国立国会図書館の蔵書印と受入登録印
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人文総合情報室 作成
国立国会図書館(以下、当館と呼びます)の蔵書に見られる蔵書印および受入登録印などの補助印について、おおむね古いものから順に紹介します。
書誌事項末尾の【 】内は当館請求記号です。
1. 蔵書印・蔵書票
当館は、帝国図書館(国立図書館)と衆議院・貴族院図書館(議会図書館)の2つの系統の源流をもち(詳細は当館ホームページ > 国立国会図書館について > 沿革 > 国立国会図書館小史参照)、それら前身となった諸機関の蔵書を引き継いでいます。引き継がれた資料には、受入れ当時の蔵書印が押捺されており、それらの印影(印の跡)を通して、個々の資料の来歴をたどることができます。
1-1. 帝国図書館とその前身諸機関
書籍館(しょじゃくかん):1872(明治5)年~1874(明治7)年
「書籍館印」とあります。
東京書籍館(とうきょうしょじゃくかん):1875(明治8)年~1877(明治10)年
書籍館が1875年に東京書籍館に改称されたことに伴い、蔵書印も新たなものとなりました。「東京書籍館/明治五年/文部省創立」とあります。
例: 頼襄著 『日本政記. 二』(頼又次郎 1876 【182-174】)
洋書を中心とした一部の資料には蔵書票が貼付されていました。左右には「文部省創立/明治五年」、上部には「東京書籍館」とあります。また中央の円には"THE PEN MIGHTER THAN THE SWORD"(ペンは剣より強し) と記されています。
例: "Sammlung der zusammengesetzten deutschen Wörter" (Kōdō 1872 【71-48】)
東京府書籍館:1877(明治10)年~1880(明治13)年
以下の2種類の蔵書印の使い分け方については不明です。
「東京府書籍館蔵書印」とあります。
例: 『解剖訓蒙. 十三,十四』 (浅井吉兵衛 明治6 【Y994-J10255】)
「紀元二千五百/東京府書籍館/三十有七年」とあります。
例: 弥児 (ミル)著 『代議政体. 巻之4』(奎章閣 明治8 【1-41】)
東京図書館:1880(明治13)年~1897(明治30)年
(左):「東京図書館蔵書之印」とあります。1882(明治15)年ごろまで使用していました。
(右):「東京図書館蔵」とあります。1882(明治15)年ごろから使用していました。
例: 青山延于著 『皇朝史略. 三』(明治14 【183-361】)
例:『船橋菓子の雛形. [1]』(1885 【丑-49】)
帝国図書館:1897(明治30)年~1947(昭和22)年
(左右とも):「帝国図書館蔵」とあります。一般図書に使用していました。図書の大小により使い分けていたようです。
例: 中島友文著 『校正万葉集通解. [1]』(中島友文 1885 【831-8】)
「帝国図書館」とあります。おもに巻子本(かんすぼん)(巻物)に使用していました。篆刻家の中井敬所(1831-1909)の刻によるものです。
例: "Beschrijvinge van het machtigh Koninckrijcke Japan" (1649 【貴-6426】)
国立図書館:1947(昭和22)年~1949(昭和24)年
「国立図書館蔵」とあります。
例: 平田篤胤著 『春秋命歴序考 2巻. [1]』(【862-264】)
1-2. 衆議院・貴族院図書館
衆議院図書館:1890(明治23)年~1948(昭和23)年
「衆議院図書印」とあります。
例: 『衆議院法規』([衆議院事務局] 1946 【BZ-2-H2】)
貴族院:1890(明治23)年~1947(昭和22)年
「貴族院図書印」とあります。
例: 『貴族院要覧. 大正11年増訂 乙』(貴族院事務局 大正11 【BZ-1-1】)
参議院:1947(昭和22)年~1948(昭和23)年
参議院では蔵書印を使用せず、受入登録印(丸印)を使用していたようです。
「参議院/図書係」とあります。
1-3. 国立国会図書館
1948(昭和23)年~1963(昭和38)年
「国立国会図書館蔵書」とあります。
例: 『鉄道要覧. 昭和20年度』(日本国有鉄道事務管理統計部 1947-1964 【686.059-N685t2】)
「国立国会図書館蔵書」とあります。一部の和装書や巻子本などで使用されていました。
例: 三条実房著 『愚昧記. [1]』(三条西公条 写 享禄5(1532) 【WA27-15】)
「国立国会図書館」とあります。一部の和装書や巻子本などで使用されていました。
例: 斎藤月岑著 『声曲類纂稿本』(【WA19-18】)
1963(昭和38)年4月~1994(平成6)年3月
蔵書印と受入登録印を統合し、事務の簡素化を図りました。
例: 新関健之助著 『トラノコトラチャン : トラチャンのハイキング』(黎明社 昭和22 【Y16-4293】)
1994(平成6)年4月~2002(平成14)年12月
バーコードによる登録番号表示を導入し、蔵書印を印刷した紙片を貼付する方式に変更しました。
例: "The bluebeard picture book / [illustrated] by Walter Crane"(G. Routledge 【VZ1-284】)
2003(平成15)年1月~
システム変更に伴い、意匠を変更しました。 資料の登録種別と和洋の別、1点ごとの個体識別用バーコードも併記しています。
例: 山田濟齋編 『西郷南洲遺訓』(岩波書店 1939 【GK123-H23】)
2. 受入登録印など補助印について
戦前の図書館では、蔵書印とは別に、接受日の日付などがある受入登録印(受入印)や、盗難除けの「隠し印」や小口印(本の地の部分などに押される館名印)など、各種の補助印を押捺していました。 戦後から1994(平成6)年3月までは、登録番号(受入番号あるいはアクセッション・ナンバーとも)のナンバリングも押捺していました。 雑誌や新聞などの場合は、各巻、各月単位での製本後に受入登録をしていたため、受入登録印は製本単位で押捺しています。
受入登録印について説明する文献は現在のところ見当たりません。ここでは、当館の蔵書に見られるおもな印影を紹介します。
2-1. 印文について
受入登録印の印文は、受入れ種別を表しています。「内交」のように、交付元の省庁名である内務省の頭字に交付の「交」を組み合わせた縮約形や、「購求」(購入)、「寄贈」などの印文が見られます。
交付元は内務省に限らず、文部省など各省から交付を受けていたことが、印文からだけでなく『帝国図書館年報』の統計欄からもわかります。
2-2. その他の補助印
補助印として、「発行所寄贈本」(緑色)、「帝国図書館消印」(緑色)、「受入変更」(緑色)などが見られますが、運用実態の詳細は不明です。
2-3. おもな印影
縦に細長い印:1875,1876(明治8,9)年ごろ~
「明治八年文部省交付」とあります。
「教育博物館印」の蔵書印の右に見られるのが受入登録印です。 「明治十一年十一月廿二日購求」とあります。 左上の手書き数字は旧請求記号、右上の「9S-3」は再製本時に記されたもののようです。
「明治十八年十一月十六日内務省贈付」とあります。
二重丸印:1887(明治20)年ごろ~
「図/明治二〇・七・一九・内交」とあります。
横長の楕円印:1904(明治37)年ごろ~
「明治/37 1 27/内交」とあります。 1905(明治38)年以降も二重丸印は見られ、大正時代には印文の「明治」が「大正」に替わります。
二重丸印:1927(昭和2)年ごろ~
「帝図/昭和二・三・一一・内交」とあります。 1936(昭和11)年ごろから印文の「内交」が「納本」に替わります。内務省交付とほぼ同じ意味のようです。
「国立図書館/昭 23.2.2 和/購入」とあります。
国立国会図書館時代
受入登録印(青色の丸印)の下に登録番号(青色)が見られます。 左上の手書き記号は「中書き」と呼ばれる請求記号の書入れです。
参考文献など
- 連載「蔵書印 昔と今」(『国立国会図書館月報』106-117号 1970年1-5,7-12月 【Z21-146】)(国立国会図書館デジタルコレクション)
- 『国立国会図書館五十年史 本編』(国立国会図書館 1999 【UL214-G10】)
- 『国立国会図書館三十年史』(国立国会図書館 1979 【UL214-7】)
- 『上野図書館八十年略史』(国立国会図書館支部上野図書館 1953 【016.11-Ko5488u】)
- 衆議院,参議院 編『議会制度百年史 資料編』([衆議院] 1990 【AZ-241-E19】)
- 衆議院, 参議院 編『議会制度七十年史 第7資料編』(大蔵省印刷局 (印刷者) 1962 【314.2-Sy996g】)
- 第50回常設展示 本のなかの小さな宇宙-蔵書票と蔵書印-
- 第128回常設展示 印の継承譜-国立国会図書館の印と印影-(PDF: 328KB)
- 蔵書印の世界
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