杉と日本人のお付き合い
歳時記
春が近づいてくると同時に、花粉症の季節もやってきます。花粉症の原因の一つとなっている杉は、日本人と長い付き合いをしてきました。杉の名前は直木に由来しており、まっすぐな木という意味です。日本の木の文化は杉文化といわれるほどで、杉の原生林は北は青森県から南は屋久島まで広く分布しています。秋田県・富山県・三重県・京都府・奈良県・高知県・宮崎県は杉を県の木(府の木)と指定しています。
杉はまた学名をCryptomeria Japonica(クリプトメリア ヤポニカ)といいます。Cryptomeriaには「隠れたもの」という意味があり、球菓が葉で覆われているために名づけられました。Japonicaとはもちろん日本のことです。
日本の森林のうち、約4割が人工林で、そのうち約45%が杉とされています。今でこそ花粉症の原因となってしまった杉ですが、木の文化である日本文化は杉とともに歩んできたといえます。
明治初期の学校教育に使われた教育錦絵には、杉の苗の仕立て方、枝打ちなどの生育法と、杉の用法が描かれています。杉の用途として、柱や屋根板になり、細い枝は薪に、葉は線香になる、捨てるところのない良材だと記されています。
明治2(1869)年には東京・横浜間に初めて電信柱が建てられました。当時の電信柱は木製で、その多くは杉が使用されました。
このほかにも、プラスチック製品が大量生産されるようになるまで、酒樽、?油樽、味噌樽、鮨桶や風呂桶等、生活に必要な色々な道具が杉で作られました。これらの道具は専門の職人の手で作られ、大切に使用されました。
葛飾北斎『富嶽三十六景尾州不二見原』には巨大な樽を作っている樽職人が、同『隠田の水車』(現在の東京・原宿)の中にも洗い物をする桶を持った女性が描かれています。
樽や桶を作る様子は、他にも様々に描かれています。
また近隣の神社の境内や参道には杉が植えられ、街道にも杉並木が作られ、旅する人々を風雪から守りました。
参考文献
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歳時記