博士論文
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国立国会図書館デジタルコレクション
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糖尿病治療薬を用いた精巣毒性の機序検討
- Persistent ID (NDL)
- info:ndljp/pid/11864241
- Material type
- 博士論文
- Author
- 小林, 大起
- Publisher
- -
- Publication date
- 2021-09-30
- Material Format
- Digital
- Capacity, size, etc.
- -
- Name of awarding university/degree
- 麻布大学,博士(学術)
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Note (General):
- 背景医薬品開発では、臨床研究段階の前に実験動物を用いた毒性試験を実施することにより、候補化合物の特性を評価する。毒性試験においてしばしばみられる毒性の一つに精巣毒性がある。精巣毒性についてより深い理解を得ることは医薬品の開発を助け、社会に有益であると考えられる。低血糖は、糖尿病治療薬を使用する際に注...
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Digital
- Material Type
- 博士論文
- Title
- Author/Editor
- 小林, 大起
- Author Heading
- Publication Date
- 2021-09-30
- Publication Date (W3CDTF)
- 2021-09-30
- Alternative Title
- The study of the mechanism of testicular toxicity by using antidiabetic agents
- Degree grantor/type
- 麻布大学
- Date Granted
- 2021-09-30
- Date Granted (W3CDTF)
- 2021-09-30
- Dissertation Number
- 甲第80号
- Degree Type
- 博士(学術)
- Conferring No. (Dissertation)
- 甲第80号
- Text Language Code
- jpn
- Target Audience
- 一般
- Note (General)
- 背景医薬品開発では、臨床研究段階の前に実験動物を用いた毒性試験を実施することにより、候補化合物の特性を評価する。毒性試験においてしばしばみられる毒性の一つに精巣毒性がある。精巣毒性についてより深い理解を得ることは医薬品の開発を助け、社会に有益であると考えられる。低血糖は、糖尿病治療薬を使用する際に注意しなければならない副作用である。グルコースを主たるエネルギー源とする生殖細胞について、低血糖が引き起こす二次的な毒性が存在するかを検討した報告は少ない。そこで、実験動物における低血糖の精巣への影響を評価する必要があると考えられた。第一章及び第二章では、毒性試験において汎用される動物であるラットを用いて、異なるメカニズムを持つ2 種類の血糖低下薬(インスリン及びglucokinase 活性化剤TMG-123)を投与した際の血糖値を評価するとともに、精巣の病理組織学的検査及び精子検査や交配検査を実施し、低血糖と精巣毒性の関係を検討した。さらに、精巣毒性はTMG-123 の直接的な影響ではなく低血糖による二次的な影響であることを検討するために、第三章では、血糖低下薬を反復投与しても低血糖が起こらない条件として、糖尿病モデル動物にTMG-123 を反復投与して、血糖値測定及び精巣の病理組織学的検査を実施した。第一章 正常ラットにおける糖尿病治療薬インスリン投与に関する検討【材料及び方法】インスリンを雄性SD ラットの各群20 例に0(溶媒対照群)、100、200 及び400 U/kg/日(5 mL/kg、1 日2 回約4 時間間隔)の投与量で4 週間反復皮下投与した。溶媒対照群には生理食塩液を投与した。検査項目は、一般状態、体重、剖検、器官重量、病理組織学的検査、血糖値及び精子検査の算出とした。【結果及び考察】血糖値測定の結果、一般的にヒトにおいて低血糖とされる50 mg/dL 以下を示す個体がインスリン投与群において認められた。病理組織学的検査の結果、インスリン投与群の精巣に散在性の精細管変性が認められ、同一個体の精巣上体の管腔内には精細管変性に関連すると考えられる精上皮細胞の剥離が認められた。精子検査の結果、400 U/kg 投与群において、精子濃度及び精子形態異常総発現率にそれぞれ低値及び高値傾向がみられた。生殖細胞は、グルコース、及びセルトリ細胞によってグルコースから変換され供給されるラクトースを必要とすることが知られている。したがって、インスリンによって惹起される低血糖が精子形成に影響を及ぼし、その結果、病理組織学的検査及び精子検査において変化がみられた可能性が考えられた。第二章 正常ラットにおけるglucokinase 活性化剤TMG-123 投与に関する検討【材料及び方法】実験①(single dose study)TMG-123 を雄性SD ラットの各群6 例に0(陰性対照群及び溶媒対照群)、5、20、100、200 及び300 mg/kg/日(10 mL/kg、1 日1 回)の投与量で単回経口投与した。陰性対照群には注射用水、溶媒対照群にはポリエチレングリコール400 とゲルシア44/14 の容量比3:2 での混合物を投与した。検査項目は、血糖値、血中インスリン濃度及びTMG-123 の血中曝露とした。実験②(4-week repeated dose toxicity study)TMG-123 を雄性SD ラットの各群10 例に0(陰性対照群及び溶媒対照群)、5、20 及び100 mg/kg/日(10 mL/kg、1 日1 回)の投与量で4 週間反復経口投与した。検査項目は、一般状態、体重、剖検、器官重量、病理組織学的検査及びTMG-123 の血中曝露とした。実験③(13-week repeated dose toxicity study)TMG-123 を雄性SD ラットの各群8 例に0(陰性対照群及び溶媒対照群)、5、20 及び100 mg/kg/日(10 mL/kg、1 日1 回)の投与量で13 週間反復経口投与した。検査項目は、一般状態、体重、剖検、器官重量、病理組織学的検査、TMG-123 の血中曝露及び血糖値とした。さらに、投与後8 週間休薬したときの回復性を評価した(溶媒対照群及び100 mg/kg 群、6 例/群)。実験④(13-week repeated dose fertility study)TMG-123 を雄性SD ラットの各群20 例に0(陰性対照群及び溶媒対照群)、5、20 及び100 mg/kg/日(10 mL/kg、1 日1 回)の投与量で13 週間反復経口投与した。検査項目は、精子検査とした。さらに、雄の投与71 日以降に、同薬剤を同用量・用法にて15 日以上投与した雌と1 対1 で最長16 日間同居させ、交尾能と受胎能を検討した。【結果】実験①単回投与後の血糖値は、いずれのTMG-123 投与群においても速やかに低下した。また、単回投与後の血中インスリン濃度について、投与に関連した変化はみられなかった。単回投与後の血漿中TMG-123 のAUC0-24h 及びCmax は、100 mg/kg にて頭打ちであった。実験②血糖値測定の結果、被験物質投与群において用量の増加に応じた持続的な血糖値の低値を示した。血漿中TMG-123 のAUC0-24h 及びCmax は、用量の増加に伴って増加した。病理組織学的検査では、100 mg/kg 投与群において、精巣における散在性の精細管変性が観察され、それらの精巣上体の管腔内には、精細管変性に関連すると考えられる精上皮細胞の剥離が観察された。実験③血糖値測定の結果、被験物質投与群において用量の増加に応じた持続的な血糖値の低値を示した。血漿中TMG-123 のAUC0-24h 及びCmax は、用量の増加に伴って増加した。病理組織学的検査では、投与期間終了時の20 mg/kg 及び100 mg/kg 投与群において、精巣における散在性の精細管変性が観察され、それらの精巣上体の管腔内には、精細管変性に関連すると考えられる精上皮細胞の剥離が観察された。さらに、休薬期間終了時においても、精巣及び精巣上体に投与期間終了時と同様の所見が観察された。実験④100 mg/kg 群で精子形態異常発現率に高値が認められ、精子濃度及び精子自動性指数に低値傾向がみられた。一方、交尾能と受胎能については、いずれの被験物質投与群にも被験物質投与の影響は認められなかった。【考察】血糖値について、実験①の単回投与、実験②の4 週間反復投与及び実験③の13 週間反復投与後に速やかに低下することが確認された。特に、20 及び100 mg/kg の4 及び13 週間反復経口投与後の血糖値は、インスリン投与時と同様に、ヒトにおいて低血糖とされる基準の一つである50 mg/dL を下回る血糖値を示した個体がいたことから、TMG-123 の反復投与後に持続的な低血糖が引き起こされることが確認された。さらに、精巣の病理組織学的変化及び精子検査の異常がみられ、精子形成への影響が示唆された。第一章及び第二章において、インスリン及びそれとは異なる作用点を持つTMG-123 の両薬剤を投与した際に、いずれの場合も持続的な低血糖及び精巣毒性がみられたこと、並びに精子形成はグルコース代謝に大きく依存することがよく知られていることから、精巣でみられた変化は、低血糖が引き起こす二次的な毒性変化である可能性が考えられた。第三章 糖尿病モデルラットにおけるglucokinase 活性化剤TMG-123 投与に関する検討【材料及び方法】TMG-123 を糖尿病モデルラットであるGoto-Kakizaki(GK)ラットの各群10 例(雄性)に0(溶媒対照群)、12.5、25 及び50 mg/kg/日(10 mL/kg、1 日1 回)の投与量で4 週間反復経口投与した。検査項目は、血糖値、病理組織学的検査及びTMG-123 の血中曝露とした。【結果及び考察】TMG-123 のAUC0-24h 及びCmax は、12.5 mg/kg から50 mg/kg にかけて用量の増加に伴って増加した。GK ラットにTMG-123 50 mg/kg を投与した場合のAUC0-24h は、第二章において評価した正常ラットにTMG-123 100 mg/kg を投与した場合のAUC0-24h と同程度であった。投与1 及び28 日目の血糖値は、12.5 mg/kg から50 mg/kg 投与群において用量の増加に応じた低下が認められた。25 及び50 mg/kg においては、投与前の値と比較して50%以上の低下を示したが、ヒトにおいて低血糖とされる基準の一つである50 mg/dL 以下となる個体は認められなかった。病理組織学的検査において、TMG-123 投与に起因した変化は認められなかった。以上より、血糖低下薬を反復投与しても低血糖が惹起されない条件下では、血糖低下薬による精巣毒性はみられないことが確認された。総括及び結論第一章及び第二章にて用いた2 種類の血糖低下薬は、異なるメカニズムを持つものの、正常ラットに反復投与した両検討において持続的な血糖値低下及び精巣・精巣上体の病理組織学的変化がみられた。また、休薬期間終了時にも、同様の病理組織学的変化がみられた。さらに、精子検査における異常がみられた。精子形成は、グルコース代謝に大きく依存していることがよく知られており、雄性生殖細胞はその分化の各段階において、グルコースをエネルギー源として使用する。したがって、第一章及び第二章でみられた精巣毒性は、血糖低下薬による直接的な毒性ではなく、低血糖に起因する二次的な毒性である可能性が考えられた。第三章では、上記の可能性をさらに検討するために、血糖低下薬を投与しても低血糖が起こらない条件において精巣毒性がみられるかを検討するために、糖尿病モデル動物であるGK ラットにTMG-123 を反復投与した。その結果、TMG-123 の曝露は、第二章において正常ラットで低血糖及び精巣毒性がみられた曝露と同程度であることが確認されたものの、低血糖を示す個体はみられなかった。また、病理組織学的検査において、精巣にTMG-123 投与に起因した所見はみられなかった。これらのことから、血糖低下薬を反復投与しても低血糖が惹起されない条件では、精巣毒性はみられないことが確認された。以上より、ラットにおいて持続的な低血糖状態を惹起することにより、二次的な毒性として精巣毒性が引き起こされる可能性が示唆された。当該研究が明らかとした持続的な低血糖により二次的な精巣毒性が発生するという研究成果は、医薬品の非臨床毒性試験において、その候補品の毒性ポテンシャルを正確に評価する上で考慮すべき重要な情報であると考えられる。In pharmaceutical development, the characteristics of candidate compounds are evaluated by conducting non-clinical studies using laboratory animals before the clinical research stage. Toxicity study is one of the non-clinical studies, which is conducted to clarify toxicological signs such as target organs, dose dependency, relationship between changes and exposures, and reversibility of changes. Testicular toxicity is one of the most common toxicities. Gaining a deeper understanding of testicular toxicity will help pharmaceutical development and be beneficial to society. Germ cells use glucose as an energy source. There is only 1 report evaluating the effect of hypoglycemia, which lowers the glucose concentration in the blood, on germ cells. Therefore, it was considered necessary to evaluate the effect of hypoglycemia on the testis in laboratory animals. In this study, in order to investigate the effect of hypoglycemia on the testis, the experiments in the Chapters 1 to 3 shown below were carried out. In the Chapter 1, insulin was administered to normal rats, and the effects on the male reproductive organs were evaluated. As a result, in some animals the blood glucose levels were lower than 50 mg/dL, which is one of the criteria judged to be hypoglycemia in human and rat, and therefore it was confirmed that long-lasting hypoglycemia was induced. In addition, as a result of histopathological examination, scattered seminiferous tubule degeneration was observed in the testes in insulin-treated groups, and in the same animals exfoliation of germ cells in the lumen of epididymides, which was considered to be related to tubule degeneration, was observed. Furthermore, as a result of sperm analysis, a decrease in the sperm concentration and an increase in the incidence of sperm malformation were observed in the 400 IU/kg group. In the Chapter 2, multiple experiments in which normal rats were administered TMG-123 were conducted. TMG-123 is a glucokinase activator, which is an antidiabetic agent different from insulin used in the Chapter 1. TMG-123 is reported to affect on glucokinase mainly in liver and improve glucose tolerance by increasing hepatic glucose uptake rather than stimulating insulin secretion in the pancreas. First, it was confirmed that the blood glucose levels decreased rapidly after single administration and repeated administrations for 4 and 13 weeks. In particular, the blood glucose levels in some animals after repeated administration of 20 and 100 mg/kg for 4 and 13 weeks were below 50 mg/dL, which is one of the criteria judged to be hypoglycemia in human and rat, as in the case of insulin administration and therefore it was confirmed that long-lasting hypoglycemia was caused after repeated administration of TMG-123. Furthermore, as a result of histopathological examination, scattered seminiferous tubule degeneration was observed in the testes in the 100 mg/kg group after 4 weeks administration and the 20 and 100 mg/kg groups after 13 weeks administration. Exfoliation of germ cells in the lumen of epididymides, which was considered to be a secondary change, was also observed. Furthermore, similar findings were observed at the end of the recovery period, suggesting that these changes were poorly reversible. In addition, the sperm analysis showed an increase in the incidence of sperm malformation and decreases in the sperm concentration and the motility index. It is well known that spermatogenesis is highly dependent on glucose metabolism and male germ cells use glucose as an energy source. Therefore, it is likely that the testicular toxicity observed in the Chapters 1 and 2 was secondary toxicity caused by hypoglycemia rather than direct toxicity from hypoglycemic drugs.In the Chapter 3, in order to investigate whether testicular toxicity was observed under conditions where hypoglycemia did not occur even when hypoglycemic drugs were repeatedly administered, TMG-123 was repeatedly administered to Goto-Kakizaki rats (GK rats), which are diabetic model animals, for 4 weeks and histopathological examination of testes were conducted. As a result, it was confirmed that the exposure of TMG-123 was similar to those that caused hypoglycemia and testicular toxicity in normal rats in the Chapter 2, but no individual showed hypoglycemia. In addition, as a result of histopathological examination, no findings due to administration of TMG-123 were found in the testis. Based on these findings, it was confirmed that testicular toxicity by the antidiabetic agent was not observed under the condition that hypoglycemia was not induced even after repeated administration of the antidiabetic agent. Therefore, the hypothesis that the testicular toxicity seen in the Chapters 1 and 2 was not a direct effect of hypoglycemic agents but a secondary effect due to hypoglycemia was supported.In this study, it was suggested that testicular toxicity was induced as a secondary toxicity due to long-lasting hypoglycemia. In the toxicity evaluation of pharmaceutical products, it is required to evaluate the toxic changes and the dose level that causes the changes when a test article is repeatedly administered to mammals and higher doses than clinical uses should be administered in nonclinical studies. Therefore, there is a possibility that a drug causes hypoglycemia at high dose in nonclinical toxicity studies although the drug does not cause hypoglycemia at the therapeutic dose. When testicular toxicity occurs in such a condition, it is important to distinguish whether it is a direct effect or a secondary effect of the test article. In particular, testicular toxicity is known to be poorly reversible, and if testicular toxicity is observed in toxicity studies, it greatly affects the decision to continue or discontinue the development of pharmaceutical candidates. If it can be indicated that testicular toxicity is a secondary toxicity caused by hypoglycemia and the toxicity can be avoided in clinical by monitoring blood glucose levels, it could be possible to continue the development of the pharmaceutical candidates, leading to the launch of beneficial medicines to the world. The findings that long-lasting hypoglycemia causes testicular toxicity as a secondary toxicity in this study are believed important for accurately assessing the toxicity potential of pharmaceutical candidates in nonclinical toxicity studies.
- Persistent ID (NDL)
- info:ndljp/pid/11864241
- Collection
- Collection (Materials For Handicapped People:1)
- Collection (particular)
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- Acquisition Basis
- 博士論文(自動収集)
- Date Accepted (W3CDTF)
- 2021-11-08T14:10:24+09:00
- Date Created (W3CDTF)
- 2021-10-06
- Format (IMT)
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