Alternative TitleTension-based musical haptic wearables that enrich the personalized virtual soundscape
Note (General)本論文は個々人のバーチャルサウンドスケープを体感音響で豊かにすることを目的に、モバイル環境で容易に利用可能な体感音響装置と体感音響による音像定位表現を提案するもので、和文7章からなる。 1章「序論」では、研究の背景を次のように説明する。音楽は、聴覚的な風景を意味するサウンドスケープの影響を受けて時代と共に変遷し、音声の録音再生技術が発達するにつれ、演奏会場だけでなく様々な場所で音楽自体がサウンドスケープの一部となった。そして携帯音楽プレイヤーの発明により、音楽によるサウンドスケープは「場所」だけでは無く「個々人の聴覚」にも属することが可能となりバーチャル化された。 音源からの空気圧変動が聴取者の身体に触覚的に伝わることで感じられる体感音響は、サウンドスケープの情緒を豊かにするのに重要な役割を果たすが、それを歩行時や電車乗車時といった日常的なモバイル環境で享受するのは難しい。そのため本研究ではモバイル環境で容易に利用可能な体感音響装置と体感音響による音像定位表現を実現することで、個々人のバーチャルサウンドスケープを豊かにすることを目的としている。 2章「関連研究」では体感音響の知覚に関わる知見として、有毛皮膚における触覚の生理学・心理学的な知見、ならびに聴覚と触覚の感覚統合が起きる条件や感覚統合が音や音楽の知覚に及ぼす影響について先行研究を紹介する。また既存の体感音響装置を設置型と装着型に大別して紹介し、両者の特徴について筆者の所感を述べる。 3章「モーターと糸を用いた振動生成機構」では始めに体感音響装置に適した振動生成機構の要件を整理し、既存の体感音響装置に用いられる直動型振動子が原理上、小型な振動子では高振幅な低周波振動を広範囲に伝達することができず、その要件を満たせないことを説明する。その要件に適合する機構として、モーターと糸を用いた張力式振動生成機構(提案機構)を提案し、身体への振動伝達能力を測定するとともに、体感音響装置として音楽と併用した場合の主観的な鑑賞体験についてアンケート調査を行い、提案機構の性能を評価する。 4章「張力式振動生成機構を用いたネックレス型体感音響装置 Hapbeat の開発」では提案機構を活用した実用的な体感音響装置が実現可能であることを示すため、日常的なモバイル環境での利用を想定し、十分な振動伝達能力・装着の容易さ・低音声ノイズ・低消費電力を設計要件として定義する。その要件を元に開発したネックレス型体感音響装置 Hapbeat の実装方法を詳細に記し、Hapbeat の性能が設計要件を満たしているかを評価する。 5章「体感音響による2次元音像定位」では4章で開発したネックレス型 Hapbeat を用い、任意目標への方向や距離に応じて変調された音楽振動を首に提示することで、音楽鑑賞体験を向上させつつ2次元的な位置情報の伝達が可能であることを示す。その検証のため、音楽を聞きながら未知の目的地まで歩いて向かう場面を題材に、音楽のボーカルトラックのみを定位させる従来手法と比較し、ナビゲーションタスク中の行動やアンケートを用いて手法の有効性を評価する。 6章「体感音響による3次元音像定位」では、音楽鑑賞体験を向上させつつ3次元的な位置情報の伝達することを目的に、ネックレス型とベルト型の2つのHapbeatを用い、任意目標への方向やその高さに応じて変調された音楽振動を首と胴体に提示する手法を提案する。また、3次元的なVRシューティングゲームを題材に、3Dレーダーを用いたターゲットの描画手法と比較し、シューティングタスク中の行動や成績、アンケートを用いて手法の有効性を評価する。 7章「結論」では3〜6章で得られた知見をまとめ、本研究が体感音響を伴うサウンドスケープを「個々人の身体」に属させることを容易にするとともに、体感音響による音像定位表現を例に、様々な形でサウンドスケープを豊かにできる可能性を示したと結論付ける。最後に本研究での成果や筆者がHapbeatを利用してきた経験を元に今後の触覚技術の利用拡大に貢献すると考えられる分野をまとめ、バーチャルサウンドスケープの展望を記す。 以上のように、本論文は現代のバーチャル化されたサウンドスケープを体感音響で豊かにする方法を、日常的に利用しやすく高性能な振動提示装置の実現と、それを用いた体感音響による音像定位の実現を通して提案しており、今後のサウンドスケープ表現の発展や触覚技術の利用拡大に貢献する。
This research aims to enrich the soundscape virtualized by portable music players, noise-canceling technology, and stereophonic technology with musical vibrations generated by and synchronized with music. We first aimed to realize a highly effective musical haptic wearable suitable for use during everyday travel. To enhance the music listening experience with musical vibrations, transmitting powerful low-frequency vibrations over a wide area is important. However, a linear vibrator, often used in general musical haptic wearables, cannot be used within small devices to transmit low-frequency vibrations over a wide area due to its driving principle. We thus invented a tension-based vibration generation mechanism using motors and a thread that is compact in principle and capable of transmitting powerful low-frequency vibrations over a wide area. To demonstrate the feasibility of a practical musical haptic wearable utilizing the proposed mechanism, we developed a necklace-type acoustic device, Hapbeat. Measurements showed that Hapbeat could transmit powerful 20 Hz vibrations over the chest and neck and output over an amplitude of 10 m/s2 in a frequency range of 2.2¬¬¬¬¬¬¬¬¬¬¬¬¬¬–470 Hz, and its response speed is 2.74 ms, which indicates excellent characteristics as a musical haptic wearable. We next aimed to extend soundscape expression and proposed a 2D navigation and 3D guidance method using musical vibration. The methods modulate the musical vibrations' amplitude presented by Hapbeat according to the positional relationship between the user and an arbitrary target in terms of direction, height, and distance. For the evaluation, we conducted a task of walking to a destination while listening to music for the 2D navigation method and a task of shooting a moving target in a 3D VR space for the 3D guidance method. The result showed that the proposed method contributes to accomplishing the tasks and improves the music-listening experience even during the tasks. We expect our findings to contribute to the future development of soundscape expression and expand the use of haptic technologies.
identifier:oai:t2r2.star.titech.ac.jp:50644851
Collection (particular)国立国会図書館デジタルコレクション > デジタル化資料 > 博士論文
Date Accepted (W3CDTF)2023-12-05T21:40:42+09:00
Data Provider (Database)国立国会図書館 : 国立国会図書館デジタルコレクション