古文書・古記録を読むには
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人文総合情報室 作成
古文書や古記録を読むうえで参考となる資料やデータベースを紹介します。
ここでいう「古文書」とは、受取人と差出人がおり、特定の人物に意思表示をするために作成された近代以前の文字史料のことを指します。
またここでいう「古記録」とは、特定の受取人を想定せず、ある出来事を伝達したり、記憶するために作成された近代以前の文字史料のことを指します。
(「古文書」、「古記録」の定義は文献によって異なるために注意が必要です)
特に古記録や日記について調べたい場合は「古記録・日記について調べる」もご参照ください。
書誌事項末尾の【 】内は当館請求記号です。
(参考)
- 佐藤進一 著『古文書学入門 新版,新装版』(法政大学出版局 2003 【GB39-H10】)
- 高橋秀樹 著『古記録入門 増補改訂版』(吉川弘文館 2023 【GB39-M22】)
1.古文書・古記録の基礎
古文書・古記録自体の形式や時代ごとの特徴など基本的な知識を解説した資料として以下のものがあります。
- 佐藤進一 著『古文書学入門 新版,新装版』(法政大学出版局 2003 【GB39-H10】)
古代から近世までの古文書についてその種類や様式を解説しています。 - 高橋秀樹 著『古記録入門 増補改訂版』(吉川弘文館 2023 【GB39-M22】)
第一部では古記録の概説・歴史・形態・情報など基礎知識を解説しています。第二部では具体的な古記録・日記を例に読み方を示しています。 - 『日本古文書学講座』全11巻(雄山閣出版 1978-1981)
時代ごとに古文書の読み方を紹介しています。1巻が総論編、2・3巻が古代編、4・5巻が中世篇、6~8巻が近世編、9~11巻が近代編となっています。 - 大木一夫 編『ガイドブック日本語史調査法』(ひつじ書房 2019 【KF35-M4】)
必ずしも古文書・古記録研究のみを対象としたものではありませんが、書誌学や文献学にかかわる一般的な知識や、時代別の資料の特徴、実際に資料を読む際に使用する辞書やデータベースなどのツールがまとめられており、古文書・古記録を読む際の参考になります。
また文書の種類別に、読み方や調べ方を紹介している叢書として以下のような叢書があります。
古文書入門叢書 (雄山閣出版 1981-1989 全8巻)
1.北原進 著『近世農村文書の読み方・調べ方』(雄山閣出版 1981 【GB39-33】)
2. 段木一行 著『伊豆七島文書を読む』(雄山閣出版 1984 【GB39-50】)
3. 柴辻俊六 著『戦国大名文書の読み方・調べ方』(雄山閣出版 1984 【GB39-52】)
4. 相沢一正 著『近代農村文書の読み方・調べ方』(雄山閣出版 1984 【GB39-46】)
5.田中圭一 著『佐渡金銀山文書の読み方・調べ方』(雄山閣出版 1984 【GB39-51】)
6. 村上直,根崎光男 著『鷹場史料の読み方・調べ方』(雄山閣出版 1985 【GB39-4
7.飯倉晴武 著『明治以前天皇文書の読み方・調べ方』(雄山閣出版 1987 【GB39-56】)
8. 鈴江英一 著『開拓使文書を読む』(雄山閣出版 1989 【GB39-E6】)
2.くずし字を調べる
古文書や古記録はくずし字で書かれていることが多いです。
くずし字を調べる際はリサーチ・ナビ「くずし字を調べる」をご参照ください。
3.用語を調べる
古文書・古記録に使用されている用語を調べたい場合は以下の資料が参考になります。
全般
- 『日本国語大辞典』 全13冊(第2版 小学館 2000-2002 【KF3-G103】)
総項目数50万、用例数100万を収録する最大規模の国語辞典です。言葉の成り立ちや、意味・用法の変遷、言葉の歴史などを説明した「語誌」欄などがあります。また言葉の用例ごとに、その言葉が実際に使用されている文献の出典が記載されています。古文書・古記録で使用される古代~近世の語彙も多く収録されています。
当館契約データベースのジャパンナレッジLibでも利用することができ、見出し検索・全文検索などを行うことが可能です。 - 『国史大辞典』全17冊(吉川弘文館 1979-1997 【GB8-60】)
総項目数約54,000を収録する最大規模の日本歴史大百科です。古文書の用語について歴史学的な視点から解説しています。 - 『角川古語大辞典』全5巻(角川書店 1982-1999 【KF6-21】)
古代から近世まで約100,000語の語彙を収録した包括的な古語辞典です。
当館契約データベースのジャパンナレッジLibでも利用することができ、見出し検索・全文検索などを行うことが可能です。CD-ROM版もあります。 - 荒居英次 [ほか]編『古文書用字用語大辞典』 (柏書房 1980 【GB8-74】)
古代~明治中期の古文書関係用語約60,000語、見出し約5,500項目を収録しています。 - 井上辰雄 監修ほか『日本難訓難語大辞典』 (遊子館 2007 【KF4-H31】)
部首別・音訓・総角の3つの索引から、古文書などで使われる難訓難語16,000語を調べることができます。 - 林陸朗 監修『古文書古記録難訓用例大辞典』 (柏書房 1989 【GB8-E28】)
300点以上の古文書・古記録の中から、特に難読・難解な語彙や慣用句の読みや意味、用例を集めています。約3,000項目収録しています。 - 横山篤美 編著『古文書難語辞典』 (柏書房 1981 【GB8-83】)
古代から近世までの古文書・古記録の用語のうち特に難読なものや、現在と読み方や語義が異なるものを中心に約7,000語を収録しています。
古代・中世
- 阿部猛 編著『古文書古記録語辞典』 (東京堂出版 2005 【GB8-H45】)
古代~中世の古文書・古記録に使用される約9,500の用語を収録しています。使用されていた当時の意味や、その後の意味の変化などを使用例とともに解説しています。 - 『時代別国語大辞典』全6巻(三省堂 1967-2001)
「上代編」1巻、「室町時代編」5巻からなります。語釈とその用例を掲載し、語源や用法の考察が記載されている場合があります。戦争などの影響により、平安時代・鎌倉時代に該当する巻は刊行されていません。 - ことばの中世史研究会 編『「鎌倉遺文」にみる中世のことば辞典』 (東京堂出版 2007 【KF35-H95】)
鎌倉時代の古文書を集成した『鎌倉遺文』で使用されている用語の中で、現在の使い方とは異なる言葉を中心に約150語を収録しています。意味・用例とその変化、初出などを解説しています。 - 『古語大鑑』(東京大学出版会 2011-)
上代~鎌倉末期(1333年)までを収録しています。語釈、語源などを解説し、確認しうる最古の用例を出典として掲載しています。第1巻では「あ~お」、第2巻では「か~さ」の語を収録しており、現在も刊行中です。
近世
- 佐藤孝之, 天野清文 編『古文書用語辞典 新版』 (新人物往来社 2012 【GB8-J52】)
一部戦国時代を含む近世初頭から明治10年頃までの古文書にみられる約12,000語を収録しています。 - 秋山高志 監修『基礎古文書のことば 3訂版』 (柏書房 2002 【GB39-H3】)
古文書入門者用の辞書で、特に知っておいた方がよいとされる難読・難意の語を収録しています。 - 池田正一郎 著『古文書用字用語大事典』 (新人物往来社 1995 【GB8-E95】)
江戸時代の各種法令や触書などから特に民衆の生活に関する語を収録しています。用例には出典を明記しています。 - 池田正一郎 著『江戸時代用語考証事典』 (新人物往来社 1984 【GB8-132】)
江戸時代から明治初年にかけての民間文書、法令、史書、随筆などから特に民衆の生活に関する語を収録しています。 - 池田正一郎 編『古文書解読用語事典』 (新人物往来社 1981 【GB8-86】)
主に江戸時代の地方文書や農村の文書に出てくる語彙を収録しています。
4.文法・文体を知る
文法
古文書を読むうえで、書かれた当時の古文・漢文の文法知識が必要となることもあります。古文・漢文の文法について解説している資料には以下のようなものがあります。
- 小田勝 著『実例詳解古典文法総覧』(和泉書院 2015 【KF71-L31】)
南北朝時代までの用例を挙げて古典文法を解説しています。また出版社ウェブサイトで本書の補遺稿を公開しています。
変体漢文
平安時代以降の古文書は日本で独自に発達した漢文である変体漢文(変態漢文)で記述されている場合があります。変体漢文では本来の漢文にはない用字・語彙・語法が用いられます。以下の資料に解説があります。
- 峰岸明 著『変体漢文 新装版』(吉川弘文館 2022 【KF35-M31】)
『小右記』、『御堂関白日記』などの用例から変体漢文に用いられる語彙・文法・文体などを解説しています。旧版は1986年に出版されています。 - 日本史史料研究会 監修, 苅米一志 著『日本史を学ぶための古文書・古記録訓読法』(吉川弘文館 2015 【GB39-L10】)
古代・中世の変体漢文について解説した本です。演習問題もついており、変体漢文の訓読を習得するためのガイドブックとして使用することができます。
候文
特に近世の公文書などに特徴的な候文については以下の資料に解説があります。
- 佐藤孝之 監修ほか『近世史を学ぶための古文書「候文」入門』(吉川弘文館 2023 【GB341-M92】)
江戸時代の候文の主な用字・用語を、名詞・動詞・形容詞・形容動詞などの文法事項ごとに分類し、解説しています。
5.花押を調べる
花押とは自署の代わりに使われる記号のことです。印判と区別して書判と呼ばれることもあります。
特に近世以前の古文書に見られ、古文書の著者を特定するために必要になることがあります。
花押を調べる場合は以下の資料やデータベースが参考になります。
- 東京大学史料編纂所 編『花押かがみ』(1964-)
没年月日順に人物の花押の画像を掲載しています。人物の称号・法名、世系、極官極位、出家・死没年、年齢などの情報も記載されています。既刊8巻で平安時代~南北朝時代の人物を収録しています。 - 瀬野精一郎 監修,吉川弘文館編集部 編『花押・印章図典』(吉川弘文館 2018 【GB43-L304】)
古代から幕末までの歴史上の人物が使用した花押約2,000と印章400を収録しています。各人物の生没年、別名、主な官職名、法名なども記載されています。 - 小田栄一, 古賀健蔵 監修『落款花押大辞典』上巻・下巻(淡交社 1982 【GB43-208】)
天皇・公家・僧侶・大名・茶匠・工匠など平安時代から昭和57年までの1,572人の落款・花押を収録しています。 - 丸山可澄 編『花押藪』1・2(文献出版 1976 【GB43-93】)
江戸時代に水戸藩で刊行された『花押藪』(1690)と『続花押藪』(1708)を収録しています。『花押藪』に該当する部分には773人、続花押藪に該当する部分には709人の人物の花押が収録されています。天子・親王・大臣・大納言・中納言・参議・無官位・士庶・釈家・連歌師など分類され掲載されています。 - 東京大学史料編纂所データベース>花押データベース
人名や史料名などから花押の画像を検索することができます。『大日本史料』編纂のために作成された「花押彙纂」のデータを収録しており、現在は『大日本史料』第6編から第12編に相当する部分を公開しています。
6.古文書・古記録の所蔵機関を探す
古文書・古文書の所蔵機関を探すことのできるデータベースや、古文書のテキストの全文検索ができるデータベースには以下のようなものがあります。
- 国書データベース(国文学研究資料館)
国内の古典籍資料の所蔵機関を横断検索できるデータベースです。『国書総目録』を元に、現在のデータを反映しています。 - 日本古文書ユニオンカタログ(東京大学史料編纂所)
平安時代から安土桃山時代(9世紀~16世紀)を中心に、日本で作成された古文書の検索ができるデータベースです。各資料の書誌の【底本】の項目から、古文書の所蔵機関や原蔵者を調べることができます。 - 国立公文書館デジタルアーカイブ>他機関との横断検索
国立公文書館の所蔵資料と、全国の公文書館の所蔵資料を横断検索できるデータベースです。
7.古文書・古記録の全文検索データベース
古文書を全文検索することのできるデータベースには以下のようなものがあります。
- 大日本史料総合データベース(東京大学史料編纂所)
『大日本史料』・「史料稿本」・『史料総覧』の「綱文」・「書名」・「本文」・「索引」を対象とした検索をすることができます。収録範囲は仁和3年(887)~慶応3年(1867)です。検索結果の「画」の項目から、『大日本史料』・「史料稿本」の該当の箇所の画像を見ることができます。(『史料総覧』の画像は見ることができません) - 奈良時代古文書フルテキストデータベース(東京大学史料編纂所)
『大日本古文書』(編年文書)を検索することができます。収録範囲は大宝2年(702)~宝亀11年(780)です。検索結果の「刊」の項目から『大日本古文書』の該当の箇所の画像を見ることができます。 - 古文書フルテキストデータベース(東京大学史料編纂所)
『大日本古文書 家分け文書』などを検索することができます。収録範囲は主に中世の文書で、一部古代・近世の文書も含まれます。『大日本古文書 家分け文書』については検索結果の「刊」の項目から、該当の箇所の画像を見ることができます。 - 近世史編纂支援データベース(東京大学史料編纂所)
『大日本古文書 幕末外国関係文書』の「目次」・「本文」・「索引」・「標出」の項目を検索することができます。検索結果から一部『大日本古文書 幕末外国関係文書』の該当の箇所の画像を見ることができます。
古記録の全文検索データベースについてはリサーチ・ナビ「古記録・日記について調べる」の「3-2.全文データベース」をご参照ください。