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尾形月耕『源氏五十四帖』

源氏物語明治錦絵
尾形月耕

『源氏五十四帖』は日本画家・尾形月耕により描かれた源氏絵です。明治25(1892)年から28年にかけて出版されました。

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源氏五十四帖(目次)

源氏五十四帖 一 桐壷

いとけなき 初もとゆひに ながきよを 契るこころは むすびこめつや

源氏五十四帖 二 箒木

かずならぬ ふせやにおふる なのうさに あるにもあらで きゆるははきぎ

源氏五十四帖 三 空蝉

うつせみの 身をかへてける 木のもとに なほ人がらの なつかしきかな

源氏五十四帖 四 夕皃

よりてこそ それかとも見め たそがれに ほのぼのみゆる 花の夕がほ

源氏五十四帖 五 若紫

手につみて いつしかも見む むらさきの ねにかよひける 野辺のわかくさ

源氏五十四帖 六 末摘花

なつかしき 色ともなしに なににこの すゑつむ花を 袖にふれけん

源氏五十四帖 七 紅葉賀

物とふに たちまふべくも あらぬ身の 袖うちふりし 心しりきや

源氏五十四帖 八 花宴

いづれぞと 露のやどりを 分かむまに こさゝがはらに 風もこそふけ

源氏五十四帖 九 葵

はかりなき ちひろのそこの みるぶさの おひゆくすゑは 我のみぞ見む

源氏五十四帖 十 榊

神垣は しるしの杉も なきものを いかにまがへて をれるさか木ぞ

源氏五十四帖 十一 花散里

たちばなの 香をなつかしみ ほととぎす 花ちるさとを たづねてぞとふ

源氏五十四帖 十二 須磨

うきめかる いせをのあまを 思ひやれ もしほたるてふ すまの浦にて

源氏五十四帖 十三 澪標

かずならで なにはのことも かひなきに なにみをつくし おもひそめけん

源氏五十四帖 十四 明石

秋の夜の つきげのこまよ わがこふる 雲ゐをかけれ 時のまも見ん

NDLギャラリー「源氏物語と源氏絵」でも様々な源氏絵を紹介しています。あわせてご覧ください。

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いとけなき 初もとゆひに ながきよを 契るこころは むすびこめつや かずならぬ ふせやにおふる なのうさに あるにもあらで きゆるははきぎ うつせみの 身をかへてける 木のもとに なを人がらの なつかしきかな よりてこそ それかとも見め たそがれに ほのぼのみゆる 花の夕がほ 手につみて いつしかも見む むらさきの ねにかよひける 野辺のわかくさ なつかしき 色ともなしに なににこの すゑつむ花を 袖にふれけん 物とふに たちまふべくも あらぬ身の 袖うちふりし 心しりきや いづれぞと つゆのやどりを わかんまに をざさがはらに かぜもこそふけ はかりなき 千尋のそこの みるぶさの おひゆくすゑは 我のみぞ見ん 神垣は しるしの杉も なきものを いかにまがへて をれるさか木ぞ たちばなの 香をなつかしみ ほととぎす 花ちるさとを たづねてぞとふ うきめかる いせをのあまを 思ひやれ もしほたるてふ すまのうらにて かずならで なにはのことも かひなきに なにみをつくし おもひそめけん 秋の夜の つきげのこまよ わがこふる 雲ゐをかけれ ときのまも見ん たづねても われこそとはめ 道もなく ふかきよもぎが もとのこころを あふさかの せきやいかなる せきなれば いげきなげきの 中をわくらん うきめみし そのをりよりも けふはまた 過にしかたに かへるなみだか 身をかへて ひとりかへれる ふるさとに 聞しににたる まつかぜぞふく いりひさす みねにたなびく うす雲は 物おもふそでに いろやまがへる 見しをりの 露わすられぬ あさがほの 花のさかりは すぎやしぬらん おとめ子が 神さひぬらし あまつそで ふるきよのとも よはひへぬれば 恋わたる 身はそれなれど 玉かづら いかなるすぢを たづねきぬらん とし月を まつにひかれて ふる人に けふ鶯の はつねきかせよ 花ぞのの こてふをさえや したくさに 秋まつむしは うとくみるらん 聲はせで 身をのみこがす ほたるこそ いふよりまさる おもひなるらん なでしこの とこなつかしき 色を見ば もとのかきねを 人やたづねん かがり火に かちそふ恋の けふりこそ よにはたえせぬ ほのほなるらん 風さわぎ むらくもまよふ ゆふべにも わするるまなく わすられぬ君 をしほ山 みゆきつもれる 松ばらに けふばかりなる 跡やなからむ おなじのの つゆにやぬるる ふちばかま あはれはかけよ かごとばかりを いまはとて 宿かれぬとも なれ来つる まきのはしらよ われをわするな はなの香は ちりにし枝に とまらねど うつらん袖に あさくしまめや 春日さす ふぢのうらばの うらとけて 君しおもはば われもたのまん こまつばら すゑのよはひに ひかれてや 野べのわかなも としをつむべき 夕やみは みちたどたどし 月まちて かへれわがせこ そのまにも見ん いまはとて もえんけふりも むすほほれ たへぬおもひの なをやのこらむ よこぶえの しらべはことに かはらぬを むなしくなりし ねこそつきせね こころもて 草のやどりを いとへども なをすずむしの こゑぞふりせぬ やまざとの あはれをそふる ゆふぎりに たちいでむかたも なきここちして たえぬべき 御法ながらぞ たのまるる よよにとむすぶ 中のちぎりは おほそらを かよふまぼろし 夢にだに 見へこぬ玉の ゆくゑたづねよ おぼつかな たれにとはまし いかにして はじめもはても しらぬわが身ぞ 心ありて かぜの匂はす そののむめに まつうぐひすの とはずやあるべき たけ川の はしうちいでし ひとふしに ふかきこころの そこはしりきや はしひめの こころをくみて たかせさす さほのしづくに 袖ぞぬれぬる たちよらむ かげとたのみし しゐがもと むなしきとこに なりにけるかな あげまきに ながきちぎりを むすびこめ おなじところに よりもあはなん このはるは たれにか見せん なき人の かたみにつめる みねのさわらび やどりきと おもひ出ずは このもとの たびねもいかに さびしからまし さしとむる むぐらやしげき あづまやの あまりほどふる あまそそぎかな たちばなの こじまの色は かはらじを このうきふねぞ ゆくゑしられぬ ありと見て 手にはとられず 見ればまた ゆくゑもしらず きへしかげろふ 身をなげし なみだの川の はやきせを しがみかけて たれかとどめし のりのしと たづぬるみちを しるべにて おもはぬ山に ふみまよふかな

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