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「いますがた」に見る明治末年の新旧風俗

明治錦絵
山本昇雲

「いますがた」【寄別1-8-1-10】は、山本昇雲が明治39(1906)年から42年までの4回にわたって刊行した美人風俗画です。山本は報道画家として、明治の代表的な雑誌『風俗画報』の口絵・挿絵・全国各地の事件・風俗・風景を描き、日本画家としても活躍しました。
ここでは明治末年の風俗を「いますがた」の画像を通して紹介します。

「いますがた」では、美人画が枠の内に描かれており、中には枠そのものにも風景や草花がデザインされたものがあります。女性の大首絵を中心に、それぞれの題に合わせて表情、しぐさ、着物、小物などで当時の日常生活を、枠外の草花で移りゆく季節を描き出しています。

「いますがた」には着物姿の女性が多く描かれていますが、洋装の女性もわずかにいます。昇雲は、『風俗画報』の仕事から当時の最新風俗を知る機会を得ていたと思われます。『風俗画報』には、「流行門」という最新風俗を紹介するコーナーがあり、染色の原図描き等を手掛けていた昇雲は、当時の洋風文化を取り入れ、リボンや指輪をつけた女性風俗を描いています。


また、着物をゆったりと着て、襟元に華やかな半襟を広くのぞかせた当時の流行がそのまま描かれています。


さらに、最先端となるレースの衣装をまとった少女、袴姿の女学生など、時代の風俗がそのまま描かれたものもあります。


描かれた風俗は衣装だけではありません。西洋文化を取り入れて使用され始めた様々な機器、椅子や電話や小物のストールも描かれています。


西洋文化を取り入れた女性を描く一方で、江戸情緒にあふれる風俗も「いますがた」には描かれています。煙管を持つ女性、子守りをする女性、刺繍をする女性等、多種多様な女性像が登場し、江戸情緒が残る中に新しい文化が定着しつつある様子が画像からも窺えます。

昇雲は染色の原図描きを行っていたので、着物のデザインも当時の流行の柄を美しく描いています。

「いますがた」は50点を超えるシリーズですが、個々の作品の中から当時の最新風俗や江戸情緒を残した風俗を知ることができる貴重な資料といえます。同時期に刊行された『風俗画報』も参考にすれば、さらに当時の流行や風俗等を理解するうえで大いに役立つでしょう。

山本昇雲「五二会出品人形之図」(『風俗画報』350 1906.10所収)【雜23-8】

参考文献

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