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「可能性としてのアソシエーション、交換様式論の射程」
柄谷行人
台湾のオードリー・タンIT担当相をはじめ世界の文化人がその影響力を認め、再び注目を集めている柄谷行人氏であるが、その中心となる著作『世界史の構造』で、「交換様式」という観点から歴史、社会を分析している。これまで社会構成体の一般的な解釈は、主に生産様式を起点にしていた。しかし、生産様式を起点にしてはうまく説明できないとして、交換様式から出発すべきだと提案したのである。もし交換が定義上経済的な概念であるならば、すべての交換様式は経済的なものであると見なすことができるからだというだ。交換様式とは何か。A=互酬交換(「共同体」、平等で不自由)、B=略取と再分配(「国家」、不平等で不自由)、C=商品交換(「資本」、不平等で自由)、そしてAを高次元で回復したDの四つがあると柄谷氏は説く。そして、それぞれが同時に存在しながらも、どの交換様式が支配的かによって社会の性格が決定されるというのである。
大澤真幸氏は柄谷氏の交換様式論をパラフレーズして、次のように解釈する。近代社会の構造を形成する三つの実態、すなわち、ネーションと国家と資本は、それぞれ交換様式A、B、Cに対応する。これら三つの実体は互いに依存し合っており、どの一つも、他の二つなしには存在し得ない。社会構成体は単独では存在しているわけではなく、常に他の社会構成体との関係において、つまり、「世界システム」において存在している。社会構成体の歴史は、それゆえ、世界システムの歴史であり、四つの段階にわけられるという。第一に、交換様式Aによって形成されるミニ世界システム。第二にBによって形成される世界=帝国。第三に、Cによって形成される世界=経済。とくに、近代の世界=経済は、「近代世界システム」と呼ばれる。そして最後にDによって形成される世界システムがあり得るわけで、それはまさにカントの言った「世界共和国」だというのである。
昨今にわかに関心を集めているアソシエーション運動は「自由かつ平等な社会を実現するための運動」で、「世界共和国」の実現ではないかと思われる。柄谷氏は2000年にNAM(New Associationist Movement)を提唱し自らアソシエーション運動を実践していた(約2年半で解散)。
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