日本銀行法案要綱
閣議決定年
昭和17年1月7日 閣議決定
収載資料:日本金融史資料 昭和編 第34巻 日本銀行調査局 大蔵省印刷局 1973.5 pp.475-476 当館請求記号:338.21-N684n
日本銀行ヲシテ内外諸般ノ情勢ノ進展ニ即応シ我国中央発券銀行タルノ使命ヲ完ウセシムル為左記要綱ニ依リ日本銀行制度ヲ改正スルコト
記
一、日本銀行ハ国家経済総力ノ適切ナル発揮ヲ図ル為国家ノ政策ニ即シ通貨ノ調節、金融ノ調整及信用制度ノ保成ヲ目的トスルコト
二、日本銀行ハ特別法ニ依ル特殊法人トシテ専ラ国家目的ノ達成ヲ使命トシテ運営セラルルモノトスルコト
三、資本金ハ一億円トシ政府ハ内五千五百万円ヲ出資スルモノトスルコト
四、日本銀行ニ総裁一人副総裁一人理事三人以上監事二人以上ヲ置キ政府之ヲ任命スルコト
理事ハ総裁ノ推薦ニ依ルコト
政府ハ一定ノ事由アル場合ニ於テハ役員ヲ解任スルコトヲ得ルコト
五、日本銀行ノ職員ハ之ヲ公務員ト看做スコト
六、日本銀行ノ業務ノ範囲ヲ拡充シ国内商業金融ノ調整ヲ中心トスル従来ノ制度ニ加ヘ左ノ業務ヲ行フ制度トスルコト
(一) 産業金融ノ調整疎通ニ任ゼシムルコト
(二) 金融調節ノ為ノ市場操作ヲ積極的ニ行ハシムルコト
(三) 外国為替ノ売買其ノ他国際金融取引上必要ナル業務ヲ行ハシムルコト
(四) 信用制度ノ保持育成ニ当ラシムルコト
七、銀行券ノ金兌換制度ヲ廃止シ管理通貨制度ヲ基礎トスル発券制度ヲ設クルコト
八、政府以外ノ出資者ニ対シテハ剰余金中ヨリ年五分ヲ超エズ且年四分ヲ下ラザル割合ノ剰余金ノ配当ヲ為スベキコト
九、政府ハ政府以外ノ出資者ニ対シ年四分ノ剰余金ノ配当ヲ保証スルコト
十、政府ノ出資ニ対シテハ剰余金ノ配当ヲ為サザルコト
十一、剰余金中ヨリ積立金及配当金ヲ引去リタル残額ハ国庫ニ納付スベキコト
十二、将来日本銀行解散スル場合ニ於テ払込資本金額ヲ超ユル残余財産ハ之ヲ国庫ニ帰属セシムルコト
十三、日本銀行条例ニ依ル日本銀行(旧日本銀行)ハ本法ニ依ル日本銀行(新日本銀行)ト為ルモノトシ大蔵大臣ハ日本銀行改組委員ヲ任命シテ之ガ所要ノ手続ヲ行ハシムルコト
旧日本銀行ノ権利義務其他ノ法律関係ハ新日本銀行ニ於テ一切之ヲ継承スルモノトスルコト
十四、旧日本銀行株主ハ其ノ儘新日本銀行ノ出資者トナルモノトシ新日本銀行ハ右出資者ニ対シ国債又ハ現金ヲ以テ補償金ヲ交付スベキコト
右補償金算出ノ基準ハ適当ナル期間中ニ於ケル旧日本銀行株式ノ時価及新日本銀行成立ノ際ニ於ケル新日本銀行出資ノ時価ヲ参酌シ日本銀行株式補償審査委員会ノ議ヲ経テ大蔵大臣之ヲ定ムルコト
右補償金ニハ所得税ヲ課セザルコト
十五、本法ノ制定ニ伴ヒ貨幣法、朝鮮銀行法、台湾銀行法等ニ関スル所要ノ規定ヲ設クルコト
十六、日本銀行条例、兌換銀行券条例、日本銀行納付金法、昭和十六年法律第十四号及金準備評価法ハ之ヲ廃止スルコト