米国対日援助見返資金運営の考え方案(一般的基準)

昭和24年5月10日 閣議了解

収載資料:昭和財政史 終戦から講和まで 第18巻 大蔵省財政史室編 東洋経済新報社 1982 pp.358-359 当館請求記号:DG15-19

第一、本資金運営の一般方針
一、米国対日援助見返資金はその特質に鑑み国内の通貨及び財政の安定、日本経済の再建復興及び輸出の振興のため特に緊要と認められる用途に限り運営する。
二、国債の買入償還による通貨の調整と公私企業への投融資とは妥当なる調和を保つものとすると共に投融資に当っては経済復興計画の要請する最重要の需要を充たす如く配慮する。
三、公企業については政府又は地方公共団体の通常の歳入によって賄うべき資金は本資金の運営対象とはしない。
四、私企業については蓄積による自己資金及び通常の資金調達方法によって資金が得られると認められる場合は本資金の運営対象とはしない。
五、本資金の投融資はその投入により日本経済全体の均衡のとれた生産力の拡充、設備の合理化等の効果を有効に発揮する見込が確実であって且つ償還の確実な場合に限りこれを行う。

第二、本資金運営の対象
一、国債の買入れ又は償還
(1)国債の買入れ又は償還にあたっては、通貨金融の状況を勘案し、日本銀行が行う金融操作と密接に関連せしめ、円滑なる金融政策の遂行に資するものとする。
(2)買入れ又は償還すべき国債の銘柄については、復金債償還のための交付公債を最優先とするが、その他のものについては現在の金利水準との関連、一般金融の運営状況を考慮して具体的に選定するものとする。
二、企業投融資
本資金の企業への投融資にあたっては、概ね左に掲げる如き範囲のものから具体的にこれを選定するものとする。
(1)日本経済復興の為特に緊要な基幹産業に属する企業
(2)食糧増産のため特に緊要なもの
(3)輸出産業又は国内資源の活用により輸入の節減に役立つもの
(4)前記産業の関連産業として特に緊要なもの
(5)勤労者住宅
(6)国営及び公営企業で特殊な事情のあるもの

第三、資金運営の形態
一、公企業
(1)国営企業へ資金を供給する場合には、原則として国債の引受けの方法によるが資金の性質によっては使用を認めうる建前とする。
(2)公営企業に対し資金を供給するには原則としては貸付の形式による。
二、私企業
(1)私企業に対する資金の供給は原則として各個別企業について貸付け又は社債引受の方法による。
(2)農林水産業又は輸出産業その他の中小企業を対象とする場合には、農林中金、興銀、商工中金等に対し金融債の引受け若しくは貸付の方法によりこれら金融機関に資金を供給し、これらの金融機関はその責任において所定の目的に従い貸付を行う。

第四、運用の条件
(1)貸付等の利率は原則として一般の金利に準ずるものとするが、公企業その他特定の企業については、国債金利を下らざる限度において特別の考慮を払う。なお金利については固定的なものとせず一般の金利水準の変動に従い変更するものとする。
(2)貸付等の期限は原則として十年以内とし、特別のものについては、具体的場合に適当に定める。貸付金の回収については特に確実を期するものとする。
(3)返済方法は定期償還又は割賦償還の方法による。
(4)担保は原則として徴する。