日本-労働関係判例の調べ方

ここでは、労働関係の判例等を調べる方法をご紹介します。主題を問わない判例の調べ方については、「日本-判例の調べ方」をご覧ください。なお、【 】内は当館請求記号です。

1. 労働関係の紛争とは

労働関係の紛争は、主体に着目すると、大きく個別労働紛争と集団的労働紛争に分けられます。個別労働紛争は労働者個人と使用者との間で行われる紛争です。例えば、解雇された労働者が、その解雇が無効であるとして使用者を相手に訴えを起こす場合などが該当します。一方、集団的労働紛争は労働組合等の労働者団体と使用者との間で行われる紛争です。例えば、使用者が労働組合との団体交渉を拒否したとして争われる場合などが該当します。

これらの紛争を解決する手段には、個別労働紛争の場合は裁判所での訴訟や労働審判、都道府県労働局による相談・あっせん、労政主管事務所等での労働相談などがあります。労働審判は、平成18(2006)年4月に個別労働紛争を迅速に解決するために導入された紛争解決制度です(詳しくは、裁判所ホームページ「労働審判手続」Leave the NDL website. をご参照ください)。一方、集団的労働紛争の場合は、裁判所での訴訟のほか、労働委員会による不当労働行為事件の審査や労働争議の調整などがあります。

2. 労働関係の判例等の調べ方

労働関係の紛争の解決にあたり裁判所から出された判決や決定のうち重要であり先例となるもの、および労働委員会から出された命令等を調べるには、以下の方法があります。

2-1. 紙媒体で調べる

2-1-1. 議会官庁資料室開架資料

以下では、東京本館の議会官庁資料室で開架しているおもな労働関係の判例集および判例雑誌等を紹介します。

  • 『労働判例』(産労総合研究所 半月刊 【CZ-2512-G4】)
    労働関係の判例等のうち、重要と判断される判例等を掲載しています。裁判所の判決等の場合、主文や決定、理由のほか、事件の概要や判決のポイント、参考判例などをまとめたコメントが掲載されます。また、従来と異なった判断等で注目される判決等は「判例解説」、「判例研究」等で取り上げられています。一方、労働委員会の命令は、「命令ダイジェスト」で事件の概要と命令の要旨が掲載されます。その他にも、「労働審判ダイジェスト」では、労働審判の調停・審判の要旨やコメント等が掲載されています。
  • 日本経済団体連合会事務局編『労働経済判例速報』(経団連事業サービス 旬刊 【CZ-2512-3】)
    労働関係の判例のうち、特に労使関係に参考となる判例を集め、事件の概要や判決等の要旨、主文、事実および理由を掲載しています。
  • 労務行政研究所編『年間労働判例命令要旨集』(労務行政 年刊 【CZ-2512-△△】)
    前年中に出された労働関係の判例等のうち、実務上重要と判断される判例等の要旨を掲載しています。「労働契約」や「労働条件」等の項目別に分けられ、特に重要な判例等には詳細な解説が加えられています。また、巻末に付された「審級別検索便覧」では、当該資料で取り上げられなかった判例等も含めて、前年中に出された判例等およびその掲載誌の一覧が示されています。
  • 村中孝史・荒木尚志編「労働判例百選 第10版」『別冊Jurist』58巻1号(通号257号) 2022年1月 【Z2-56】)
    労働法分野の重要な判例を選択し、「労働基本権」や「就業規則」、「労働協約」等の項目別に掲載しています。
  • 『ジュリスト』(有斐閣 月刊 【Z2-55】)
    各号に掲載される「労働判例速報」および「労働判例研究」等に労働関係の判例が掲載されます。「労働判例速報」では、最新の重要判例について、事案や判旨、解説がコンパクトにまとめられています。また、「労働判例研究」では、重要判例について、事実や判旨、評釈等が掲載されています。
  • 『法律時報』(日本評論社 月刊 【Z2-31】)
    各号に掲載される「労働判例研究」等で、労働関係の判例が取り上げられ、事実の概要や判旨、評釈が掲載されています。
    ※なお、『ジュリスト』や『法律時報』のほか、『判例時報』(判例時報社 旬刊 【Z2-90】)や『判例タイムズ』(判例タイムズ社 月刊 【Z2-89】)においてもほぼ毎号、労働関係の判例が取り上げられ、事件の概要や主文、事実および理由等が掲載されています。
  • 労働法判例研究会編『判例労働法』(新日本法規出版 1973- 【CZ-2512-13】 加除式)
    これまでに出された労働関係の判例を体系的に収録した加除式の資料です。「個別的労働関係」および「集団的労働関係」、「訴訟上の諸問題」の三編に大別され、それぞれ「就業規則」や「労働組合」、「不当労働行為」等の細項目ごとに判例や解説等が掲載されています。また、最終巻の巻末に事項索引と年次索引が付されています。
  • 『別冊中央労働時報:最新不当労働行為事件・重要/命令・判例』(労委協会 月刊 【CZ-2512-12】)
    中央労働委員会および都道府県労働委員会が発した不当労働行為事件(詳しくは、厚生労働省ホームページ「不当労働行為事件の審査手続きの流れLeave the NDL website. 」をご参照ください)の命令を掲載しています。また、命令を不服として提訴された行政訴訟判決も掲載されていることがあります。毎年12月号に年間総目次が付されています。
  • 中央労働委員会事務局編『不当労働行為事件命令集』(中央労働委員会事務局 年3回刊 【CZ-2516-1】)
    中央労働委員会および都道府県労働委員会が発した不当労働行為事件の命令を掲載しています。なお、当該資料とは別に、一部の都道府県労働委員会では、それぞれの委員会が発した命令を掲載した不当労働行為事件命令集を刊行しています。国立国会図書館サーチでキーワードに「探したい都道府県名」および「不当労働行為事件命令(集)」を入力して検索してください。

※また、ここに挙げたものも含めて、リサーチ・ナビ「日本-分野別裁判例集」「日本-その他の判例登載誌」「日本-裁決例集」にも、当館で所蔵するおもな労働関係の判例集等の一覧が掲載されていますのでご参照ください。

2-1-2. その他の当館所蔵資料

これらの資料以外にも、国立国会図書館サーチの詳細検索画面で、「件名」に「労働□(スペース)判例」と入力して検索すると、当館で所蔵している労働関係の判例等に関連した資料を探すことができます。また、「タイトル」等に調べたい判例等に関係するキーワード等を入力して検索すると、当該判例等に関連した資料を探すことができます。

2-2. データベース・インターネット情報で調べる

以下のデータベースやインターネット情報でも労働関係の判例等を調べることができます。

2-2-1. 当館契約データベース

  • D1-Law.com「判例体系」(当館契約のデータベース:館内限定[1]
    特に労働関係の判例等に特化した検索メニューはありませんが、「フリーワード検索」でキーワードや裁判年月日、事件番号、参照法令等から判例を検索することができます。
    また、「フリーワード検索」の「事項」欄に調べたい判例に関係するキーワードを入力して検索すると、当該キーワードを含んだ論点の一覧が表示され、これらが争点となっている判例を見ることができます。たとえば、「労働時間」について調べたい場合、「事項」欄に「労働時間」と入力して「候補」を押下すると、「みなし労働時間」、「時間外労働時間」、「所定労働時間」等が表示され、これらが争点となっている判例を見ることができます。
    さらに、「体系目次」で「労働法」の法体系を表示させると労働関係法を一覧でき、判例において参照された法条を手掛かりに関係する判例を調べることができます。

  • TKCローライブラリー「LEX/DBインターネット 労働判例検索」(当館契約のデータベース:館内限定[2]
    個別的労働関係、団体的労働関係、労働関係の保全訴訟等の判例がフルテキストで収録されており、労働判例に限った検索ができます。内容は毎日更新されます。本文のフリーキーワード検索ができます。図表情報も画像ファイルで収録されています。

※これらの当館契約データベースについては、「日本-判例の調べ方」もご参照ください。

2-2-2. インターネット情報

  • 労働事件裁判例集Leave the NDL website. (裁判所)
    裁判所ホームページ「裁判例情報」Leave the NDL website. のページにある「労働事件裁判例集」では、労働事件のうち、『最高裁判所民事判例集』および『最高裁判所裁判集民事』、『労働関係民事裁判例集』に掲載された昭和44(1969)年から平成9(1997)年までのおもな判例と、平成10(1998)年以降のおもな判例が掲載されています。事件番号や裁判年月日、事件名、キーワード等から、調べたい判例を検索することができます。

  • 労働委員会関係命令・裁判例データベースLeave the NDL website. (中央労働委員会)
    不当労働行為事件について、中央労働委員会および都道府県労働委員会が発した命令や労働委員会関係の判決等を掲載しています。命令は昭和34(1959)年から、判決等は昭和41(1966)年から「概要情報」を掲載しており、事件の概要や命令・判決等の主文、要旨、下級審等での経過等が掲載されています。このうち、昭和57(1982)年から平成30(2018)年の命令および平成17(2005)年から令和元(2019)年の判決等については全文を見ることができます。キーワードや事件番号、行訴番号から検索するほか、各年に出された命令および判決等の一覧を表示することができます。

  • 雇用関係紛争判例集Leave the NDL website. (独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT))
    職場でのトラブルを解決する際に参考となる個別労働紛争関係の判例を取り上げて解説しています。「労働条件」や「就業規則」、「外国人労働者」などの項目別に探すほか、キーワード検索も可能です。また、冊子体(野川忍監修、労働政策研究・研修機構編『職場のトラブル解決の手引き:雇用関係紛争判例集』(改訂版 労働政策研究・研修機構 2016 【AZ-522-L23】)も刊行されています。

  • 判例検索Leave the NDL website. (公益社団法人全国労働基準関係団体連合会)
    昭和23(1948)年以降の労働基準法等に関連する判例を掲載しています。「体系項目別で検索」では、「労働契約」や「賃金」、「解雇」等の項目別に検索することができます。また、「判例サイト内検索」により、「労働基準判例検索」と事件名や裁判年月日、裁判所名等をキーワードに入力して検索することもできます。

  • 明るい職場応援団Leave the NDL website. (厚生労働省)
    「ハラスメント基本情報 裁判例を見てみよう」Leave the NDL website. のページには、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントに関する裁判例が掲載されており、事件の要旨や判決のポイントがまとめられています。事案の特徴を選択して検索することもできます。

  • 女性労働判例DBLeave the NDL website. (一般財団法人女性労働協会)
    採用内定取消・過労などの分類や、判決年月日などを指定して、女性労働に関わる判例を調べることができます。また、同ページには女性労働アーカイブLeave the NDL website. もあり、女性労働施策に関する行政資料や、女性労働の歴史を調べることができます。

関連情報


[1]D1-Law.comは東京本館では議会官庁資料室(新館3階)全端末、関西館では総合閲覧室の特定端末で利用できます。

[2]TKCローライブラリーは東京本館、関西館、国際子ども図書館の全端末で利用できます。