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産業合理化に関する件

昭和24年9月13日 閣議決定

収載資料:商工政策史 第10巻 通商産業省編 商工政策史刊行会 1972.3 pp.42-44 当館請求記号:509.1-Tu783s

均衡予算の確立、単一為替レートの設定、健全金融方針の推進等に伴い、産業の合理化は、我国経済運行上不可欠の要件となったが、この強力な推進を図るため、
一 合理化の前提条件として将来の産業構造よりみたる各産業の指導方針の確立を図る。
二 合理化は、原則として国際価格へ(国立国会図書館注)の速やかな鞘寄せを目標とする。
三 企業内部の合理化については原則として創意工夫に俟つものとし合理化を推進する環境の育成並に合理化を阻害する障害の除去を図る。
四 能率の向上、優秀技術の採用については、積極的に之が推進を図る。
の方針に基き、左記により速かに企業の合理化を図るものとする。

一 産業の指導方針
1 均衡予算の確立、単一為替レートの設定、健全金融方針の推進、最近の輸出市場の状況等を基礎とし、産業再編成のための実施計画を考慮しつつ、各産業の指導方針を確立する。
2 右の場合においては、合理的に国内自給度を高める範囲内において最大限の国内資源の開発と国内産業の育成を図る。
二 合理化の目標
1 前項の産業の指導方針を基礎として業種別に左を基準として合理化の目標を定める。
イ 輸出物資については、競争国における市場価格
ロ 輸入を必要とする物資については、当該物資の日本着港渡価格、但し、輸出品の価格に重要な影響を与える物資については、競争国における市場価格
ハ その他の物資については、原則として一般国際価格とするもわが国における当該物資の生産の特殊の条件を考慮する。
2 企業経営の指標として、右の目標に基き、標準原価及び標準原単位を定める。但し、企業の現状に鑑み、標準原価及び標準原単位は段階的に定める。
三 合理化計画の審査及勧告
基礎産業その他合理化を特に必要とする産業については、合理化計画を樹立せしめ、政府に提出することを勧告し必要ある場合は提出することを命ずる。政府は、右の合理化計画を審査して勧告を行う。
四 能率の向上及び能率指導
1 工業標準化法に基き速かに標準規格を設定すると共に表示制度を積極的に活用する。
2 品質の向上を図ると共に公正なる競争を確保するため、商品の品質及び優良度について製造業者、販売業者の申出に基いて認定を行い、優良品の表示を附する。優良品の認定を行うため、通商産業省に優良商品認定審査会を置く。
3 工程管理、原材料管理、品質管理、人事管理、事務管理、賃金支払形態その他企業の科学的管理の実施を図るため、その標準方式を設定し、その普及を図る。
4 能率診断制度を設け、企業の申出に基き、企業の全般にわたり、政府職員をして能率診断を行はしめ、その結果に基き勧告を行う。能率診断の実施に当っては、民間の経営者を非常勤職員として採用し、その知識経験を活用する。
5 企業会計制度の普及徹底を図り、且つ、その実施を勧奨する。
五 試験研究の奨励及び優秀技術の普及
1 試験研究機関の整備充実を図ると共に試験研究費は、可及的に予算に計上するものとし、且つその運用の一元化を図る。
2 試験研究成果の工業化を積極的に行うものとし、これがため必要な措置を講ずる。
3 設備の近代化を図るため近代的生産様式の研究を行い、これが普及を図る。
4 外国技術の導入を図るため、技術者の海外渡航の実現を図ると共に、外国工業所有権、設備及機器の購入資金としてエロア資金の利用を懇請する。
5 工業所有権の有効な活用を図るため、企業の申出に基き、工業所有権の実施の斡旋を行う。
六 合理化資金の確保
1 基礎産業その他合理化を特に必要とする産業の合理化実施のため要する資金については、積極的に確保する措置を講ずる。
七 合理化を阻害する障害の除去
合理化を阻害する障害については、可及的に之を除去する措置を講じて、企業の自主的な合理化の促進を図るものとし、差当り左の事項についてその実施を図るものとする。
1 資材統制の大巾緩和及統制方式の改善
2 価格統制の可及的撤廃及び統制価格の適正化
3 資産再評価の実施
4 法人税の軽減その他税制及び徴税方法の改善
5 通信輸送の改善
6 その他
八 外資導入の促進
1 外資導入については、これが促進を図るため、外資導入を阻害する原因の除去を速かに行うものとし、合理化の進展を図るものとする。
イ 統制の緩和
ロ 税制の改善
ハ 送金方法の確立
ニ その他
2 右の外資導入に当っては、産業構造との調整に留意し、各産業についてその導入方針を確立する。
九 合理化を強力に推進するため、産業合理化運動を展開する。
十 産業合理化審議会
1 合理化実施上必要な事項につき調査審議を行ぅため、通商産業大臣の諮問機関として産業合理化審議会を設置する。
2 審議会は、産業人、金融関係者、学識経験者及び関係各庁職員を以て組織し通商産業本省及び通商産業局に設ける。
3 必要に応じ、審議会に事項別及は業種別専門部会を設ける。
4 審議会の審議事項は、次の通りとする。
イ 合理化の一般方針
ロ 業種別指導方針
ハ 標準原価、標準原単位その他業種別合理化の標準
ニ 合理化の障害除去
ホ 企業における科学的管理の標準方式
ヘ 近代的生産様式の研究
ト その他合理化実施上必要な事項
(備考)
1 本件実施上必要な事項については立法措置を行うと共に必要な経費については予算的措置を講ずる。
2 産業合理化審議会は事実上の政府機関として速かに発足せしめて追って法制的措置を講ずるものとする。


(国立国会図書館注)収載資料には「え」とあるが、国立公文書館所蔵の原本には「へ」とある。