輸送力増強に伴う引揚者受入態勢の整備強化に関する件
閣議決定年
昭和21年2月8日 閣議報告
収載資料:引揚げと援護三十年の歩み 厚生省援護局 厚生省 1977.10 pp.540-542 当館請求記号:EG71-13
米船貸与に依る在外邦人帰還輸送力の画期的強化に即応する為政府は左記に依り急速に引揚者受入態勢を整備強化するものとす。
記
一、地方引揚援護局の整備強化
(一)連合軍最高司令部の指令に依る追加指定港たる別府、唐津、田辺に速急地方引揚援護局を設置すると共に既設の地方引揚援護局の陣容を一段と充実強化するものとす。
(二)前号に依る地方引揚援護局の新設及拡充強化は、遅くも三月上旬までに完了するものとす。
(三)地方引揚援護局の整備強化に付ては関係各省全面的に厚生省に協力支援するものとす。
二、宿泊施設の拡充整備
(一)指定港湾所在地に於ける既設地方引揚援護局の宿泊施設に付、其の収容力を連合軍最高司令部指令に規定せられたる能力の概ね二倍に増強するを目途として、急速に之を拡充強化すると共に、新設の地方引揚援護局に付ても右に準じ所要施設を速急整備するものとす。
(二)施設の拡充整備は三月上旬までに完了するを目途とし、原則として既存旧陸海軍関係施設、其の他の既存施設の改修移築等に依り実施し、新設は必要なる最少限度に止むるものとす。
(三)施設の設営は厚生省之を担任し、一月中旬まで之が具体的計画を樹立し之が資材、労務、輸送、経費等に付ては第一復員、第二復員、内務、農林、商工、運輸、大蔵の各省全面的に協力するものとす。
三、医療施設の拡充強化
(一)地方引揚援護局の医療施設並に検疫施設を前項に準じ、拡張整備すると共に国立病院、国立療養所の全面的活用と日本医療団、日本赤十字社其の他一般の医療施設の積極的利用の方途を講ずるものとす。
(二)輸送船舶(病院船を含む)内の医療施設(医療及検疫従事員の乗組所要設備の設置)を確立し、船内患者の医療に万全を期すると共に海外現地に対する医薬品等の追送補給に遺憾なきを期するものとす。
(三)右実施は厚生省担任し、運輸、第一復員、第二復員の各省之に協力するものとす。
四、被服、食糧其の他所要物資の確保
(一)引揚者の応急援護に要する被服、食糧其の他各種生活必需物資及医薬品等は昭和二十一年度に約五百万人引揚ぐるものと推定し、其の所要量を各上陸地に集積するものとす。
(二)所要物資の調達に当りては特殊物件、隠匿物資及新規生産品の優先的充当を図ると共に一般民間物資の強力なる供出の方途を講ずるものとす。
(三)前二号に依る各種物資の供給は其々内務、商工、農林の各省之を担任し輸送に付ては運輸省之に協力緩助するものとす。
五、輸送船舶の運航調整
(一)上陸地に於ける混雑を防止して手続処理の迅速化を図る為特定港の集中的使用を避くると共に一方面よりの帰還港を可及的一定ならしむるが如く計画するものとす。右計画に付ては運輸省及第二復員省担任し、第一復員省之を援助するものとす。
(二)港湾及船舶の無電装置を整備し、船舶運航に関する通信連絡に遺憾なからしむるものとす。
右の整備は逓信院之を担任し運輸省、第一復員省、第二復員省之を援助するものとす。
六、引揚指導要員の船舶乗組
上陸地に於ける引揚業務の斉整迅速化並に引揚者に対する指導及内地事情の伝達等に資する為輸送船舶に引揚者指導要員を乗組ましむるものとす。
七、鉄道輸送の強化
(一)上陸地よりの鉄道輸送を揚陸人員に即応せしむる如く、円滑化を図ると共に患者並に遺骨の輸送に付ては特別の措置を講ずるものとす。
(二)上陸地其の他主要駅に於ける引揚者の案内並に供食、其の他の斡旋施設を整備強化し鉄道輸送間の援護に遺憾なからしむるものとす。
右計画は厚生省之を担任し、之が実施に付ては運輸省及農林省協力援助するものとす。
八、上陸地に於ける交通、通信の施設の整備
(一)引揚者の受入及送出に関する上陸地に於ける諸機関及諸施設間の連絡を緊密にし、業務遂行の能率化を図る為相互問の交通、通信施設を整備強化するものとす。
(二)前号の交通通信施設の整備強化は厚生省之を担任し、運輸省、逓信院、第一復員省及第二復員省之に協力するものとす。
備考
(一)今後満洲、北鮮方面よりの引揚者に対しても日本海岸方面に於て同様の上陸施設をなすものとす。
(二)配船調整に付ては本要綱の趣旨に沿う如く連合国軍側の援助を得ることに努むること。
(三)上陸地に於ける収容期間の短縮を図る為引揚先なき者に対する定着援護の具体化を促進すること。
引揚援護局宿泊施設能力調
(表省略)
註 一、戸畑は現地軍の要求により門司を変更せるものなり。
二、仙崎の現有能力備考(入)二、〇〇〇は学校、公会堂、劇場、民家等なり。