結核対策要綱
閣議決定年
昭和17年8月21日 閣議決定
収載資料:資料日本現代史 12 大政翼賛会 赤沢史朗,北沢賢三ほか編 大月書店 1984.7 pp.373-374 当館請求記号:GB631-39
第一 趣旨
結核撲滅ハ国家喫緊ノ要務ニシテ皇国民ノ隆替ニ関スル重大事ナリ依ツテ此ノ際結核撲滅ニ関スル強固ナル国家意思ヲ確立シ厚生、教育、産業等ノ行政各分野ヲ挙ゲテ結核ノ予防撲滅ヲ枢軸トスル各般ノ施策ヲ強力且徹底的ニ実施スルヲ要ス
而シテ結核ハ諸般ノ発病要因アルノ特質アルニ鑑ミ、之ガ予防撲滅ニ当リテハ医療対策ノ外寧ロ国民生活ノ全分野ニ亘リ多角的ナル諸対策ヲ全面的ニ実施スルノ要アルモノトス
第二 要領
青壮年層ヲ主攻目標トシ対策実施ノ基底ヲ国民体力法ニ依ル国民体力管理徹底強化ニ置キ左ノ方途ヲ講ズ、但シ既設ノ人員及資材ヲ動員シ新設新営ハ原則トシテ之ヲ行ハザルモノトス
一、健康者ニ対スル措置
体力検査ノ結果健康者ト判定セラレタル者ハ倍々不罹患心身ノ保有者タラシムルヤウ施策スルモノトス、之ガ為各人ヲシテ日常一定ノ鍛錬ヲ実務トシテ実行セシムル如ク施設措置スルコト
各省ハ其ノ所管分野ニ付厚生省卜緊密ナル連絡ヲ保持シツツ責任ヲ以テ健民政策ヲ実行スルモノトス
二、弱者ニ対スル措置
体力検査ノ結果筋骨薄弱者、軽症結核患者、恢復期結核患者ト判定セラレタル者ニ付テハ之ガ養護ノ強化ニ努ムルモノトス、之ガ為一定期間療養及ビ修錬ヲ併施スル健民修錬ノ施設ヲ為スコト、右ノ者ガ労務ニ服シ居ル場合ニ於ケル労務管理上ノ処置ニ関シテハ厚生省ハ当該所管官庁ト協議ノ上措置スルモノトス
三、病者ニ対スル措置
体力検査ノ結果開放性乃至重症結核患者ト判定セラレタル者ハ悉ク之ヲ結核病床ニ収容スルコトヲ目途トス、之ガ為日本医療団ノ事業ヲ大イニ促進スルト共ニ結核病床増設五箇年計画ヲ三箇年計画ニ改変スルコトヲ目途トシテ措置スルコト
四、一般的措置
(イ)保健指導網ノ整備
全行政組織、大政翼賛会其ノ他社会各般ノ組織ノー切ヲ挙ゲテ保健指導網卜為シ全国ニ亘リ活発ナル健民運動ヲ展開スルコト
(ロ)社会保険制度ノ拡充
結核患者ノ療養ヲ確保シ並ニ患者家族ノ生活援護ニ資スル為社会保険制度ヲ国民ノ全部ニ拡充強化スルコト
(ハ)日本医師会ノ総動員
日本医師会ヲ総動員シテ全医師ヲ医療普及ニ挺身奉仕セシムルコト
(備考)
各外地ニ於テハ夫々当該地域ノ実情ニ応ジ適切ナル措置ヲ講ジ結核ノ撲滅ニ努ムルモノトス