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フィルモン

帯状の長時間レコード、フィルモンについてご紹介します。
【 】内は当館請求記号です。

1. フィルモン(フィルモン音帯)とは

フィルモンとは、フィルモン音帯(Filmon Endless Sound-Belt)と呼ばれ、1930年代後半に日本で開発・発売された長時間レコードです。当時音声記録の中核をなしていたSPレコード(10インチ版)の録音時間が片面3分程度だった時代に、30分以上の録音を可能にした画期的な音声記録メディアでした。
その内容は当時の文化を知る上で貴重なものです。『フヰルモン音帯目録』を確認すると、当時の伝統邦楽において著名な演奏者が名を連ねています。
SPレコードでは実現できなかった長唄、清元、常磐津、義太夫、浪花節等の一括録音が可能となり、また、音も良いと評判が高く、売れ行きは好調だったようです。

フィルモンの形態は円盤状ではなく帯状になっており、幅35mm、長さ約13mの音帯の両端をつなぎ合わせ、エンドレスに演奏可能なレコードとなっています。セルロイド製の音帯に約100本の溝を刻んで、音声が記録されています。
フィルモンの写真

なお、フィルモンの名称の由来については、そのレコードがフィルム状をなしているところから、フィルム・フォン(Film phon)からフィルム音、フィルモンとなったようです。
市販されたフィルモンの種類は少なくとも全120種と推定され、1種類平均して約5,000本の製造、生産総数は約50万本でした。
フィルモンと専用の再生機の生産は日本フィルモン株式会社が行っていました。
同社は昭和12(1937)年に設立されましたが、同15(1940)年に会社は解散、工場も軍需工場へ転用されてしまいます。
こうして、フィルモンの生産は短期間で終了しました。

2. 『フヰルモン音帯目録』

フィルモンの目録として、『フヰルモン音帯目録』(日本フヰルモン [1939]【YM2-R60】 、電子複写資料【YM2-H684】を開架)があります。2色刷りの1枚もので、八つ折りにして配布していたと思われます。ジャンルごとに分類した上で、製品番号、演目(収録内容)、おもな出演者(演奏者)を記したカタログになっています。
フィルモンの製品番号は価格によって3種類に分かれていたようです。「フヰルモン音帯定価」には3000番台は各10円、5000番台は各7円、7000番台は各5円である旨が記載されています。

ジャンルは長唄、清元、講演、洋楽、教育・児童用、舞踊地方用長唄、常磐津、趣味の音帯、娯楽音帯に分かれています。講演の項には以下の記載もあります。
(音帯)7001 日本の印象を語る ヘレン・ケラー女史
昭和12(1937)年来日中のヘレン・ケラーが離日直前に日本フィルモンを訪れて録音された音帯とされています。(当館未所蔵)
また、当時の平沼首相も日本フィルモンに録音に来ており、講演の項に「7020 祭祀と事業 平沼 騏一郎」の記載もあります。(当館未所蔵)

なお、目録の末尾にはフィルモンの再生機定価表が載っています。

3. 国立国会図書館所蔵のフィルモンについて

当館には29点(複本2点を含む)のフィルモンが所蔵されています。当館には再生機器が無いため、直接の再生は出来ませんが、元日本フィルモン株式会社社員の佐藤銀治郎氏から寄贈いただいた、昭和46(1971)年ごろにオープンリールテープに再録された18点については、オープンリールからデジタル化した音源が国立国会図書館デジタルコレクションで利用できます(国立国会図書館内限定公開)。

デジタルコレクションで利用できるものをいくつか紹介します。

また、次の資料はフィルモンのみ所蔵のため利用はできませんが、

次の文句集(歌詞・言葉などを活字化したもの)を所蔵していているため、内容を確認することができます。

4. 所蔵資料の検索方法

国立国会図書館サーチ で、フィルモンの分類記号である「YMJ-*」を請求記号欄に入力して検索すると、当館で所蔵するフィルモンを一覧できます。
デジタル化がされていないものは、再生機器がないため利用できません。

5. 参考文献