江戸の粋・ゆかた

歳時記

夏になると花火大会や盆踊りなどにゆかたを着て出かける人を見かけます。また、旅先の温泉宿では、入浴後にゆかたを着てくつろぎます。では、江戸時代にはどのような時に着られたのでしょうか。ゆかたの歴史とともに少し振り返ってご紹介しましょう。

ゆかたの語源は「湯帷子ゆかたびら」であり、平安時代に貴人が湯あみをする折に着用した簡易な衣類を意味しています。裸体をさらさないためと、浴後の汗を吸い取るために用いたと思われます。そのため、ゆかたはひとえ仕立てで、素肌に直接着用する麻製でした。元禄期(1688~1704年)頃になると、木綿が普及するようになり、麻に代わって使用されるようになりました。また、銭湯の普及により、ゆかたは湯あみの下着から入浴後の部屋着となりました。

温泉宿には自分のゆかたを持参しました。

銭湯での入浴後にゆかたを着て、話をしたり、将棋をしたりしてゆっくりとした時間を過ごすようになると、人々はゆかた模様にも関心を寄せるようになります。江戸中期頃にはゆかた模様を収録した雛形本が出来て、好みの模様を注文できるようになりました。

やがてゆかたは、夕涼みや蛍狩り、花火見物などの行楽に着用範囲も広がっていきました。昼の外出着には用いませんでしたが、夏の夜の外出着として用いられ、錦絵にもゆかた姿が描かれています。

このほかにも、ゆかたは合羽かっぱとして利用されました。江戸中期までは雨や雪の折に、男女ともに雨具や旅衣としてゆかたを上に着用しました。伊勢参りなどの集団旅行では、揃いのゆかたを着用しました。また、年末のすす払い等の作業着として着物の上に着用しました。

歌舞伎の世界では、役者たちが楽屋や舞台で好みの柄や、名前にちなんだ柄に染めたゆかたを着ました。この風習は現在でも歌舞伎、落語、相撲の世界に残っています。役者たちのゆかたの文様は、役者染め・役者柄と呼ばれて一般庶民にも流行しました。

ゆかたは、普段着であり作業着でもある一方、デザイン性のある模様の柄が映える、粋な夏の夜の外出着でもありました。

参考文献

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