暫定総動員期間計画設定ニ関スル方針ノ件

昭和5年4月1日 閣議決定

収載資料:国家総動員史 資料編 第1 石川準吉著 国家総動員史刊行会 1975.8 pp.13-21 当館請求記号:AZ-668-5

昭和四年六月一八日閣議決定ヲ経タル総動員計画設定処務要綱ニ基キ昭和五年度乃至七年度ニ於テ設定スベキ暫定総動員期間計画ハ左記方針ニ依リ之ヲ設定スルモノトス

第一 暫定総動員期間計画ニ包含スベキ資源ノ種類ハ別表ニ依ル

第二 暫定総動員期間計画ニ於テ計画スベキ事項ノ範囲ハ左ノ各号ニ依ル
一 資源ノ配当及補填ニ関スル事項
二 前号計画ニ付必要ナル管制ニ関スル事項
三 総動員上必要ナル警備ニ関スル事項

第三 資源ノ配当及補填ニ関スル計画ノ程度ハ概ネ左ノ各号ニ依ル
一 計画ノ資源区分ハ別表ニ定ムル資源ノ分類ニ依ル
二 計画ノ地理的区分ハ内地、朝鮮、関東州(南満洲鉄道附属地ヲ含ム以下同ジ)、樺太及南洋群島トス但シ内地ニ付テハ必要ニ応ジ更ニ地方的区分ヲ為シ南洋群島ニ付テハ特ニ指示スル資源ニ非ザレバ之ニ関スル計画ヲ設定セズ
三 最小限度ノ国民生活需要額ニ付テハ差当リ別ニ定ムル所ニ依リ算定シタル国民生活需要額ニ付概ネ之ヲ充足シ得ルヤヲ検討スルニ止ム
四 米、鐵、硝酸、石炭及石油ニ付テハ計画綱領ノ外出来得ル限リ詳細ナル各庁計画ヲ設定ス
五 工場ニ付テハ別表ノ工場中陸海軍省ニ於テ管理、使用又ハ収用スル為配当スベキモノニ限リ配当計画ノミヲ設定ス
六 鉄道全般ニ付テハ概略ノ計画ヲ設定ス但シ鮮満鉄道(軍事輸送ヲ除ク)及其ノ他ノ軍事輸送ニ関スルモノニ付テハ出来得ル限リ詳細ナル計画ヲ設定ス
七 汽船ニ付テハ船名ヲ以テ陸海軍省ニ配当スルモノニ限リ配当計画ヲ設定シ海上輸送力ノ大要ヲ以テ配当スルモノニ関シテハ概略ノ計画ヲ設定ス
八 海陸連絡輸送施設ニ付テハ別表ノ港湾ニ付主要設備、積卸能力、用地等ニ関シ概略ノ計画ヲ設定ス
九 自動車ニ付テハ種類及数額を以テ配当スルモノニ限リ計画ヲ設定ス其ノ配当ニ関スル計画ニ付テハ内地ニ限リ更ニ主要地方別ニ区分ス
十 外国資源ニ関スル事項ハ差当リ資料ノ存スルモノニ限リ其ノ取得利用ノ為必要ナル事項ニ付テハ別ニ之ヲ定ム
十一 代用品ニ関スル事項ハ略研究完了ノモノニ限ル
十二 補填ニ関スル各庁計画ハ特二指示スルモノノ外概略ノ計画ヲ設定ス
十三 其ノ他ノ各庁計画ニ付テハ別ニ之ヲ定ム

第四 資源ノ管制ニ関スル計画ノ程度ハ左ノ各号ニ依ル
一 開戦前及開戦初期ニ於テ管制上必要ナル事項ハ出来得ル限リ詳細ニ計画ス
二 前号ノ外概ネ左記事項ニ付概略ノ計画ヲ設定ス
イ 主要食糧ノ管制
ロ 主要原料材料ノ確保及配給ノ管制
ハ 燃料及電力ノ管制
ニ 主要原料材料及成品ノ輸出入ノ管制
ホ 別表ニ定ムル港湾ニ於ケル港務ノ管制
ヘ 主要工業関係研究機関ノ管制
三 米、鐵、硝酸、石炭及石油ノ管制ニ付テハ特ニ出来得ル限リ詳細ナル計画ヲ設定ス
第五 総動員上必要ナル警備ニ関スル計画ハ左ノ各号ニ依ル
一 警察力ノ整備ニ関スル事項ニ付主トシテ警察職員ノ充実増加及招集者ニ対スル補充ノ計画ヲ設定シ其ノ区分ハ内地、朝鮮、台湾、関東州、樺太及南洋群島トシ猶支那ニ於ケル領事警察ニ関スルモノニ及ブ
二 左記地域ノ警備ニ関シ出来得ル限リ詳細ニ計画ス
東京横浜地方、名古屋地方、大阪神戸地方、広島地方、下関及北九州地方、新潟及秋田県ノ油田地方

(別表)
暫定総動員期間計画ニ包含スベキ資源分類表
(表省略)
(註)
暫定期間計画ニ於テ陸海軍省ノ管理、使用又ハ収用スル工場ハ左ノ軍需品ヲ製造スルモノトス
一 艦船(建造及修理)
二 艦船用機関(主機関、電機及補機)
三 銃砲(砲架ヲ含ム)
四 弾丸、薬莢及火二品(火管、信管等)
五 爆弾、機雷及爆雷
六 魚雷及発射管
七 火薬及爆薬
八 防御網
九 指揮要員及諸戦闘通信器
一〇 無線電信電話機、聴音機及探照燈
一一 化学兵器(陸軍省ニ於テハ化学戦資材ヲ含ム)
一二 光学兵器
一三 潜水艦用二次電池(基板ヲ含ム)
一四 航海及航空用ノ諸計器
一五 繋留要具
一六 航空機ノ機体及発動機
一七 戦車及特種自動車(装甲自動車、牽引自動車等)
一八 前諸号ノ軍需品ノ主要部分品
一九 燃料油及潤滑油
二〇 開戦初期戦争準備完了ノ為必要ナル左記軍需品
イ 防寒及防暑被服
ロ 鎧兜、鑿井機、蹄釘等特種軍需品