戦後産業再建のための応急的金融対策に関する件

昭和21年6月25日 閣議決定

収載資料:内閣制度百年史 下 内閣制度百年史編纂委員会 内閣官房 1985.12 pp.296-297 当館請求記号:AZ-332-17

戦後の産業再建を促進し速かに国民生活の安定を図る為に必要な産業資金の供給に付ては今後各種金融機関の自由敏活な金融に期待すべきであるが、種々の客観的条件に依つて普通の金融機関よりの金融を期待し得ない場合がある。斯る場合に応ずる為の金融機構を整備する為今議会に「復興金融資金特別会計法案」(仮称)を提出する予定であるが、復興金融資金が設置せられ、その業務の運営を開始するに至る迄の期間に於ても民需生産を速かに開始する為、通常の方法によつては資金の調達を期待し得ない者に対して何等かの金融の途をつける機構が必要である。これが為左記要領によつて日本興業銀行に特別の金融をさせることとし、その金融に付ては新たに復興金融委員会を設けて審議に当らせることとする。

一、国民経済に必要な産業の復興及び平和産業への転換に必要なる資金並びに国民経済の民主化を図る為必要なる資金で特に通常の方法に依つては調達する事が困難な資金であると復興金融委員会が認定したものに限り、同委員会が決定した条件に従つて日本興業銀行をして融資せしめる。(以下この資金の融通を特別融資と称する)
二、特別融資を受けた者は復興金融資金が設置せられた時には必ず復興金融資金より借入を受け得ることとし新たなる借入金を以て特別融資の返済に充てしめるものとする。従つて特別融資に対しては政府補償を要しない。
三、復興金融委員会は官制によらず差当り閣議決定に基いて設置し大蔵大臣の監督に属せしめる。
委員会に一部会、二部会を設け日本興業銀行が特別融資の借入申込を受けたときは先づ第二部会に於てその融資が他の金融機関でなし得ないかどうかを審査せしめる。
第二部会に於て他の金融機関で融資し得ないものと判定したものに限り、これを第一部会に送付し第一部会に於てその融資が必要であるか否かを審議し融資が必要であると認定したときには更に貸付の金額及び条件を決定する。
第一部会の委員は大蔵、商工、農林、運輸各省関係官、金融及び産業に従事せるもの及び政党代表合計十五名以内を以て組織する。
第二部会の委員は大蔵省関係官及び金融に従事せるもの十名以内を以て組織する。
(備考)所要に応じ日本興業銀行の外日本勧業銀行をして同様の融資を行はしめること。