賠償事務の実施要領に関する件

昭和22年9月30日 閣議決定

収載資料:経済安定本部戦後経済政策資料 第3巻 経済一般・経済政策(3) 総合研究開発機構戦後経済政策資料研究会編 日本経済評論社 1994 pp.102-109 当館請求記号:DC55-E831

賠償事務の実施についてはその統一的運営を図るとともに整然且つ迅速にこれを処理するため左記要領により措置することとする。

一、賠償事務実施の中核機構とその運営
(一)賠償事務実施に関する連合国側との連絡及び連合国の各般の指示は原則として中央及び地方とも終戦連絡事務局を通じ行われること。
(二)賠償事務の遂行に関連する基本的事項については経済安定本部において企業立案の上、中央賠償協議会の議を経てこれを決定すること。
(三)中央において決定をみた基本的事項については速やかに経済安定本部総務長官より地方経済安定局長に移ちょうするとともに関係各省に通報し当該関係各省よりその出先機関に通ちょうすること。
(四)(二)及び(三)に挙げられた経済安定本部の事務はその事務の性質に応じ昭和二二年十月二二日の賠償業務処理機構の調整に関する閣議決定に基ずき終戦連絡中央事務局賠償部において取扱うこと。
(五)地方における賠償事務関係官庁間の連絡を緊密ならしめるため中央における賠償協議会の組織に則って、地方賠償協議会を地方経済安定局ごとに都府県賠償協議会を主要都府県に置くこと。
(六)地方における賠償事務の主要事項の決定又は実施に関する諸問題についてはその事項の性質に応じ地方賠償協議会又は都府県賠償協議会の議を必らず経ることとすること。

二、賠償設備の所管
賠償に充てられるべき設備の内撤去すべきもの(以下賠償設備という)の所管は当該設備の管理保全の責任を有する大臣とし、その設備の解体、こん包が終り、引取国の船舶又は航空機に積込の為輸送が開始せられたものについては運輸大臣とすること。

三、賠償設備撤去作業(作業の監督を含む、以下同じ)の政府部内における責任及び取扱機構
(一)賠償設備の解体、こん包作業の責任者は当該撤去設備の管理保全の責任を有する各省大臣とすること。
各省大臣は必要と認めた場合都道府県知事を本作業の直接相当者とすることができる。
(二)(一)の設備の内解体、こん包が終り、引取国の船舶又は航空機に積込のため輸送(保管、船積を含む、以下同じ)の開始とされたものについての責任者は運輸大臣とすること。
(三)賠償設備の引取国に対する引渡責任者は運輸大臣とすること。
(四)都道府県知事は(一)、(二)及び(三)の作業の円滑な実施を確保するため警備、保全、労務、食糧等の部面で格段の努力を払うこと。
(五)撤去作業責任官庁は地方及び都府県協議会を活用して関係各省出先機関相互間の連絡を密接にし、中央よりの通ちょうに基ずいて作業の円滑を期すること。

四 賠償設備撤去用資材及び機材の確保
(一)撤去用資材についてはその重要性にかんがみて優先的に取扱ひ(賠(編者注:賠にまる印)の設定等)各方面の協力により絶対確保を図ること。
(二)撤去用資材はできうる限り政府において調弁し官給するものとする。
(三)撤去作業用資材及び機材についてはできうる限り商工省において一括調達確保を図るものとすること。

五、賠償設備撤去作業の請負契約の締結の方式
(一)賠償設備撤去作業の請負契約の政府側契約者は解体、こん包については当該作業責任官庁又はその委任を受けた財務局長、商工局長(又は都道府県知事)もしくは海運局長とし輸送については当該作業責任官庁である運輸大臣又はその委任を受けた鉄道局長、もしくは海運局長とすること。
(二)
(1)解体、こん包に関する契約
解体、こん包に関する契約は原則として指名競争契約とすること。但し当該撤去設備の契約者又は管理担当者が自ら撤去担当者としての能力ありと認められるときは之と随意契約を締結することができる。
(2)輸送に関する契約
当該作業の担当責任官庁である運輸大臣(鉄道局長及び海運局長を含む)は輸送請負業者を選定して輸送に関する契約を締結すること。
(3)請負業者選定の公正適確を期するため右の随意契約の締結及び請負業者又は下請負業者の選定についてはその性質に応じ中央、地方又は都府県賠償協議会の議を経ることとすること。

六、賠償設備撤去作業経費の支出
賠償設備撤去作業に要する経費は従前の終戦処理費の運用に準じてできうる限り迅速、円滑に支出するよう措置すること。