Alternative TitleAnalysis of BMP-2-induced ectopic bone in sclerostin-deficient mice
Note (General)要旨歯周炎は進行に伴い歯槽骨が吸収し,歯の喪失につながる疾患である.しかし現在の歯科治療では,高度に吸収された骨を完全に回復することは困難であり,歯槽骨の再生治療の発展が期待されている.近年,骨細胞から分泌されるスクレロスチンは,Wnt/β-cateninシグナルを阻害し骨形成を阻害するタンパク質であることが報告された.スクレロスチンをコードするSOST遺伝子の喪失は頭蓋骨における骨の過形成を特徴とする硬結性骨硬化症を引き起こす.スクレロスチンの働きを阻害する抗スクレロスチン抗体は骨形成を促進して骨量を増加することが報告されている.しかし,骨再生におけるスクレロスチン抑制の影響についての詳細は不明である.一方,骨誘導因子 (Bone morphogenetic protein 2,BMP-2) は,骨基質中に存在し,異所性骨形成を誘導するタンパク質である.本研究では,BMP-2誘導性異所性骨におけるスクレロスチン発現を検討する.更に,スクレロスチン欠損マウスにおいて異所性骨を作製し,その骨量や骨密度が増加するかを検討することを目的とした.Sostのプロモーター下に造礁サンゴ由来蛍光タンパク質 (Zs-Green) の遺伝子を挿入したSost-Greenレポーターマウス (SostG/+) が松本歯科大学総合歯科医学研究所にて作製された.このSostG/+マウスはExon1へのノックインマウスである.このノックインによりSost遺伝子が欠損したSost遺伝子ホモ欠損マウス (SostG/G) マウスを得た.コントロールマウス (Wild-type,WT) としてC57BL/6マウスを使用した.これらの8週齢雄マウスの右側大腿部内側の筋膜下に,BMP-2を浸漬した直径2 mmの円柱のコラーゲンペレットを埋入し,14日,28日後に誘導された異所性骨を採取した.マイクロCTおよび各種染色により,異所性骨の組織学的解析を行った.また,異所性骨におけるSost遺伝子発現の経時的変化やスクレロスチン欠損マウスに埋入した異所性骨の骨形成関連遺伝子への影響を検討するために,埋入後14日目の異所性骨のmRNA発現をreal-time RT-PCRにて解析した.また,骨芽細胞マーカーとして,アルカリホスファターゼ (Alkaline phosphatase,ALP) の免疫染色を行った.WTマウスのBMP-2ペレットを埋入後14日目に回収した異所性骨は,直径3-4 mmの球形の骨が形成された.埋入後28日目に回収したWTの異所性骨では,扁平な形状の骨が形成された.SostG/Gの異所性骨はWTと同程度の大きさだが,凸凹な形状の骨が形成された.外殻の骨組織の蛍光観察では,埋入後14,28日目のSostG/Gの異所性骨において,Zs-Green陽性の骨細胞を認めたが,WTのマウスでは,Zs-Green陽性の骨細胞は認められなかった.スクレロスチンの免疫染色では,BMP-2ペレット埋入後14,28日目のSostG/Gの異所性骨においてスクレロスチン陽性骨細胞は認めなかったが,WTにおいてスクレロスチン陽性の骨細胞を認めた.以上より,WTマウスのBMP-2誘導性異所性骨ではスクレロスチン陽性骨細胞が出現するが,SostG/Gマウスの異所性骨ではスクレロスチン陽性骨細胞は消失していた.real-time RT-PCRによる解析では, WTの異所性骨においてSost遺伝子の発現は,埋入後7日目では検出されず,10,14,28日目に検出され,14日目にピークを示した.マイクロCTを用いて,形成された異所性骨の骨量と骨塩量を定量的に解析した.埋入後14日目の異所性骨のマイクロCT水平断面画像より,異所性骨の外殻に多孔質な石灰化像を認めた.WTと比較してSostG/Gの異所性骨のBV/TV (WT=4.59%,SostG/G=9.04%) とBMD (WT=468 mg/cm3,SostG/G=602 mg/cm3) は有意に増加した.埋入後28日目の異所性骨のマイクロCT水平断面画像より, BMPペレットを取り囲む外殻に層板様構造の石灰化像を認めた.WTと比較してSostG/Gの異所性骨のBV/TV (WT=5.27%,SostG/G=9.58%) とBMD (WT=763 mg/cm3,SostG/G=943 mg/cm3) は有意に増加した.以上の結果より,BMP-2ペレット埋入後14,28日目の異所性骨は,Sost遺伝子とスクレロスチンタンパク質が発現していた.スクレロスチン欠損マウスにおいて,BMP-2ペレット埋入後14日,28日目の異所性骨の骨量が増加した.このことから,歯槽骨の再生治療において,スクレロスチンの抑制は,骨量を増加させる可能性が示された.
2020
identifier:甲第235号
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Date Accepted (W3CDTF)2021-06-07T02:06:26+09:00
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