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日本-交通事故判例(民事事件)の調べ方

交通事故判例には、損害賠償請求事件に代表される民事事件と、道路交通法違反で起訴されるといった刑事事件が考えられますが、ここでは民事事件の判例等の調べ方をご紹介します。

主題を問わない判例の調べ方については、「日本-判例の調べ方」をご覧ください。なお、【 】内は当館請求記号です。

1. 交通事故判例(民事事件)等の調べ方

民事事件の交通事故紛争に関しては、過失相殺の割合や損害賠償額等が立証の焦点となることが多く、裁判実務で使用されている事故類型ごとの各種基準や類似の裁判例を調べることが多くあります。ここでは、このような各種基準や類似の裁判例を調べる方法をご紹介します。

また、裁判外紛争処理手段(ADR)の一つに裁定があります(詳しくは、公益財団法人交通事故紛争処理センターの法律相談、和解あっ旋および審査の流れLeave the NDL website. をご覧ください)。裁判例ではありませんが、裁定事例を収録する資料も、以下ではご紹介します。

2. 紙媒体で調べる

2-1. 議会官庁資料室開架資料

以下では、東京本館の議会官庁資料室で開架しているおもな交通事故関係の判例集等を紹介します。

  • 『交通事故損害賠償必携 : 資料編』(新日本法規出版 年刊 【AZ-474-▲▲】)
    事故発生から保険請求までの処理に必要な資料を網羅し、実務的に解説しています。平均給与額、ライプニッツ方式での逸失利益認定額早見表などを掲載しています。
    そのほか、賠償額の算定基準や参考になる判例を掲載しています(いわゆる「赤い本」【Z41-5042】の内容を省略したもの。「赤い本」については2-2-1で後述。)。

  • 『交通事故民事裁判例集』(ぎょうせい 隔月刊 【CZ-2474-1】)
    略称は交民、交民集または交通民集。昭和43(1968)年から刊行されています。 交通事故に関する民事判決を網羅的に調査し、それらのうち、学問上または実務上意義があるものを選択して収録するものです。
    毎年、通号に加え、暦年単位の索引・解説号が発行されており、その年の事項索引、被害者類型(性別、年齢、職業)索引、判決日索引、要旨索引、裁判所別索引、後遺障害の部位・等級別索引が掲載されています。解説編には、学問上、実務上特に意義があると考えられる判例が数件選び出され、解説が付されています。
    議会官庁資料室では、直近10年分を開架し、それ以前のものは議会官庁資料室書庫にあります。議会官庁資料室カウンターにお尋ねください。

  • 『交通事故判例要旨集』(新日本法規出版 【CZ-2472-6】)
    交通事故に関する裁判例の要旨および出典を収録した加除式4冊組の資料です。全体が「責任」「損害」「訴訟」の3編に大別され、各巻に目次があり、第4巻の巻末に明治30(1897)年から現在までの判例年次索引があります。交通事故に関する判例の総索引として便利なものです。

2-2. その他の当館所蔵資料

2-2-1. いわゆる「○本」

「○本」と呼称されている以下の書籍は、裁判実務において参照され、基準とされている書籍です。

  • いわゆる「赤い本」
    『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準』(日弁連交通事故相談センター東京支部 年刊 【Z41-5042】)
    上下2巻(上:基準編、下:講演録編)。毎年2月に改訂版が発行されます。法曹関係者向けの専門書であり、損害賠償額算定実務における基準本とされています。
    上巻には、損害類型ごとに、東京地裁の実務に基づく賠償額の算定基準(慰謝料に関しては「裁判基準」の表もあり)が示されており、参考になる判例を掲載しています。
    下巻には、講演録や部会活動報告が掲載されており、特に平成26(2014)年版以降には自転車同士の事故の過失相殺基準(第一次試案)が掲載されています(自転車同士の事故に関しては、2-2-3で後述)。
    (なお、「自賠責保険基準」による賠償・慰謝料額は「自動車損害賠償責任保険の保険金等及自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準(平成13年金融庁国土交通省告示第1号)」Leave the NDL website. によって定められており、上巻に掲載されています。)

  • いわゆる「青本」
    『交通事故損害額算定基準 : 実務運用と解説』(日弁連交通事故相談センター 隔年刊  【AZ-474-▲▲】)
    損害賠償額の算定方法と相当な損害額を判断するための金額的な目安を提供することを目的とした書籍です。隔年で改訂版が発行されています。 本文では、各項毎に総論的な算定方法を示した後、判例における認定例を列挙しています。
    なお、上に紹介した「青本」および「赤い本」の最新号の目次は、日弁連交通事故相談センターのホームページ「青本・赤い本のご紹介」Leave the NDL website. で見ることができます。

  • いわゆる「緑本」
    東京地裁民事交通訴訟研究会編「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準全訂5版」(『別冊判例タイムズ』 38号 2014年7月 【Z2-498】)
    東京地裁交通部の裁判官が中心となり執筆されたものです。多数の裁判例の蓄積から事例を整理し、個々の事故態様において、基本的過失割合と修正要素から、具体的過失割合を算出できるようになっています。過失割合について調べるには、この本が有用です。
    いわゆる「赤い本」【Z41-5042】にも、過失相殺率の認定基準が掲載されています。

  • いわゆる「緑の本」「緑のしおり」
    『大阪地裁における交通損害賠償の算定基準』(大阪地裁民事交通訴訟研究会編 判例タイムズ社 【AZ-474-▲▲】)
    大阪地裁交通部の裁判官が執筆したものです。大阪地裁における民事交通事故賠償事件の基準となっています。第1編に「大阪地裁における交通損害賠償の算定基準」(いわゆる「緑のしおり」)、第2編にその解説と判例、第3編に資料を掲載しています。

2-2-2. その他の判例集、裁定集

  • 『自保ジャーナル』(自動車保険ジャーナル 半月刊 【Z72-B339】)
    交通事故訴訟に特化した雑誌で、当該事案における具体的な請求額や認容額の記載があります。判決文がほぼ全文掲載されており、参考判例も挙げられています。
    なお、当該雑誌は1812号(平成21(2009)年12月24日)までは新聞扱いで『自動車保険ジャーナル』(自動車保険ジャーナル 週刊 【Z85-1261】)として刊行されていました。こちらも判決文が掲載されていますが、刊行が古いものほど判決文の省略が多くなります。

  • 『交通事故裁定例集』(ぎょうせい 年刊 【Z41-5982】)(昭和55-61(1980-1986)年は【AZ-472-81】)
    その年の交通事故紛争処理センターLeave the NDL website. における裁定事例から実務上議論のあるものや参考になると思われるもの等を抜粋してまとめたものです。
    損害費目や職業別等に分類された損害賠償額一覧や裁定書が掲載されています。

2-2-3. 歩行者と自転車、自転車同士の交通事故判例を収録する資料

  • 『自転車事故過失相殺の分析 : 歩行者と自転車との事故・自転車同士の事故の裁判例』(ぎょうせい 2009 【AZ-472-J22】)
    自転車同士の事故や、「赤い本」には掲載されていない自転車と歩行者の事故について、120件の裁判例を分析した書籍です。「赤い本」のように、具体的な過失相殺基準を定立したものではありません。 裁判例を類型化したのち、事故状況の図を加え、裁判例要旨・検討コメントを掲載しています。
    (なお、平成26(2014)年版以降の上記「赤い本」【Z41-5042】の下巻に、自転車同士の事故の過失相殺基準(第一次試案)が掲載されています。)

2-2-4. 車両価格の算出時に参照する資料

最高裁昭和49(1974)年4月15日判決(民集28巻3号385頁・交民集7巻2号275頁)にいう、いわゆる「経済的全損」(修理額が車両時価以上となる場合)のとき、中古車市場における車両時価を算出するために参照されるものです。

オートガイド(有限会社)による「レッドブック」、「レッドブック」に車両の掲載がないときに参照される「イエローブック」(一般財団法人日本自動車査定協会)と呼称されるものがあり、それぞれ以下の種類があります。

3. 当館契約データベースで調べる

交通事故に関する判例が検索できる商用データベースにはさまざまなものがありますが、ここでは当館でご利用になれるものを紹介します。

  • TKCローライブラリー(当館契約のデータベース:館内限定[1]

    • 「交通事故民事裁判例集Web」
      上記『交通事故民事裁判例集』(ぎょうせい)【CZ-2474-1】の本文をPDFの形式で収録したデータベースです。また、裁判年月日、裁判所名、事件番号、要旨、事故態様図、索引を書誌情報として収録しています。 自動車対自動車や自動車対歩行者等の事故態様から判例が検索できます。
    • 「LEX/DBインターネット 交通事故判例検索」
      民事刑事を問わず、交通事故に関する判例がフルテキストで収録されており、交通事故に限った検索ができます。内容は毎日更新されます。本文のフリーキーワード検索ができます。図表が掲載されている場合もあります。
  • D1-Law.com「判例体系」(当館契約のデータベース:館内限定[2]
    交通事故に限らずあらゆる分野の判例が収録されており、内容は毎月更新されます。本文または要旨のフリーワード検索ができます。検索の結果、多くの判例が見つかった場合は、「詳細検索」の「事項」欄にキーワードを入れて検索すると、より関連度の高い判例に絞り込めることがあります。 また、判例を法体系で分類しており、自動車損害賠償保障法等の法令名や民法709条等の条数で絞り込んだ判例検索が可能です。

関連情報


[1]TKCローライブラリーは東京本館、関西館、国際子ども図書館の全端末で利用できます。

[2]D1-Law.comは東京本館では議会官庁資料室(新館3階)全端末、関西館では総合閲覧室の特定端末で利用できます。