戦前のレコード発行に関する情報-「日本蓄音器商会(日本コロムビア)」-
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音楽・映像資料室 作成
戦前の日本蓄音器商会(日本コロムビア)のレコード発行に関する情報を紹介します。
日蓄/日本コロムビアの社史に関する資料については、「日本のレコード業界の歴史(業界史、社史など)」の「2. 日本蓄音器商会/日本コロムビア」をご覧ください。
1.日本蓄音器商会(日本コロムビア)について
明治期に創業した日本蓄音器商会(以下「日蓄」)は、1927(昭和2)年に英国コロムビアと資本提携を行い傘下に入ります。同時に、欧米から電気吹込などの技術導入を行いました。また、資本提携に伴いレーベルも入れ替わっています(次項参照)。
1931(昭和6)年にコロムビア関係の商標(音符のマーク等)を日本国内で使用する権利を英国コロムビアから取得しており、1935(昭和10)年に英国コロムビアとの資本関係が解消された後も、1942(昭和17)年の社名変更まではコロムビアのレーベル名でレコードを発行しています。
年 | 出来事 |
---|---|
1907 明治40 | F.W.ホーン、現在の川崎市に日米蓄音器製造(株)を設立 |
1910 明治43 | (株)日本蓄音器商会(日蓄)設立 |
1912 明治45 | 日蓄が日米蓄音器製造を吸収し、製造・販売を一本化 |
1927 昭和2 | 主要株主が英国コロムビア、米国コロムビアとなり、英国コロムビアの傘下に入る |
1928 昭和3 | 日蓄の子会社として日本コロムビア蓄音器(株)を設立 |
1931 昭和6 | 日本国内におけるコロムビア関係の商標権を英国コロムビアから取得する |
1935 昭和10 | 英国コロムビアとの資本関係が解消され、日産コンツェルンの傘下に入る |
1937 昭和12 | 日産コンツェルンから離脱し、東京電気(株)(後の東京芝浦電気(株))の傘下に入る |
1942 昭和17 | 社名を日本蓄音器商会から日蓄工業(株)に変更 |
1946 昭和21 | 社名を日蓄工業から日本コロムビア(株)に変更 同時に子会社の日本コロムビア蓄音器の社名を日蓄工業(株)に変更 |
東洋蓄音器や合同蓄音器といった子会社も含めた変遷については、「レコード会社販売目録」の「3.戦前の会社別所蔵リスト(総目録・月報)」のうち、総目録リストに所収の「(参考)日蓄/日本コロムビア系列の会社変遷」をご覧ください。
2.レコードレーベル
戦前期のレコードのレーベルは、内容や価格帯による種類が豊富で、時期による変遷もあります。
ここでは主なものを紹介します。
2-1.英国コロムビアとの提携以前(明治・大正期)
1915(大正4)年まで(片面盤の時期)
- 「シンホニー」、「ローヤル」、「グローブ」、「アメリカン」、「ユニバーサル」
1915(大正4)年以降(両面盤へと移行)
- 「ニッポノホン(ワシ印)」
その他のレーベル(合同蓄音器を含む)
- 「オリエント(ラクダ印)」(1919(大正8)年の東洋蓄音器の買収による)
- 「ヒコーキ」(帝国蓄音器→合同蓄音器)※
- 「ライオン」(三光堂→合同蓄音器)※
- 「富士山(フジサン)」(東京蓄音器→合同蓄音器)※
※日蓄は、帝国蓄音器、三光堂、東京蓄音器を買収した後、1925(大正14)年にこれらを合併して合同蓄音器(株)としました。合併後間もなく、合同蓄音器のレーベルはヒコーキのみとなります。
2-2.英国コロムビアとの提携以後(昭和期(戦前))
1928(昭和3)年10月時点(提携当初)
- 「コロムビア」
- 「ニッポノホン(ワシ印)」(1930(昭和5)年から「イーグル」)
- 「オリエント」
- 「ヒコーキ」
1932(昭和7)年12月以降
- 「コロムビア」
- 「リーガル(コロムビア大衆盤)」
※イーグルはリーガルの発売前に、オリエントとヒコーキはリーガルの発売開始と同時に廃止されました。 - (1936(昭和11)年以降)「ラッキー」
1942(昭和17)年以降
- 「ニッチク」(第二次世界大戦末期のいつまで刊行されたかは不明)
3.販売目録
販売目録とは、各レコード会社が販売取次店や購入者向けに発行していた目録です。レコードの発売番号のほか、発売年月日、歌手名や演奏者名等の情報が掲載されているものもあります。
詳しくは「レコード会社販売目録」の説明をご覧ください。国立国会図書館が所蔵する日本蓄音器商会(日本コロムビア)の販売目録については、同ページの「3.戦前の会社別所蔵リスト(総目録・月報)」をご覧ください。
総目録、月報リストのいずれも、「コロムビア(及びニッチク)、リーガル、ラッキー」は1つの項にまとめていますが、そのほか(「ニッポノホン、イーグル」「オリエント」「ヒコーキ」「三光堂(ライオン)」「東京レコード(富士山印)」)は個別に立項しています。
※シンホニー、ローヤル等の片面盤のレーベルは「ニッポノホン、イーグル」の項に含めています。
4.発行レコードの関連資料
【 】内は当館請求記号です。
4-1.文句集
文句集(文句カード集、歌詞集)とは、レコードの詞章(歌詞・言葉などレコードの内容)を文字起こししたものです。演目・演者・発売番号等も確認することができます。
- 倉田喜弘,岡田則夫監修『大正期SP盤レコード 芸能・歌詞・ことば全記録』第1~9巻(大空社 【KD355-G8】)
『日本蓄音器文句全集』大正2~5年、『ニッポノホン音譜文句全集』大正6~11年の復刻版。 - 『蓄音器文句集』(5版 正文舘 1914【KH13-L245】)
大正3年1月までに発売された日蓄のレコード内容を収録。 - 『ニッポノホン 歌舞伎レコード特別号』(日本蓄音器商會 1921【YM2-M485】)
- 『日本歴史歌繪卷』(西脇乃夫彦 1937【YM2-M1195】)
コロムビア教育レコード『日本歴史歌絵巻』の文句集です。
4-2.レコード解説集
- 『日本民謠全集』(日蓄工業 1943【YM2-M1186】)
馬小唄、山中節、江差追分、安来節等民謡レコードの歌詞、解説を収録。解説は作詞家の高橋掬太郎。
教育用レコードの解説集
- 『兒童のためのレコードの選び方:家庭の教育に』(日本コロムビア蓄音器敎育部 1932【YM2-M2182】)
- 山田耕筰『レコードによる洋楽鑑賞の実際』(日本コロムビア蓄音器 昭和7【622-33】)(国立国会図書館デジタルコレクション)
予約頒布形式のレコード解説集
予約会員を対象に頒布していたレコードアルバムの解説集です。これらのレコードは原則として販売目録には掲載されていません。
- 『ダンス新盤特選集解説』第1~6号(日本蓄音器商會 【YM2-M359】他)
- 『シャンソン・ド・パリ解説書』(日本蓄音器商會 1938【KD841-H349】(国立国会図書館デジタルコレクション); 1940【KD841-H350】(国立国会図書館デジタルコレクション))
- 『西班牙ギター音楽解説』(日本蓄音器商会 昭和13【特228-65】)(国立国会図書館デジタルコレクション)
4-3.外地向けレコード
- 『日本コロムビア外地録音ディスコグラフィー : 人間文化研究機構連携研究文化資源の高度活用』
戦前、日蓄が外地向けに制作発売したレコードのディスコグラフィーです。 - 劉麟玉, 福岡正太 編著『音盤を通してみる声の近代 : 日本、上海、朝鮮、台湾』(スタイルノート 2024【KD355-R3】)
4-4.その他の参考資料
- 大西秀紀編『SPレコードレーベルに見る日蓄-日本コロムビアの歴史』(京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター 2011【DL731-J229】)
※日本伝統音楽研究センターのウェブ版もあります。 - 「昭和の流行歌 資料編」(LPレコード『SP時代 昭和の流行歌』【YMA-247-20-1 ; YMA-247-23-1】の付属資料)
「コロムビア・レコード流行歌年表」で昭和3~37年のSP盤流行歌を網羅しています。タイトル・発売番号・作詞家・作曲家・歌手(演者)、発売年月の記載があります。
(LPレコードの付属資料のため、ご利用には閲覧許可申請書が必要です。) - 岡田則夫「続・蒐集奇談」(『レコード・コレクターズ』【Z11-1283】)
戦前、戦後のSPレコードのレーベルを分類、解説している連載記事です。- 第9回(93号 1991.6 pp.104-109):ニッポノホン以前
- 第10回(94号 1991.7 pp.116-122):ニッポノホン
- 第11回(95号 1991.8 pp.118-124):オリエント
- 第12回(96号 1991.9 pp.98-104):合同蓄音器系の各社レーベル
- 第28回(116号 1993.4 pp.104-109):コロムビア
- 第30回(117号 1993.5 pp.106-111):リーガルほか ※第29回は欠番