Alternative TitleStudy on Turn Grinding for cylindrical grinding by multi-tasking machine
Note (General)type:Thesis
製造業における,リードタイム短縮によるコスト削減への要求は年々増加の一途を辿っている.リードタイムの短縮を目的に,これまで専用の研削盤で行われていた研削仕上げ工程を,切削加工用の複合加工機に集約する「複合化」が求められているが,十分な加工精度が得られないことが課題であった.本研究は,加工技術的な観点から複合加工機に適した研削方法を提案することで,複合加工機による研削加工の高精度化を達成できないか検討したものである.これまでの円筒研削法とは全く異なる複合加工機のための研削方法として,砥石軸と工作物軸を直交ないし所定量傾斜させながら加工するTurn Grindingを提案し(以降,とくに砥石軸と工作物軸が直交する場合を直交式Turn Grindingと呼ぶ),Turn Grindingによって,従来方法と比べて加工精度と表面粗さが向上することを,幾何学的な研削理論の解析と複合加工機による比較実験から明らかにしている.また,部品表面に微細な周期構造を創成することで,トライボロジ特性などの部品表面の機械的特性を向上させる微細構造創成技術に着目し,Turn Grindingを応用した機能創成加工法を提案し,砥粒切れ刃の運動軌跡の解析と検証実験から,提案手法の可能性と課題点を示している.本論文は全7章で構成されている.第1章は,序論であり,本研究でTurn Grindingを提案するに至った背景と研究目的について述べている.はじめに複合加工機による研削加工が求められている背景と具体的な市場をひとつ例に挙げて,課題点や目標となる加工精度を検討した.また,複合加工機と研削盤の違いについて整理し,複合加工機による研削加工の課題点とそれを改善する上で重要な先行研究について述べ,最後にTurn Grindingの定義と本研究の目的を述べている.第2章では,直交式Turn Grindingが,そもそも円筒研削法として十分な加工精度を得ることができるかどうか確認するための基礎実験について述べている.精密微細加工機と複合グラインディングセンタを使用して,直交式Turn Grindingによって鏡面研削が可能であることを示している.第3章では,幾何学的な研削理論の解析と,その妥当性を検証した比較実験の結果について述べている.砥粒切れ刃の運動軌跡から切りくず形状を解析し,直交式Turn Grindingと円筒トラバース研削を比較検討した.直交式Turn Grindingは円筒トラバース研削と比較して,砥粒切込み深さと切込み角が小さくなり,かつ砥粒切れ刃の接触弧長さが長くなるため,研削抵抗の抑制効果および表面粗さの向上効果があることがわかった.その後,複合加工機を用いた実証実験によって実際に加工精度と工作物表面粗さが向上することを明らかにしている. 第4章では,つづく第5章において直交式Turn Grindingの研削条件が研削性能に及ぼす影響を検討するための予備実験として,cBNカップ形砥石のツルーイング・ドレッシング条件について検討した結果について述べている.カップ形砥石は砥石作用面内で砥石周速度に差が生じる.そのためツルーイングによって形成される砥粒切れ刃先端の形状にも差が生まれる.しかし,研削抵抗や表面粗さに大きな影響を及ぼすのは,砥石内周部分の砥粒切れ刃の形状であることがわかった.また,WAスティック砥石によるドレッシング実験も行い,最適なドレッシング条件を明らかにしている.第5章では,直交式Turn Grindingにおいて,砥石・工作物周速度比をはじめとする種々の研削条件が研削抵抗と表面粗さに及ぼす影響を実験的に検討した結果について述べている.第3章で明らかにした砥粒切込み深さや切込み角の減少効果は,研削条件の中でも砥石と工作物の周速度比の影響を大きく受けるため,砥石?工作物周速度比によっては砥粒切込み深さと切込み角が小さくなりすぎて,良好な研削ができない可能性がある.直交式Turn Grindingの適切な研削条件を設定する指針を得ることを目的に,研削条件が研削抵抗と工作物表面粗さに及ぼす影響について実験的に検討した.その結果,砥石周速度を一定として砥石・工作物周速度比を小さくする,あるいは砥石周速度と砥石?工作物周速度比をともに増大させたとき,表面粗さが減少傾向にあることがわかった.第6章では,Turn Grindingによる機能創成加工法を提案し,その概要と基礎実験の結果について述べている.第2章で検討した砥粒切れ刃の運動軌跡の理論式を拡張し,砥石の姿勢を変数に加えて,工作物表面に形成される研削条痕のピッチや長さを幾何学的に算出した.その後,複合加工機による検証実験により,幾何学的に算出した通りの研削条痕が形成されることを確認したことで,Turn Grindingによって機能創成加工が実現できる可能性があることを示した.また,同時に達成すべき複合加工機の課題について述べている. 第7章は結論であり,本論文で得られた結果をまとめている.
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Date Accepted (W3CDTF)2022-05-09T11:57:37+09:00
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