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対南方発展施策ニ関スル件(対蘭印経済発展ノ為ノ施策)

昭和15年11月5日 閣議決定

収載資料:国立公文書館所蔵公文別録 87 ゆまに書房 1997.5 414-418 当館請求記号:YC-98

世界新秩序ノ進展ニ伴フ経済圏発生ノ必然性並ニ日独伊三国条約ニ基ク皇国ノ蘭印ニ於ケル優位ヲ確認シ共存共栄ノ大局的立場ニ基キ速ニ蘭印ト経済的緊密化ヲ図リ以テ其豊富ナル資源ヲ開発利用シ皇国ヲ中心トスル大東亜経済圏ノ一環タル実ヲ挙ケシメンコトヲ期シ、差当リ左記要領ニヨリ施策スルモノトス
一、蘭印経済ヲシテ欧米経済ブロックニ依存セル状態ヲ清算セシメ大東亜経済圏ノ一員タル立場ヲ取ラシムルコト
二、現在邦人ノ経済的活動ヲ阻害スル諸種ノ制限的措置(別紙参考資料)ヲ撤廃又ハ緩和シ、邦人ノ経済的活動ヲ他ニ優先シテ自由活達ナラシムル如ク努ムルコト
三、皇国ノ必要トスル重要物資ヲ可及的ニ大東亜圏内ニテ確保シ以テ英米ヨリ資源的独立ヲ図ルタメ蘭印ニ対シ共同開発ヲ提議スルコト
要スレバ適当ナル島嶼地域ノ租借又ハ買収ヲナスコト
四、皇国ノ必要トスル重要物資ノ供給確保ニ関シテハ先ニ蘭印側ノ保障ヲ取リ付ケタルモ更ニ此等物資ノ種類及数量ノ増加ニツキ蘭印ノ同意ヲ求ムルコト
尚進ミテハ重要物資持ニ蘭印ノ世界的独占商品タル錫、ゴム、規那等ヲ皇国ノ指導ニヨル貿易管理ノ実現ニ努ムルコト
五、共存共栄ノ実ヲ挙ゲルタメ可及的土着民ノ収益トナル蘭印産農産物ノ買付ヲナシ土着民ノ購買力ヲ培養ス、
コレガ為蘭印側ニ於テハ可及的我ガ国ノ要請ニ応ズル如ク農業ヲ誘導スルコト
六、皇国製品ノ対蘭印輸出増進ニツキ特ニ協力提携ヲ求ムルコト
七、将来他ノ大東亜諸地域ヲ併セ皇国ヲ中心トスル大金融圏ノ設定ヲ目標トシ、蘭印トノ新金融関係ノ設定ニ付テモ之カ一環タラシムル如ク努ムルモノトス、但シ蘭印自体ハ之ヲ円地域トナスコトヲ目的トセザルコト
蘭印ニ於ケル為替管理ヲ皇国ノ指導下ニ置ク如ク努ムルコト
差当リ蘭印ニ於ケル為替管理ノ運用ヲ邦人ニ対シ寛大ナラシムルト共ニ蘭印ノ銀行等ヲシテ本邦ニ対シクレヂツトノ設定其ノ他極力金融上ノ便宜ヲ供与セシムルコトトス
八、交通及通信ニ関シテハ大東亜全局ノ指導的地位ヲ確保スル一環トシテ左ノ特殊権益ノ設定ニ努ムルコト
イ、沿岸貿易権、不開港入港権及港湾設備ノ経営及利用権
ロ、海底電線ノ陸揚及運用権、国内通信事業経営ニ対スル参加権、ソノ他ノ通信権
ハ、定期航空路ノ新設及航空保安施設ノ設置権
九、水産業ニ関シテハ南方ニ確固タル地歩ヲ建設スルタメ漁船ノ増加、漁獲物輸入港制限ノ撤廃、漁業根拠地ノ設置、其ノ他水産業ノ経営ニ伴フ権益ノ獲得ニ努ムルコト
十、蘭印ニ於ケル第三国権益ニ関シテハ新規ノ設定ヲ許サズ又既存ノモノニシテ皇国ノ発展ニ障害トナルガ如キモノハ之ヲ駆逐スルガ如ク努メシムルコト
十一、蘭印ノ対内外経済政策ノ樹立及実施ニ参与シ皇国トノ経済的提携ヲ指導強化スル為蘭印側ニ邦人ヲ加ヘタル経済建設委員会、其他適当ナル機関ヲ設ケシムルコト
貿易、金融、税制、関税、第三国トノ経済協定、企業、交通、通信等ニ関シテハ右機関ヘノ諮問ヲ要スルモノトス
差当リ、在蘭印邦人輸入商ヲ経済省ノ諮問委員会ニ参加セシムルコト
十二、蘭印ニ於ケル新聞其他刊行物ノ対日悪論調ニ対シ徹底的ナル取締ヲ要求スルト共ニ邦人ノ新聞発行ニ対スル自由ヲ確保セシムルコト
十三、在住華僑ノ援蒋抗日態度ニ対シテハ蘭印当局ノ厳重ナル取締ヲ要求スルト共ニ一方ソノ経済的地位ニ鑑ミ大局的立場ヨリ華僑ノ組織及資力ノ利用ヲ策スルコト
十四、皇国ノ経済的発展ヲ期スル為、土着有力者ヲ皇国ニ招致シ又ハ皇国ノ真姿ヲ宣伝正解セシムル等諸般ノ処置ヲ講ズルコト
十五、経済施策ハ大東亜共栄圏確立ノ大局的立場ニ立脚スルコトトシ、皇国ノ利益伸長ト土民ノ民生ト調和スル如ク努ムルコト