Alternative TitleA study on the optimization planning for the In-hospital midwifery care system
Note (General)type:Thesis
「院内助産システム」とは、医療施設内に「助産外来」と「院内助産」を設け、医師と助産師が、その業務内容の根本的相違に立脚して役割分担を行い、これからの時代にふさわしい自然分娩を推進しようとする新たな周産期医療体制である。本研究の目的は、この院内助産システムに着目し、これまで建築計画の研究対象とされることがほとんどなかった妊産婦ケア空間について、妊産婦の視点も含め、最適化をはかる空間計画と環境整備のあり方を提示することである。論文は7章から成る。 第1章では、序論として、研究の背景、研究の目的と意義、関連する既往研究に対する本研究の位置付けを示し、また、論文の構成や用語の説明を行った。第2章では、院内助産システムにおける妊産婦ケア空間の特性を把握することを目的とした。文献調査に基づき、院内助産システムの概要を明らかにし、また、院内助産システムにおける妊産婦ケア空間は、従来の産科医療空間とも、助産所空間とも異なり、分娩を日常生活の営みの一つとしてとらえようとする新たな価値観に適応しながらも、必要時の医療介入を可能とする安全性と機能性が必要であることを明らかにした。さらに、分娩環境に対する妊産婦の欲求を整理し、妊産婦ケア空間の最適化をはかることの意義と必要性を明確にした。第3章では、院内助産における分娩空間と入院室の類型、および、各類型の特徴を明らかにすること目的とした。現地調査に基づき、分娩空間について、分娩様式(分娩時の妊産婦の空間との関わりの方法)と既設の産科に対する空間的独立性(分娩部、分娩空間の使われ方の方法)の2条件を把握して、医療優先の産科的空間から居住環境重視の助産所的空間まで、6つの基本形態タイプを導出した。 また、これらに対応する室形式として、陣痛室+分娩室、LDR、ベッドを配した椅座位式助産室、分娩台、ベッドを設置しない平座位式助産室の4種を確認した。さらに、入院室について、産科に対する空間的独立性、室形式、分娩空間からの移動の有無の3条件を把握し、分娩空間からの移動が無く、分娩後、分娩空間をそのまま入院生活に使用する院内助産固有のタイプを含む5タイプを導出した。第4章では、院内助産における分娩空間の環境整備の対象や評価を把握することを目的とした。助産師に対するヒヤリング調査に基づき、プロトコル分析により、産科医療下とは異なる院内助産に適した分娩環境とするための整備として、家庭的環境の創出による妊産婦の心理的安楽さや、畳や分娩補助具等の分娩空間装備による妊産婦の身体的安楽さに対する高い関心や、より産科に近い分娩空間タイプでは家庭的環境の創出に、より助産所に近い分娩空間タイプでは分娩空間装備に関心が高いなどの傾向を認めた。第5章では、院内助産システムにおいて使用する諸室について、現状の環境整備に対する満足度と満足度に関わる整備の内容を把握することを目的とした。アンケート調査に基づき、単純分析により、各室の総合的満足度は助産師が妊産婦に比して低いこと、および、入院室の整備に対しては、助産師がプライバシー確保や指導と看護に向けた個別対応環境の必要性を強く意識していたことを把握した。また、相関分析により、健診時や分娩時の空間環境の整備が広く満足度に関連していた一方、入院生活の居住環境に対しては意識の薄い部分もあることを明らかにした。さらに、重回帰分析により、妊産婦は分娩や入院生活行為に対するスペースの充足を、助産師は身近に接する家具等の人間工学的側面を重視する傾向があることを明らかにした。第6章では、第3章から第5章までの調査結果に基づき、院内助産の分娩空間の改善に向けた空間計画と環境整備の要件を明らかにすることを目的とした。第3章の調査結果に基づき、基本形態タイプと施設概要の関係性を考察し、院内助産システム推進において助産師の主導性を高めた空間の創出には医療施設規模の大きさが、また、助産師の院内助産に対する専従性が関与することを明らかにした。また、第4章の調査結果に基づき、環境整備の具体的要件として、分娩時の妊産婦の心理的安楽さに対しては日常的な環境とすることや音声漏れに対応することを、分娩時の妊産婦の身体的安楽さに対しては分娩体位を自由とすることや分娩経過中の移動を無くすることを把握した。さらに、第5章の調査結果に基づき、主成分分析により、助産空間に対する総合的指標として、助産行為に関わる「機能性」、生活行為に関わる「環境性」、個人的行為に関わる「プライバシー」の3つを把握した。第7章では、結論として主要な結果と今後の課題をとりまとめた。
Collection (particular)国立国会図書館デジタルコレクション > デジタル化資料 > 博士論文
Date Accepted (W3CDTF)2022-05-09T11:57:37+09:00
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