昇傾向にあるため、成長期待の低下によって設備投資が抑制されたわけではないが、企業収益の堅調な拡大に比べトービンのq は見劣りし、堅調な企業収益が今後も持続することを織り込むような成長期待を企業が抱いているわけではない。設備投資に力強さが戻ってこない背景には、以上のような成長期待の回復の弱さがあるとみられる。こうした中、不確実性が設備投資の下押し圧力の一つとして指摘できる。不確実性は、世界金融危機直後の急拡大から2015 年度にかけて落ち着いてはきたが、依然、不確実性が設備投資を先送りできるオプション価値を高めることで、トービンのq が上昇しても設備投資に結びつかない不活性領域を拡大させ、設備投資へ負の影響を及ぼしている。不確実性の影響はこれだけにとどまらない。世界金融危機以降、トービンのq に対する設備投資の感応度が以前よりも低下し、トービンのq の上昇が設備投資に反映されにくくなっている。この背景として、不確実性の存在によって設備投資の意思決定のための調整コストが上昇した可能性が指摘できる。このように、不確実性は複数の経路を通じて、設備投資へ負の影響を及ぼしたと考えられる。不確実性が設備投資へ負の影響を及ぼす理論的なメカニズムを詳細に見ていくと、「製品の市場競争度」の程度と「設備の不可逆性」の大きさが、不確実性による負の影響を大きく左右することが分かる。そこで、これら2 つの産業特性に焦点を絞り、不確実性が設備投資へ及ぼす影響と産業特性との関係について製造業を対象に実証分析を行ったところ、以下の結果が得られた。まず、製品の市場競争度については、市場競争度が低い産業の方が、不確実性が設備投資に対して及ぼす負の影響が強いという結果が得られた。これは、競争相手に先を越される懸念から生じるfirst mover advantage の効果が市場競争度によって異なり、市場競争度の低い産業ではその効果が相対的に小さく、投資を先送りさせるオプション価格が高くなるということを示すものである。次に、設備の不可逆性の大きさが、不確実性の設備投資を抑制する効果に影響するかを検証したところ、設備の不可逆性が大きい産業で、不確実性が設備投資を抑制する効果が強いという結果が得られた。設備投資に部分的な可逆性がある場合、設備投資を先送りするコール・オプションの価値は、同時に発生する負の設備投資を先送りするプット・オプションの価値によって減じられ、このネットの効果は不可逆性の程度に依存する。以上の結果は、設備の不可逆性が大きい産業の方がプット・オプションの効果が小さいため、不確実性による設備投資に対する負の影響が強く働くということを示唆するものである。設備投資の下押し圧力として、もう一つ指摘しておくべきは、過去の設備投資の失敗経験である。過去の大型投資がその後の企業パフォーマンスへ及ぼした影響を明らかにするため、大型投資を実施した企業群と、それらの企業と同じような企業属性を持ちながら大型投資を実施していない企業群を、Propensity Score Matching(PSM)の手法を用いてマッチングし、Difference in Difference(DID)の手法で検証したところ、2000 年代半ば以降の大型投資は企業収益の改善には結びついておらず、むしろ悪化の方向へ作用したことが分かった。このことは、2000 年代半ばから2008 年頃に盛り上がった大型投資は、世界金融危機時の需要の落ち込みに伴い、収益面で足を引っ張る存在となったことを示唆する。リスクをとって大型投資を行っても、それが収益を生まず投資負担が残ったという経験が、その後の設備投資の意思決定に負の影響を及ぼした可能性がある。一方、財務面での制約も設備投資の下押し圧力だが、近年の企業収益の拡大に伴い財務健全性が増していることから、全体としてはその圧力は弱まっているとみられる。また、現預金が潤沢な企業では、トービンのq に対する設備投資の感応度があまり低下しておらず、保有する現預金が待機資金として機能したとみられるが、同時に、現預金の潤沢でない企業については、投資の意思決定が抑制された可能性もある。コーポレート・ガバナンスについては、設備投資全体に対しての影響を統計的に確認することはできなかったが、大型投資を行う際にはその意思決定に影響を及ぼした可能性が指摘できる。少数株主に持ち株が集中する場合には、株主による規律づけが過剰な投資を抑制する方向に働き、外国人株主による規律づけは、積極的な投資姿勢を促したとみられる。こうした傾向は2000 年代に入り強まった可能性がある。以上をまとめると、世界金融危機以降の2010 年代の回復局面において、企業収益が堅調にもかかわらず設備投資が力強さを欠く主たる要因として、以下の3 つを指摘できる。第1 に、成長期待が十分に高まっていないことである。すなわち、堅調な企業収益が今後も持続することを織り込むような成長期待を企業が抱いているわけではなく、この成長期待の回復の弱さが、設備投資の回復を抑制したとみられる。第2 に、不確実性の影響である。不確実性は世界金融危機直後の急拡大から2015 年度にかけて落ち着いてはきたが、設備投資への負の影響が残っている。不確実性は、設備投資を先送りできるオプション価値を高める経路だけでなく、設備投資の意思決定のための調整コストを押し上げる経路を通じて、設備投資へ下押し圧力をかけてきた。第3 に、過去の設備投資の失敗経験である。2000 年代半ばの大型投資が世界金融危機後に十分な利益を生み出さなくなったため、その失敗経験が以降の投資判断に負の影響を及ぼしたと考えられる。図表リスト ............................................................................................................................ⅶ序論 ........................................................................................................................................ 1第 1 章 設備投資の動向と先行研究 ................................................................................... 8はじめに ................................................................................................................................. 8第1節 1980 年代以降の設備投資の回顧 ........................................................................... 8第2節 設備投資の抑制要因についての先行研究 ............................................................ 17小括 ........................................................................................................................................ 22第2章 分析の枠組みと予備的考察 .................................................................................. 24はじめに ................................................................................................................................ 24第1節 分析の枠組み ......................................................................................................... 24(1)問題設定 ................................................................................................................. 24(2)分析モデル ............................................................................................................. 26(3)設備投資関数の特定化 .......................................................................................... 28第2節 分析に使用するデータの解説 ............................................................................... 30(1)対象サンプル ......................................................................................................... 30(2)トービンのq の計測 .............................................................................................. 32(3)不確実性の計測 ...................................................................................................... 35(4)大型投資の定義 ...................................................................................................... 38(5)データの基本統計量 .............................................................................................. 41第3節 予備的考察 ............................................................................................................. 43(1)説明変数がトービンのq だけのケース ................................................................ 43(2)説明変数を1 つ追加したケース ........................................................................... 45(3)時間固定効果 ......................................................................................................... 47小括 ........................................................................................................................................ 48補論1 投資の調整費用に非対称性を導入したケース ..................................................... 50補論2 データの作成方法 .................................................................................................. 51第3章 不確実性が設備投資へ及ぼす影響 ........................................................................... 55はじめに ................................................................................................................................ 55第1節 不確実性下の設備投資についての先行研究 ........................................................ 55第2節 仮説の設定とその理論的背景 ............................................................................... 58(1)実証分析の理論的背景 .......................................................................................... 58(2)仮説の設定 ............................................................................................................. 60第3節 分析モデル ............................................................................................................. 62(1)設備投資関数の導出 .............................................................................................. 62(2)産業特性を表す指標 .............................................................................................. 63第4節 実証分析 ................................................................................................................. 67(1)基本ケース ............................................................................................................. 67(2)製品の市場競争度の影響....................................................................................... 69(3)設備の不可逆性の影響 .......................................................................................... 72小括 ........................................................................................................................................ 75第4章 設備投資が企業パフォーマンスへ及ぼす影響 ........................................................ 76はじめに ................................................................................................................................ 76第1節 大型投資の規模 ...................................................................................................... 76第2節 分析の枠組み ......................................................................................................... 78(1)分析手法 ................................................................................................................. 78(2)期間分割 ................................................................................................................. 80第3節 大型投資の決定要因 .............................................................................................. 81(1)Probit モデルの推定 ............................................................................................... 81(2)マッチング ............................................................................................................. 82第4節 DID(Difference in Difference)分析 ..................................................................... 84小括 ........................................................................................................................................ 86第5章 設備投資の抑制要因 .................................................................................................. 87はじめに ................................................................................................................................ 87第1節 設備投資関数の推定 .............................................................................................. 87第2節 トービンのq に対する設備投資の感応度低下 ..................................................... 91(1)交差項の導入 ......................................................................................................... 91(2)推定結果 ................................................................................................................. 92第3節 頑健性のチェック .................................................................................................. 98小括 ...................................................................................................................................... 102結論 ......................................................................................................................................... 103謝辞 ......................................................................................................................................... 109参考文献一覧 .......................................................................................................................... 110指導教員 : 長田健
- DOI
- 10.24561/00019134
- Persistent ID (NDL)
- info:ndljp/pid/11659807
- Collection
- Collection (Materials For Handicapped People:1)
- Collection (particular)
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- Acquisition Basis
- 博士論文(自動収集)
- Date Accepted (W3CDTF)
- 2021-04-07T03:01:57+09:00
- Date Created (W3CDTF)
- 2021-01-12
- Format (IMT)
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