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群馬県立図書館デジタルライブラリー(群馬県立図書館)

2020年3月から新しく連携を開始させていただきました。
群馬県立図書館の資料デジタル化ご担当の大沢様と、システムご担当の宮尾様にお話を伺いました。
(2021年9月30日インタビュー実施)

基本情報(2021年10月現在)
アーカイブ概要ぐんまの歴史や文化を語る文献、ユネスコ世界遺産『富岡製糸場と絹産業遺産群』に象徴される養蚕・製糸業に関する資料、絵図や古地図、写真や絵はがきなどをご覧いただけます。
https://www.library.pref.gunma.jp/探す・調べる/デジタルライブラリーLeave the NDL website.
※当時URL:https://www.library.pref.gunma.jp/?page_id=650
メタデータ件数1,200件
連携方式OAI-PMHによるAPI連携
連携調整期間連携打診:2018年2月
リリース:2020年3月

NDL:貴デジタルライブラリーの特徴をご紹介ください。

群馬:郷土資料を主体として、現在1,212点、73,368コマの資料を閲覧することができます。

富岡製糸場と絹産業遺産群関係の資料、個人文庫である「小野寺文庫」(養蚕・製糸に関する貴重資料群)や、「中島文庫」(中島飛行機の創立者、中島知久平氏の蔵書と、氏が組織した日本初の民間シンクタンクと言われる「国政研究会」がとりまとめた、当時の国際情勢などに関するレポート類)、群馬県立図書館が所蔵する貴重書、絵図や古地図などがあります。

また、元々は県立図書館の所蔵資料のみを登載していましたが、2020年度からデジタルライブラリーの県域化※を開始し、県内の市や町の図書館と連携しています。2021年3月に県内の図書館の資料75点683コマを登載し、現在、県内6市町(前橋、高崎、桐生、伊勢崎、館林、草津)の郷土資料を閲覧することができます。
※当時URL:https://www.library.pref.gunma.jp/index.php?key=jogjxwnd5-2504#_2504

画像データのフォーマットは、利用者の利便性を考え、JPEGとPDFの2形式で公開し、県や各市町村のPRに役立てられるサービスにしたいと考えております。

NDL:郷土資料の収集※と、デジタルライブラリーの運営(郷土資料のデジタル化)は、それぞれ、どのような方針で進められていますか。
※当時URL:https://www.library.pref.gunma.jp/index.php?page_id=661

群馬:郷土資料は、いわゆる灰色文献も含め購入のほか寄贈を呼びかけるなどして網羅的収集に努めています。

デジタル化については当館及び県内市町村立図書館が所蔵する著作権保護期間の満了した貴重書や郷土資料のうち、資料保存と活用の両立の観点から、現在入手が困難な郷土資料を中心に、PRに資するものを順次デジタル化しています。

NDL:貴重な資料を連携いただき、NDLサーチとしても大変ありがたく感じております。

多数の資料をデジタル化されていますが、アーカイブ構築のきっかけや準備の経緯、構築までに要した期間についてお聞かせいただけますでしょうか。

群馬:2010年から準備を開始し、2012年1月から運用を開始しました。構築までにおよそ2年間かかっています。

立ち上げにあたった担当者は、「興味深い資料が多くの方の目に触れないまま眠っているのは、もったいない。どこからでも見られる形で公開することで、文字や口では伝わらない蔵書の奥深さや、県立図書館の存在価値をアピールしたい」という思いからアーカイブ構築に向けて動いたようです。

先進館に電話で概要を伺うことから始め、体制や予算を把握、その後、実際にデジタル化している図書館を視察しました。当時は補助金や特別雇用事業の交付金などを使って一度に大量のデジタル化を図っている館や、少ない予算や体制で地道に公開を続けているところなど、状況は様々だったようです。

その後、職員がデジタルカメラで試し撮りなどをしながら公開イメージを探り、システム業者と画像の公開方法などについて調整を進めました。デジタルデータの作成は業者に依頼し、最初は16点という少数の資料からスタートしました。

NDL:先進館の視察としては、どのようなところに行かれたのでしょうか?

群馬:当時の資料を見ると、いくつかの図書館を回っていましたが、特に秋田県立図書館を参考にしていたようです。ただ、当館では現在、秋田県立図書館のようにデジタルアーカイブで独立したシステムを導入する形ではなく、既存の図書館システム(OPAC)の枠組みの中でデジタルライブラリーを構築しています。

NDL:構築後の成果としてどのような点がありましたか?

群馬:偶然にも、運用開始当時は、『富岡製糸場と絹産業遺産群』のユネスコ世界遺産登録に向けた動きと時期が重なっていたため、「富岡製糸場工女勉強之図」など関連資料の二次利用希望が多数あり、利活用されていることを実感しました。また、国内だけでなく海外からも問い合わせがあり、デジタルで情報を発信することの利点を感じました。


NDL:OPACの枠組みの中でデジタルライブラリーを構築することについて、詳しくお伺いできますでしょうか。

群馬:当館のデジタルライブラリーは、OPAC上で公開しています。OPACの紙資料のメタデータに、デジタル化資料特有のデータ項目や画像URLを持たせて、そこからデータベースを読みにいく仕組みです。

2012年の導入当初は、図書館のポータルサイトや横断検索のCMSに付属する資料画像データベース機能を用いてデジタルライブラリーを構築していました。しかし、一般の蔵書と検索部分が分かれていて不便だったことから、2017年のシステム更新にあたってOPACをカスタマイズし、OPACとデジタルライブラリーの検索機能を統合しました。

デジタルライブラリー専用に予算をとっているわけではないので、改修については、OPACのシステム更新に合わせる形になります。パッケージに依存するところが大きいので、それほどカスタマイズできるわけではありませんが、OPACのシステム更新の際には、デジタルライブラリーで改良したい点も盛りこみながら要件を調整しています。

NDL:デジタルライブラリーの公開にあたって、デジタル化資料のメタデータはどのように作成されたのでしょうか?

群馬:OPAC上で公開している背景もあり、OPACで用いている紙資料のメタデータをベースにしています。デジタルライブラリー用のメタデータを新たに作成するというより、OPACのデータにデジタル化資料特有の最小限のタグを追加して、メタデータを作成する方向で検討したようです。

NDL:アーカイブ構築は、どのような体制で実施されましたか?

群馬:デジタルライブラリーの立ち上げメンバーが特別にいた記録はないため、システム更新に合わせた施策の1つとして、資料デジタル化担当とシステム担当で進めたのではないかと思われます。

NDL:日々のシステム運営には、どのくらいの職員が、どのように関わっていらっしゃいますか?また、外部に委託している業務(システム運用など)はありますか?

群馬:基本的には資料デジタル化の担当1人で運営しており、現在私で3人目です。必要に応じて係内で協議することもあります。

当館に撮影する設備はありませんので、年度ごとに、新たにデジタルライブラリーに登載する資料の撮影とデジタル化を、外部の業者に発注しています。データの登載は、県立図書館の担当者が行っています。

NDL:構築から運用にスライドする中で、体制構築や人材育成などどのような点に考慮されましたか?

群馬:特にありません。担当間で引き継いでいるマニュアルに、何月頃に何をするかなどが細かく書いてあるので、それを参照することで現在はうまく運用できています。最初の担当者は既に退職していて、次の担当者から話を聞きましたが、苦労はあまり感じなかったとのことです。一度軌道に乗り始めたら、大きな問題なく進めてこられたのかなという印象です。


NDL:2020年度からデジタルライブラリー県域化事業がスタートしたと伺いました。県域化事業はどのように運営されていますか?

群馬:年度初めに、県内の各図書館から、その年度にデジタル化を希望する郷土資料のリストをもらいます。県として実施するデジタル化の予算は、県域のものを含め、まとめて計上しているため、県立図書館の所蔵資料も含めた中から、実際にデジタル化する資料を選定します。その後、デジタル化が決まった資料を各所蔵館にお借りして、県立図書館でデジタル化とデジタルライブラリーへの登載を行っています。

NDL:県立図書館と各市町立図書館の間で、スムーズにデジタル化を進めるフローができているのですね。以前から県と市町間の連携が密にあったのでしょうか、それとも、県域化事業に合わせて調整を始められたのでしょうか?

群馬:県域化事業の参加館6館との調整は、おもに職員一名で担当しており、県域化事業をスタートする前年(2019年度)に、県内の各図書館に事業の構想を説明しました。当館のデジタルライブラリーをスタートしたのが2012年度で、2019年時点では県立図書館でのノウハウも蓄積され運営も軌道に乗っていましたので、このノウハウをもとに、県域化の構想にもつながっていったようです。

この説明の際には、いくつかの図書館からこの機会にうちの資料もデジタル化したいという意向があり、事業について好意的に受け取っていただけたようでした。

NDL:県立図書館がデジタル化を進めてくれるのは、各館にとってもちょうどいい機会だったのかもしれませんね。今後、県域化事業の対象館は広げるご想定でしょうか?

群馬:はい。毎年、県内の全ての図書館に、デジタル化の希望についてヒアリングを行っています。


NDL:NDLサーチとの連携のきっかけを教えてください。

群馬:総合目録ネットワーク事業(ゆにかねっと)で、NDLサーチと、和図書のOAI-PMH連携が完了したタイミングで、NDLからデジタルライブラリーも連携の対象としてみないかとお話をいただきました。当館のデジタルライブラリーは、OPACで構築しているため、追加費用なく、ゆにかねっとと同じ仕組みで連携が可能だったことも後押しになりました。

NDL:こちらとしましても、OAI-PMHの仕組みを使って連携できたため、スムーズだった印象です。貴館で連携調整時に苦労した点はありましたか?

群馬:館内にはいわゆるエンジニア的な職員がいないので、NDLからの調整要望を、システムベンダーに適切に説明できない場面がありました。しかし、NDLのご担当が根気強く対応くださったおかげで、大きなトラブルもなく連携を開始することができました。

また、メタデータのライセンスについても相談でき、当館としても連携を機にライセンスを設定することができてよかったです。

NDL:デジタル化資料のコンテンツの権利条件はどのように決定されたのでしょうか?

群馬:2019年度まで、デジタル化資料の画像の二次利用にあたっては、都度、申請書の提出と、出典の明示を条件に承認していました。

しかし、先にもお話ししたとおり、運用開始当時は、世界遺産の登録の時期と重なっており、「富岡製糸場工女勉強之図」など関連資料の二次利用の希望が多く寄せられたため、手続きが煩雑で、利用者と当館の双方に負担となっていました。また、オープンアクセスの促進という観点からも、手続きの簡略化が課題になっていました。

そこで、2019年度から、「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス:CC-BY4.0」Leave the NDL website. による権利表示Leave the NDL website. ※を導入し、資料名・著者名、出典(県立図書館所蔵)の明示を条件に、自由に利用できるようにし、オープンアクセス化の促進を図りました。
※当時URL:https://www.library.pref.gunma.jp/?page_id=652

原資料の著作権保護期間は満了しているが図書館が画像化したデジタル化資料に図書館としてのライセンスを設定できるかどうかには議論があり、コンテンツのライセンスとしてパブリックドメイン(PD)と表示しているデジタルアーカイブであっても、利用者に出典表記をお願いしているケースが多くみられます。

当館でも、PDやCC0のように著作権を主張しない表示を採用することも考えられましたが、県域化して各市町立図書館の蔵書のデジタル化資料も提供するにあたって、利用条件を整備する中で、従来通り出典の明示を条件とすることを明確に示すという観点から、CC BYを採用しました。

NDL:各市町立図書館の所蔵資料についても、県立図書館でライセンス処理されているのですか?

群馬:基本的には県立図書館に合わせてCC BYとしたい旨を説明したうえで、資料をお借りするときに、著作権に問題がないかを各所蔵館の担当に確認してもらっています。デジタルライブラリーに登載するときには、県立図書館の担当でも確認しています。

NDL:資料画像の活用事例は、把握・調査されていますか?

群馬:CC BYで使っていただいているので、こちらでは把握しきれていません。TV局などから連絡をいただけることがあったり、担当者が自分で発見したりした例があるぐらいです。

NDL:NDLサーチと連携後、何か変化したことはありましたか?

群馬:当館デジタルライブラリーのアクセス件数が、この2年間は上昇しています。デジタルライブラリーはCMSで管理していないページなので、残念ながらアクセス元は確認できないのですが、2019年度末にスタートした連携により、NDLサーチやジャパンサーチの検索結果からアクセスしてくださっているのが一因ではないかと、嬉しく思っています。

NDL:県域化事業の参加館から、連携事業について各館で説明するうえで、連携の効果が数字でわかると嬉しいなどのご要望はありましたか?

群馬:これまで特に要望は出ていませんが、確かに、数字で見えればよいかもしれません。

NDL:ジャパンサーチとの連携に際しては、館内で何か調整が必要な事項はありましたか?

群馬:ジャパンサーチの連携機関ページやデータベースページに登録する代表画像を何にしようかと議論したくらいです。NDLサーチとの連携を完了した後、改めてデータ提供や許諾などの調整が生じることなくシームレスに連携できたので、ありがたかったです。


NDL:貴デジタルライブラリーの今後の発展として、ご予定や計画がありましたらお教えください。

群馬:県域化事業が2020年度からスタートしたばかりなので、これを継続し、掲載資料を増やしていけたらと考えています。同時に、当館所蔵の貴重資料についてもデジタル化を継続していきたいと考えております。

NDL:デジタル資料のファイルを長期に保存した場合、メディアの劣化によりデータが読み取れなくなったり、ビューワーの環境と合わなくなったりする可能性もあります。今後、コレクションが大きくなっていくことも含めて、媒体変換など長期保存に向けた計画や対策はありますか?

群馬:今のところはそこまで考えられていません。構築当時の記録を見ても、データの整備は手探りだったようです。現在、公開データにはJPEGとPDF、保存データにはJPEG、PDF、TIFを持っています。

NDL:NDLサーチに今後期待することがありましたらお知らせください。

群馬:十分助かっていますので、特にありません。連携に際して全面的にサポートいただき、ありがたく思っています。今回のインタビューも、デジタルライブラリーの構築や連携の経緯を振り返るよい機会になりました。

NDL:本日はありがとうございました!県域化事業がスムーズに運用されている事例として、ぜひご紹介させていただければと思います。今後ともよろしくお願いいたします。