官職・位階を調べる

律令制における官職や位階について調べる資料を紹介します。なお、明治維新まで続いた官職・位階の制度は時代による変遷もあり、特に中世~近世(鎌倉時代~江戸時代)には内実が大きく変容しています。

武士の官職・位階についてはリサーチ・ナビ「武士の官職名を調べる」を参照してください。

書誌事項末尾の【 】内は当館請求記号です。

1. 官職・位階に関する情報

基本的知識(制度・個別の官職・和名・唐名など)

下記資料のほか、『国史大辞典』などの日本史事典・便覧類も参考になります。

  • 阿部猛 編『日本古代官職辞典 増補改訂』(同成社 2007 【A112-J3】)
    律令制下の官職・位階制度についての基礎的な事項のほか、官司・官職ごとの職掌や待遇、構成、変遷などについて詳細な解説と参考文献を掲載しています。和名・唐名の一覧も収録しています。
  • 和田英松 [著], 所功 校訂『官職要解 新訂』(講談社 1983 【AZ-141-26】)
    平安時代の官制・官職を中心とした解説書です。史実以外に日本文学での用例が多く含まれており、異称・唐名の記載が豊富です。鎌倉~江戸幕府の職制などについても合わせて収録しています。
  • 浅井虎夫 [著]『女官通解 新訂』(講談社 1985 【AZ-143-54】)
    平安時代を中心とした女官についての概説です。原著は明治時代に執筆されたため、文語体で書かれています。

官位相当表

位階と官職の対応関係を官位相当制といい、事典・便覧類にはこれを示した図表が掲載されています。資料により、令制のもの、その後『延喜式』などでの変更・追加を反映したものなど、資料により掲載されている表に違いがあります。

令制(概ね奈良時代)の官位相当表を掲載

延喜式(概ね平安時代)の官位相当表を掲載

両方の情報を掲載

法典

官職・位階の制度を定めていた律令格式については下記の校訂・注釈版があります。

  • 井上光貞 [ほか]校注『律令 (日本思想大系新装版)』(岩波書店 1994 【AZ-143-E39】)
    令集解などから復元した養老令の読み下し文や注釈を収録しています。
  • 虎尾俊哉 編『延喜式 (訳注日本史料)』全3巻(集英社 2000-2017)
    延喜式について本文ほか読み下し文や詳細な注釈を収録しています。
  • デジタル延喜式Leave the NDL website. (国立歴史民俗博物館)
    延喜式の画像データ・校訂テキストデータと現代語訳を検索・閲覧できます。開発中のため一部のみ公開しています。

2. 任官者・叙位者を調べる

全ての官職の任官者を調べられる資料はありません。任官者の名簿として『~補任』と呼ばれる資料がありますが、前近代に記されたもの(及びその校訂・注釈版)と前近代のものにならって現代に史料から記録を抽出して作成されたものとがあります。

前者については主なものを『日本古文書学提要 下巻』【210.029-I986n】の「主要補任一覧」(pp.1210-1212)などで一覧できるほか、『日本史文献解題辞典』【GB1-G49】『史籍解題辞典』【GB1-G3】などで調べることができます。

武士についてはリサーチ・ナビ「武士の官職名を調べる」を参照してください。

主要官職

  • 『日本史総覧 3 (中世 2)』(新人物往来社 1984 【GB8-122】)
    「主要官職一覧」(pp.448-498)として古代から近世までの摂政・関白、大臣、八省卿、藤氏長者の一覧を掲載しています。
  • 『日本史総覧 補巻 2 (通史)』(新人物往来社 1986 【GB8-122】)
    「神祇伯・八省卿等長官一覧」(pp.13-501)として大宝元(701)年から明治2(1869)年における神祇伯・八省卿・弾正尹・衛府の長官の一覧を掲載しています。

神祇官

  • 西山徳 著『上代神道史の研究』(国書刊行会 1983 【HL31-51】)
    延暦10(791)年までの神祇伯・神祇大副・神祇少副の任官一覧を掲載しており、任官者の経歴についても触れています。

太政官

公卿・議政官

『公卿補任』は公卿と呼ばれる三位・参議~太政大臣までの貴族の年ごとの職員録で明治元(1868)年まで記録されています。最初に登場する人物はその年の記事の末尾にそれまでの履歴が記載されており、公卿となる以前の経歴を知る手がかりとなります。(「尻付」といいます。)

姓の表記は藤原氏なら「藤」、安倍氏なら「安」、大中臣氏なら「大中」といったように本姓の1~2字で表され、称号(家名)はその上に「二条」といったように付されるため、特に中近世の人物を調べる場合は注意が必要です。

『公卿補任』をもとに、より利用しやすくまとめた資料もあります。

弁官局

  • 飯倉晴武 校訂『弁官補任』全3巻(続群書類従完成会 1982-1983 【GB22-34】)
    左・右大・中・少弁の任官一覧です。第1(大宝元(701)年~文永11(1274)年)・第2(建治元(1275)年~宝永6(1709)年)・第3(宝永7(1710)年~明治元(1868)年)の三巻構成です。第3には人名総索引と系図が付されています。第1については新訂増補版【AZ-141-M81】が刊行されています。
  • 永井晋 編『官史補任』(続群書類従完成会 1998 【AZ-143-G11】)
    正暦元(990)年~建武3(1336)年までの左・右大・少史の任官一覧です。人名索引と系図、任官者ごとの履歴をまとめた「官史考証」も収録しています。
  • 中島善久 編著『官史補任稿 室町期編』(日本史史料研究会企画部 2007 【AZ-141-H202】)
    建武4(1337)年~明応9(1500)年までの左・右大・少史の任官一覧です。

少納言局

  • 笠井純一「少納言補任稿」(『金沢大学文学部論集. 史学・考古学・地理学篇』通号17 1997.03 pp.23-38 【Z8-2020】)
    仁和3(887)年までの少納言の任官一覧です。
  • 井上幸治 編『外記補任』(続群書類従完成会 2004 【AZ-143-H11】)
    大宝元(701)年~明応9(1500)年の外記の任官一覧です。人名索引と系図、任官者ごとの履歴をまとめた「外記考証」も収録しています。

四位・五位

  • 湯川敏治 編『歴名土代』(続群書類従完成会 1996 【GB22-G3】)
    貞和6(1350)年~慶長11(1606)年における四位・五位に叙された人物の名簿です。人物によっては官職名が付記されていることがあります。編年索引・人名索引を収録しています。

八省・職・寮・司

  • 笠井純一 編『八省補任 : 大宝元年-仁和三年』(八木書店 2010 【AZ-143-J14】)
    大宝元(701)年~仁和3(887)年における八省の四等官(卿・輔・丞・録)と判事・一部の史生等の任官一覧です。員外官や大宝以前の前身官職も一部含まれます。人名索引を付しています。
  • 永井晋 編『式部省補任 : 正暦元年-建武三年』(八木書店 2008 【AZ-143-J7】)
    正暦元(990)年~建武3(1336)年における式部省の四等官(卿・輔・丞・録)と大学寮の頭・文章博士、東宮学士、中務省の内記の任官一覧です。系図と人名索引、任官者ごとの履歴をまとめた「式部考証」も収録しています。
  • 笠井純一「侍従補任稿」(『金沢大学教養部論集 人文科学篇』33(2) 1996 pp.356-337 【Z22-136】)
    大宝元(701)年~仁和3(887)年における侍従の任官一覧です。
  • 森田悌「平安初期内蔵寮の考察」(『金沢大学法文学部論集 史学編』通号19 1971 pp.1-37 【Z8-155】)
    8~9世紀の内蔵寮の頭・助・権助の任官例を掲載しています。
  • 繁田信一 著『陰陽師と貴族社会』(吉川弘文館 2004 【GB176-H12】)
    10~11世紀における陰陽寮の官職ごとの任官例を掲載しています。
  • 芳之内圭 著『日本古代の内裏運営機構』(塙書房 2013 【GB176-L4】)
    「奈良時代の内匠寮」「平安時代の内匠寮」で奈良・平安時代における内匠寮の頭・助・允・属の任官例を掲載しています。
  • 荻美津夫 著『平安朝音楽制度史』(吉川弘文館 1994 【KD24-E16】)
    10世紀~12世紀における雅楽寮の頭・助・允・属の任官例を掲載しています。
  • 新村拓 著『古代医療官人制の研究』(法政大学出版局 1983 【AZ-143-50】)
    史料から確認できる典薬寮・内薬司の官職ごとの任官一覧を掲載しています。

衛府

  • 市川久 編『近衛府補任 第1』(続群書類従完成会 1992 【AZ-143-E33】)
    大同2(807)年~延久4(1072)年における左・右近衛府の近衛大将・近衛中将・近衛少将の任官一覧です。
  • 西山史朗「近衛府下級官人補任稿(1)」(『佛教大学大学院紀要 文学研究科篇』(46) 2018.03 pp.179-196 【Z71-X642】)
    天平神護元(765)年~天仁2(1109)年における近衛府将監の任官一覧です。
  • 西山史朗「近衛府下級官人補任稿(2): 将監」(『佛教大学大学院紀要 文学研究科篇』(47) 2019.03 pp.111-128 【Z71-X642】)
    天永元(1110)年~建久3(1192)年における近衛府将監の任官一覧です。
  • 西山史朗「近衛府下級官人補任稿(3): 将監」(『佛教大学大学院紀要 文学研究科篇』(48) 2020.03 pp.199-216 【Z71-X642】)
    建久4(1193)年~仁治3(1242)年における近衛府将監の任官一覧です。
  • 西山史朗「近衛府下級官人補任稿: 将監(4)・将曹(1)・医師・府掌」(『佛教大学大学院紀要 文学研究科篇』(49) 2021.03 pp.117-134 【Z71-X642】)
    寛元元(1243)年~宝治2(1248)年における近衛府将監、神護景雲元(767)年~天仁2(1109)年における近衛府将曹、承和2(835)年~寛元2(1245)年における近衛府医師、元慶5(881)年~建久9(1198)年における府掌の任官一覧です。
  • 西山史朗「近衛府下級官人補任稿: 将曹(2)」(『佛教大学大学院紀要 文学研究科篇』(50) 2022.03 pp.73-90 【Z71-X642】)
    天永元(1110)年~宝治2(1248)年における近衛府将曹の任官一覧です。
  • 西山史朗「近衛府下級官人補任稿 : 府生(1)」(『鷹陵史学』(44) 2018.09 pp.141-159 【Z8-1176】)
    承和2(835)年~天仁2(1109)年における近衛府府生の任官一覧です。
  • 西山史朗「近衛府下級官人補任稿 : 府生(2)」(『鷹陵史学』(45) 2019.09 pp.101-129 【Z8-1176】)
    天永元(1110)年~久寿2(1155)年における近衛府府生の任官一覧です。
  • 西山史朗「近衛府下級官人補任稿 : 府生(3)」(『鷹陵史学』(46) 2020.09 pp.173-202 【Z8-1176】)
    保元元(1156)年~宝治2(1248)年における近衛府府生の任官一覧です。
  • 西山史朗「近衛府下級官人補任稿 : 番長・案主」(『鷹陵史学』(47) 2021.09 pp163-196 【Z8-1176】)
    昌泰元(898)年~宝治2(1248)年における近衛府番長、長徳4(998)年~治安3(1023)年における近衛府案主の任官一覧です。
  • 市川久 編『衛門府補任』(続群書類従完成会 1996 【GB196-G3】)
    弘仁2(811)年~建久9(1198)年における左・右衛門府の督・佐・権佐の任官一覧です。系図と人名索引も収録しています。

馬寮

  • 佐藤健太郎「平安前期の左右馬寮に関する一考察」(『ヒストリア』(189) 2004.04 pp.24-45 【Z8-95】)
    大同3(808)年~康保4(967)年頃における左・右馬寮の頭・助の任官一覧を掲載しています。
  • 亀田隆之 著『日本古代制度史論』(吉川弘文館 1980 【GB161-183】)
    天平~大同年間における左・右馬寮、内厩寮、主馬寮の官人の任官例を掲載しています。

春宮坊

後宮

  • 須田春子 著『律令制女性史研究』(千代田書房 1978 【EF72-166】)
    史料から検出した奈良時代の後宮の女官について記述があります。
  • 須田春子 著『平安時代後宮及び女司の研究』(千代田書房 1982 【EF72-339】)
    史料から検出した平安時代の後宮の女官について記述があります。
  • 古代学協会・古代学研究所 編『平安時代史事典』(角川書店 1994 【GB8-E91】)
    資料・索引編に奈良時代・平安時代の「主要官女表」(pp.142-192)を収録しています。角田文衛 著『日本の後宮』【YP5-78】所収の表を増訂したものです。

蔵人

  • 市川久 編『蔵人補任』(続群書類従完成会 1989 【AZ-143-E10】)
    弘仁元(810)年~建久9(1198)年における蔵人所別当・蔵人頭・五位蔵人・六位蔵人の一覧です。系図と索引も収録しています。

検非違使

  • 宮崎康充 編『検非違使補任』全2巻・別巻1(続群書類従完成会 1998-2006)
    弘仁7(816)年~元弘3(1333)年における検非違使の任官一覧です。第2巻に系図と索引を、別巻に歴代の検非違使別当・検非違使佐の経歴をそれぞれ収録しています。

勘解由使

国司・大宰府・鎮守府

  • 宮崎康充 編『国司補任』全5巻・索引1(続群書類従完成会 1989-1999 【AZ-143-E9】)
    大宝元(701)年~延暦10(791)年(巻1)延暦11(792)年~仁和4(888)年(巻2)寛平元(889)年~寛和2(986)年(巻3)永延元(987)年~延久5(1073)年(巻4)承保元(1074)年~平治元(1159)年(巻5)における国司・大宰府・鎮守府の四等官等の任官一覧です。各巻は国・組織ごと年順に排列しています。索引巻の人名索引では、他の補任の掲載頁も記載されています。
  • 『日本史総覧 2 (古代2・中世1)』(新人物往来社 1984 【GB8-122】)
    「国司一覧」(pp.9-250)に鎌倉時代末期までの国司等の一覧を掲載しています。判明している知行国主についても記載があります。
  • 川添昭二 監修, 重松敏彦 編『大宰府古代史年表』(吉川弘文館 2007 【GB9-H71】)
    pp.378-609に久寿2(1155)年までの大宰府の官人補任表が掲載されています。『国司補任』より多くの官職について採録しています。

3. 人名から任官・叙位の履歴を調べる

人物名から官職や位階を調べる場合、各種の歴史事典や人名事典が有用です。奈良時代・平安時代を扱ったものでは例えば以下のものがあります。

時期や経歴の一部が分かる場合は、「2. 任官者・叙位者を調べる」で挙げた各種補任類の索引等から調べる方法もあります。

また、対象の人物が公家(堂上家)や地下官人だと分かる場合、下記の資料で調べることができます。

  • 橋本政宣 編『公家事典』(吉川弘文館 2010 【GB12-J20】)
    『公卿補任』の久安6(1150)年以降の情報を家ごとにまとめた事典です。『公卿補任』に掲載されている一部の武家や地下官人、有力神社の神職の家系も収録しています。
  • 三上景文 著, 正宗敦夫 編・校訂『地下家伝』(自治日報社 1968 【GB43-1】)※日本古典全集本 (日本古典全集刊行会 昭和13 【GB43-1】) の複製
    江戸時代の地下官人の家系ごとに、人物とその履歴を掲載しています。掲載範囲は概ね江戸時代ですが、一部それ以前の情報を含みます。
    本書の情報は古典学統合データベース(地下家伝・芳賀人名辞典データベース)でも検索可能です。古典学統合データベースは国文学研究資料館学術情報リポジトリLeave the NDL website. で公開しています。

4. 研究文献を探す

詳しくはリサーチ・ナビ「日本史に関する文献を探すには(主題書誌)」を参照してください。特に主題と関連する文献目録データベースとしては以下のものがあります。

また、下記の資料では官司・官職別に研究文献を掲載しています。

5. 参考情報

英訳名

律令制の官職・位階について公式な英訳名があるわけではありませんが、いくつかの英訳名が提案されています。

中国の官職

日本の制度のもととなり、唐名としても使われる唐を中心とした中国の官制については下記の資料が参考になります。

関連情報