Alternative TitleExercise physiological study on exercise performance and thermal state in human body: differences in the type of exercise
Note (General)type:Thesis
ヒトの核心温(脳や重要臓器などの温度,深部温ともいう)や活動筋の温度は,スポーツや運動時のパフォーマンス(運動能力)に影響を与える.例えば,ジャンプやスプリント,筋のパワー出力などの動的短時間運動のパフォーマンスは筋温と高い正相関があり,筋温の上昇は動的短時間運動のパフォーマンス向上につながる.一方で核心温の上昇は運動遂行が不可能になる体温(およそ40℃)に到達するまでの時間を早めて長時間運動のパフォーマンスを低下させる.このように核心温や筋温などの体温が運動のパフォーマンスに与える影響は,無酸素運動や有酸素運動,或いはその両方が含まれる間欠的運動などの運動形態により異なることが考えられるが,全ての運動形態において高いパフォーマンスを発揮できる体温に関して明確な知見が得られていない.本研究の第1章では,まず無酸素運動や有酸素運動,間欠的運動におよぼす体温の影響について文献検証を行った.その結果,無酸素運動については筋温や核心温と運動パフォーマンスについて多くの研究報告があるが,有酸素運動や間欠的運動では筋温を測定している研究は少なく,これらの運動形態におけるパフォーマンスにおよぼす筋温の影響ついては不明な点が多かった.また多くの研究は実験条件として対照(コントロール)条件と高温条件または低温条件,あるいは高温と低温の2条件を設定して核心温や筋温の上昇や低下と運動パフォーマンスとの関係を見ている.したがって,運動パフォーマンスと体温に関する有用な知見を得るには,同一被験者に対して高温から低温まで幅広い筋温を設定して運動パフォーマンスを測定し,身体の温熱状態の影響を検討する必要がある.そこで本研究では,間欠的運動である繰り返しスプリントサイクリング(Repeated sprint cycling,RSC)と有酸素性運動能力を評価するための多段階運動テスト(Graded exercise test,GXT)を研究対象とした.実験は,水循環ズボンを使用して下半身を受動的に加温または冷却して活動筋(大腿部・下腿部)の平均深部温度をおよそ38℃(HOT),36℃(WARM),34℃(COOL),32℃(COLD)とする4つの温度条件を設定し,中性温環境(室温約24度)で実施したRSC とGXTが発揮するパフォーマンスにおよぼす身体の温熱状態の影響を検討した.第2章では,9名の被験者が8秒の最大自転車漕ぎ運動を40秒間の休息をはさんで8回繰り返すRSCを実施し,発揮されるパフォーマンスにおよぼす活動筋温の影響を検討した.RSC前半については,加温条件(WARM・HOT)は冷却条件(COLD・COOL)よりも心拍数や主観的運動強度に示される生理的負担が高く,特にHOT条件において有意な鼓膜温の上昇と発汗増加が観察されたにもかかわらず,運動パフォーマンス(平均パワー・ピークパワー・総仕事量)は加温条件が高かった.しかしRSC後半は4つの温度条件間で運動パフォーマンスの顕著な違いがみられなかった.したがって間欠的運動時のパフォーマンスに与える活動筋温の影響はRSC前半が大きく,後半では小さいことが明らかになった. 第3章では,自転車エルゴメーターを使用して1分毎に運動負荷を増加させるGXTを8名の被験者を対象として実施した.加温条件(WARM・HOT)は冷却条件(COLD・COOL)よりも心拍数や貯熱量,総発汗量などに示される温熱ストレスは高かった.しかし,酸素摂取動態やその最大値,及び疲労困憊までの運動時間には4つの温度条件間で顕著な違いが見られなかったことから,20分以内で終了するGXTのパフォーマンスに与える身体の温熱状態の影響は少ないことが示された.本研究では運動形態が異なるとパフォーマンスに与える身体の温熱状態の影響も異なることが示され,スポーツや運動時のパフォーマンスを向上させるためのウォームアップやプレクーリングの内容を決める場合には,運動形態別に検討する重要性が示された.
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Date Accepted (W3CDTF)2024-09-06T22:07:41+09:00
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