日本-租税関係判例の調べ方
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議会官庁資料室 作成
ここでは、租税関係の判例等を調べる方法をご紹介します。主題を問わない判例の調べ方については、「日本-判例の調べ方」をご覧ください。なお、【 】内は当館請求記号です。
1. 租税関係判例等の調べ方
1-1. 租税不服申立ておよび租税訴訟
租税に関する法的な紛争を解決する方法には、行政庁への不服の申立ておよび裁判所への訴訟の提起があります。
国税に関する法に基づく処分についての不服申立ては、処分があったことを知った日の翌日から原則として3か月以内に、国税不服審判所長に対する「審査請求」か、処分を行った税務署長等に対する「再調査の請求」のいずれかを選択して行うことができます(詳しくは、国税不服審判所ホームページ「不服申立手続等」をご参照ください)。また、地方税に関する処分に対する不服の申立ては、地方団体の長等に対して「審査請求」をすることができます(たとえば、東京都主税局ホームページ<都税Q&A>不服の申立てや訴訟―納税者の救済制度をご参照ください)。
租税訴訟は、租税行政処分が違法であることを理由として、その取消を求める取消訴訟が大部分を占めています。この取消訴訟については、原則として、「審査請求」についての裁決を経たのちでなければ訴訟を提起することができない、いわゆる不服申立前置主義が採られています。
1-2. 租税関係の判例等を調べるには
租税に関わる裁判所の判決等または国税不服審判所による裁決のうち、重要であり先例となるものを調べるには、判例集、裁決例集、判例雑誌またはデータベース・インターネット情報等を見ます。なお、租税関係については、判例等要旨集やデータベースで判例要旨を検索できるメニューも複数あり、ある論点から判例を探したり類似の判例を一覧したりする場合には、それらを利用するのも効率的です。
2. 紙媒体で調べる
2-1. 議会官庁資料室所蔵資料
以下では、東京本館の議会官庁資料室で所蔵するおもな租税関係の判例集等を紹介します。
2-1-1. 判例等要旨集
租税実務研究会編『租税判例等要旨集』(新日本法規出版, 1994.5- 【CZ-2366-14】)
直接税に関する裁判例および国税不服審判所の先例としての裁決例の要旨を集め、実務的な見地から体系的に分類整理した加除式の要旨集です。『国税課税関係判決要旨集 : 自昭和22年至平成12年6月. 1-5』(国税庁, 【CZ-2366-H2】ほか)
昭和42年以来7回にわたり刊行された『国税課税関係判決要旨集』の最終改訂版(全5巻)です。同時期に刊行された『税務訴訟資料』(2-1-2.で後述)の索引の役割も果たしています。国税不服審判所審判部 監修『法人税裁決事例解説集』(新日本法規出版, 1997-【CZ-2367-G1】)
法人税法の解釈・適用や事実認定の上で重要な先例となる裁決事例を選定し、体系的に配列した加除式の事例解説集(全2巻)です。各事案を、「要旨」、「事実の概要」、「争点」、「コメント」にまとめています。第2巻の巻末に「事項索引」および「裁決年次索引」が付されています。
2-1-2. 判例集、裁決例集および判例雑誌
『税務訴訟資料』(国税庁, 【CZ-2366-2/YH111-H117】ほか)
租税関係裁判例のうち、国税に関する裁判例を収録した資料です。
冊子体またはCD-ROMとして当館で所蔵するのは、通号(1)(昭和25(1950)年5月)から通号(258)(平成23(2011)年3月)までです(ただし通号(9)は欠号)。刊行時期に応じた資料形態などの詳細は、議会官庁資料室カウンターにおたずねください。それ以降の時期については、当館契約データベースまたは国税庁ホームページ(3-2.で後述)で見ることができます。租税法判例研究会編『判例租税法:直接税』(新日本法規出版, 1974- 【CZ-2366-6】)
直接税に関する判例を体系的に整理、分類し、理論と学説に基づいた解説を加えた加除式の判例集(全5巻)です。全体が「租税法総則」、「所得税」、「法人税」、「諸税」、「租税救済」の五編に大別されており、第5巻の巻末に「事項索引」および「判例年次索引」が付されています。租税裁決例研究会編『国税不服審判所裁決例集』(ぎょうせい, 1976- 【AZ-366-G165】)
国税不服審判所が昭和45年の発足当初から公表してきた裁決を原則としてすべて収録した加除式の裁決例集(全10巻)です。全体が「租税法の基本原則」、「租税法通則」、「所得税」、「法人税」、「相続税・贈与税」、「間接税」、「租税の徴収」の七編に分類され、体系化されています。第10巻の巻末に、各編の体系を示す「主要項目体系」が付されています。『裁決事例集』(国税不服審判所, 1971- 2010.【CZ-2366-7】ほか)
国税不服審判所による裁決事例集です。おおむね年2回の刊行でしたが、第78集(平成21(2009)年分・第2)をもって紙媒体の刊行は終了し、ホームページ公開に移行しました(3-2.で後述)。第75集(平成20(2008)年度・第1)以降を開架しています。『裁決事例集』(大蔵財務協会, 1971-【CZ-2366-10】ほか)
国税不服審判所監修、大蔵財務協会刊行の裁決事例集です。第78集までは、国税不服審判所刊行のものと内容が同一です。その後も刊行が継続されており、第79集(平成22(2010)年度下期)以降を開架しています。『訟務月報』(法務省訟務局, 月刊, 【CZ-781-1】)
国の利害に関係のある争訟について、国の立場から裁判所に対して申立てや主張・立証などを行うことを訟務といいます。『訟務月報』は、この訟務に関する事務を行う法務省訟務局が作成している月刊の判例情報誌です。毎月掲載される判例が行政事件・民事事件・租税事件に分類されており、各号の租税事件を通覧することもできます。『租税判例年報』(税務経理協会, 年刊, 【CZ-2366-13】ほか)
国税に関する民事・刑事裁判例を網羅的に収集し、判示事項別に分類、整理した年報として、平成元(1989)年度(通号第1号)から平成14(2002)年度(通号第14号)まで刊行されていました。編集は法務省訟務局の職員によります。各号巻末に裁判月日別索引が付されています。『租税判例百選 第7版』(『別冊jurist.』57(2)=253:2021.6)(有斐閣, 不定期刊, 【Z2-56】)
租税関係の重要な裁判例を123件精選、分野別に収録し、各判例の事実の概要、判旨および解説を見開き2ページまたは1ページ内に収めたものです。「最新租税基本判例」(『税研』【Z3-1951】特集号)
租税関係の専門誌、『税研』の判例特集号です。数年おきに刊行され、期間中における重要な租税判例について、事件概要、判旨、解説が掲載されています。
「最新租税基本判例80」『税研』18(3)=106:2002.11 (基本判例(-'91)20, 最新判例('92-'02)60)
「最新租税判例60[日税研創立25周年記念]」『税研』25(3)=148:2009.11 (最新租税判例('02-'09)68)
「最新租税基本判例70」『税研』30(4)=178:2014.11 (租税基本判例('09-'14)70)
「最新租税基本判例70」『税研』35(4)=208:2019.11 (租税基本判例('13-'18)70)
2-2. その他の当館所蔵資料
当館の蔵書検索・申込システム「国立国会図書館サーチ」の詳細検索画面において、たとえば、「件名」に「租税□(スペース)判例」と入力して検索すると、当館で所蔵している租税関係判例に関する資料を探すことができます。または、「タイトル」に「○○税□(スペース)判例」等を入力して検索すると、タイトルにその用語を含む判例雑誌の記事等も含めて、○○税関係判例に関する資料を探すことができます。以下に、特徴的な資料5点を挙げます。
佐藤孝一『最近の税務争訟 : 最近の判決・取消裁決を各税目毎に分類収録 16』(大蔵財務協会, 2020【AZ-366-M80】)
著者の国税審判官等の実務経験に基づき、裁断機関の視点を紹介することを目的として刊行された書籍です。注目すべき裁判例および裁決例につき、争点、ポイント、判決(裁決)要旨、出典を収録しています。巻末に、既刊分収録内容も含めた「総目次」および「判事事項等索引」があります。(なお、平成9(1997)年から平成23(2011)年までのタイトルは、『最近の税務訴訟』とされ、平成24(2012)年以降の『最近の税務争訟』に巻次を引き継いでいます。)品川芳宣『重要租税判決の実務研究 第3版』(大蔵財務協会, 2014【AZ-366-L61】)
税理士、税務職員等の実務家向けに、実務の見地から見て重要性のある最近の租税判決137件、延べ284件を精選し、簡潔に評釈を加えて収録した解説書です。『月刊税務事例』(財経詳報社, 月刊【Z4-265】)
税務に関する判例・事例の専門誌です。裁判例や裁決例を紹介する、「租税判例研究」「裁決事例研究」「海外重要租税判例」等の欄があります。毎年12月に、その年の収録内容を対象とした年月日順の判例/裁決索引(小冊子)が付されています。『TKC税研情報』(TKC税務研究所, 隔月刊【Z71-G185】)
平成4(1992)年5月に創刊されたTKC税務研究所による会員向けの判例等情報誌です。毎号、「TKC租税判例研究会実施報告」として、重要判例の評釈が2件収録されるほか、「最新税務判決(裁決)要旨」として、200件前後の要旨が収録されています。(なお、この要旨は、3-1.で後述するTKCローライブラリーでも見られます。)『租税訴訟』(財経詳報社, 年刊【Z71-S863】)
平成19(2007)年4月に創刊された租税訴訟学会による論文集です。毎号ではありませんが、「租税公正基準」「租税訴訟における最高裁判例の動向」等の特集を組み、複数の判例評釈等をまとめて収録する号もあります。
3. データベース・インターネット情報で調べる
以下のデータベースやインターネット情報でも租税関係の判例を調べることができます。
3-1. 当館契約データベース
税務関係判例を調べる際に有用な検索メニューとして、以下のものがあります。
TKCローライブラリー「LEX/DBインターネット」(当館契約のデータベース:館内限定[1])
「税務総合判例検索」では、明治24(1891)年以降に出された税務関係判決および国税不服審判所裁決事例をフルテキストで収録しています。
「国税不服審判所裁決検索」では、国税不服審判所が設立された昭和45(1970)年以降の裁決事例をフルテキストで収録しています。
「税務判例要旨検索」では、「税務総合判例検索」でヒットする判例および裁決の要旨のみを検索し、表示することができます。D1-Law.com「判例体系」(当館契約のデータベース:館内限定[2]
)
特に租税関係の判例に特化した検索メニューはありませんが、たとえば、「事項」欄に、「○○税」と入力し、「候補」ボタンを押下すると、「○○税」に関する入力候補(事項名)が複数表示され、より詳細な事項名から関連する判例を調べることができます。または、「体系目次」で「租税法」の法体系を表示させると租税関係法を一覧でき、判例において参照された法条を手掛かりに、関係する判例を調べることができます。
3-2. インターネット情報
裁判例情報(裁判所)
最高裁判所判例集、高等裁判所判例集、下級裁判所判例集、行政事件裁判例集、労働事件裁判例集、知的財産裁判例集の検索およびこれらの統合検索ができます。特に、行政事件裁判例集の検索メニューでは、「事件種別」の「租税」という項目からの検索も可能です。訟務重要判例集データベースシステム(法務省)
2-1-2. で紹介した『訟務月報』のインターネット版です。36巻1号(平成2(1990)年1月)以降を検索・閲覧できます。(紙媒体の刊行よりも数か月遅れて掲載されるので、未掲載の巻号は紙媒体でご確認ください。)税務訴訟資料(税務大学校)
2-1-2.で紹介した『税務訴訟資料』のインターネット版です。課税関係判決と徴収関係判決とに分けて提供されています。課税関係判決は、平成20(2008)年判決分以降、徴収関係判決は、平成21(2009)年判決分以降を掲載しています。公表裁決事例集(国税不服審判所)
「公表裁決事例要旨」では、国税不服審判所が公表してきた裁決事例集の裁決要旨を関係税法ごとに分類して紹介しています。
「公表裁決事例」では、平成4(1992)年から平成21(2009)年までに発行した裁決事例集の裁決事例要旨・全文および平成22(2010)年以降の裁決事例要旨・全文が見られます。「公表裁決事例」内をキーワード検索することも可能です。
「裁決要旨の検索」は、平成8(1996)年7月1日以降に出された裁決に係る要旨または争点項目を検索・閲覧できるシステムです。
関連情報
[1]TKCローライブラリーは東京本館、関西館、国際子ども図書館の全端末で利用できます。
[2]D1-Law.comは東京本館では議会官庁資料室(新館3階)全端末、関西館では総合閲覧室の特定端末で利用できます。