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満洲ニ於ケル電信電話事業ニ関スル件

昭和7年12月9日 閣議決定

収載資料:現代史資料 40 みすず書房 1973.12 pp.226-228 当館請求記号:210.7-G29

満洲ニ於ケル有線無線ノ電信電話及放送事業ハ帝国ノ国策遂行就中国防上ノ要求ニ吻合セシムルト共ニ満洲国ノ文化及経済ノ発展ニ資スルヲ以テ其ノ根本方針トシ右目的遂行ノ為武藤全権大使ヲシテ満洲国政府代表者トノ間ニ日満合弁会社ヲ設立シ日満両国政府監督ノ下ニ関東州、満鉄附属地及満洲国ニ於ケル有線無線ノ電信電話及放送事業ヲ施設経営セシムル旨ノ協定ヲ締結セシムルコトヽシ其ノ内容ハ大体左記ノ趣旨ニ依ルコトト致度

甲、前文
日満両国政府ハ関東州、満鉄附属地及満洲国ニ於ケル両国政府所属ノ通信施設ヲ統合シ右地域に於ケル有線無線ノ電信電話及放送事業(鉄道航空ニ附帯スルモノ及警備専用ノモノヲ除ク、以下同シ)ヲ合同経営ノ下ニ置クコトヲ有利ト認メタルニ依リ本協定ヲ締結スルモノナリトノ趣旨ヲ記スコト
乙、本文
一、日満両国政府ハ協力シテ日満合弁ノ株式会社ヲ設立セシメ同会社ヲシテ関東州及満鉄附属地並満洲国ニ於ケル有線無線ノ電信電話及放送事業ヲ経営セシムルコト
二、会社ノ資本金ハ約金五千万円トシ両国政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ増減スルヲ得ルコト
三、会社ニ対シ日本国政府ハ関東庁所管ノ通信施設ヲ出資シ満洲国政府ハ同国所属ノ通信施設ヲ出資スルノ外日満民間株式公募及満洲国側民間ノ現物出資ヲ認ムルコト
前記ノ現物出資額ハ公正ナル方法ニ依リ其ノ施設ノ現有価格ヲ評価シテ之ヲ算出スルコト
本項ニ関シテハ別ニ附属取極メヲ以テ日本国政府ノ現物出資額ハ一千五百万円乃至一千八百万円、満洲国政府ノ現物出資額ハ四百万円乃至六百万円ト判定セル旨ヲ定ムルコト
四、日満両国政府ハ会社ノ業務ヲ監督スルコト
註、実際ノ運用ニ於テハ会社ニ対スル日本国政府ノ監督ハ関東長官ヲシテ為サシムルモノトス、以下同シ
五、会社ノ定款ノ変更、社債ノ募集、料金ノ決定変更、利益金ノ処分合併解散ノ決議、毎営業年度ノ事業計画、他ノ通信会社トノ契約締結、所属財産ノ譲渡若クハ担保権ノ設定ハ両国政府ノ認可ヲ受クルヲ要シ又会社ノ重役ノ選任及解任ハ夫々其ノ所属国政府ノ認可ヲ受クルヲ要スルコト
六、日満両国政府ハ会社ノ業務ニ関シ必要ナル命令ヲ為スヲ得ヘク又会社ノ決議若クハ役員ノ行為ニシテ本協定、両国法令、定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ又ハ監督官憲ノ命令ニ違反シタルトキハ日満両国政府ハ其ノ決議ヲ取消シ又ハ役員ヲ解職スルヲ得ルコト
七、会社ノ重役中日本国人及満洲国人ノ割合ハ両国ノ政府及民間ノ持株数ノ比例ニ依ルモ一方国人重役ノ数ハ他方国人重役数ノ三分ノ一ヲ下ラサルコト
八、会社ノ株式ハ日満両国ノ政府、公共団体、国民又ハ両国ノ法令ノ何レカニ依リ設立シタル法人ニシテ其ノ議決権ノ過半数カ第三国人又ハ第三国法人ニ属セサルモノニ限リ之ヲ所有スルヲ得ルコト
九、会社ノ株式配当ニ付テハ其ノ公益的性質ニ鑑ミ最高額ヲ公正ナル一定率ニ限定ス又政府持株以外ノ株式ニ対シテハ或程度ノ率ニ依ル優先配当ヲ認ムルコト
一〇、日満両国ノ政府、公共団体其他ノ公ノ機関ハ会社ニ属スル諸施設所得及営業並会社ノ事業需要品ニ対シ満洲ニ於テ各種ノ税金ヲ免除スルコト
一一、日満両国軍事当局ハ会社ノ事業ニ関シ軍事上必要ナル命令ヲ為シ又会社ノ施設ニ対シ必要ナル措置ヲ為スヲ得ルコト
本項及前記第四、第五、第六項ニ関シテハ別ニ (イ)秘密交換公文ヲ以テ別紙ノ趣旨ヲ規定シ又 (ロ)会社ニ対スル両国政府ノ秘密命令書ヲ以テ秘密交換公文中必要ノ事項ヲ規定スルコト
一二、本協定ノ規定以外ノ事項ニ付イテハ別ニ定ムルコト
本項ニ関シテハ別ニ交換公文ヲ以テ日本商法及ビ附属法令ノ内容ニ準スルコトヲ規定スルコト
一三、本協定ハ調印後両国政府ノ批准ヲ経へキコト
丙、附則
一、日満両国政府ハ日満両国人ヨリ成ル設立委員ヲ置キ会社設立ニ関スル一切ノ事務ヲ処理セシムルコト
二、設立委員ハ定款ヲ作リ日満両国政府ノ認可ヲ受ケタル後株式ヲ募集スルコト
三、設立委員ハ株式ノ募集ヲ終リタルトキハ株式申込証ヲ両国政府ニ提出シ会社設立ノ認可ヲ稟請スルコト
四、前項ノ認可ヲ受ケタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク各株式ニ付第一回ノ払込ヲ為サシムルコト右払込アリタルトキハ遅滞ナク創立総会ヲ招集スルコト
五、創立総会終了シタルトキハ設立委員ハ其ノ事務ヲ会社ニ引渡スコト
秘密交換公文中ニ規定スヘキ事項
一、本協定所載ノ会社ニ対スル日満両国政府ノ業務監督、命令、及認可ハ両国所定ノ監督官庁協議ノ上之ヲ実行スヘク両者意見ヲ異ニスル場合ニハ日本国監督官庁ノ意見ニ拠ルヘキコト
二、駐満日本国軍部最高機関及満洲国軍部最高機関ハ該会社ノ事業ニ関シ軍事上必要ナル指示ヲナシ且常時必要ノ人員ヲ該会社ニ派遣シ其ノ通信施設及業務実施等ヲ監査セシメ得ルコト
三、駐満日本国軍部最高機関及満洲国軍部最高機関ハ国防及治安維持上必要アル場合ニハ該会社所属ノ一切ノ人員及施設ヲ優先的ニ使用シ且之カ取締及検閲ヲ実施シ尚軍事上必要ナル施設ノ実施ヲ要求シ又ハ自ラ実施スルコトヲ得ルノ権利ヲ保有スルコト
四、前二項ニ依リ満洲国軍部最高機関カ該会社ニ対シ指示、監査及要求等ヲ為サントスルトキハ事前ニ駐満日本国軍部最高機関ノ同意ヲ得ルコトヲ要スルコト
満洲ニ於ケル電信電話事業ニ関スル件
附帯決議
一、会社ノ設立ニ依リ関東庁特別会計ニ歳入欠陥ヲ生スル場合ニハ一般会計ニ於テ右歳入欠陥補填ニ付考慮スルコト
二、関東庁職員ニシテ現ニ電信電話ニ関スル事務ニ従事スル者ハ之ヲ会社ニ於テ採用スルコト
三、前項ノ従事員ニシテ会社ノ設立ニ依リ退職スル者ニ対シテハ退職手当ヲ支給スルコトトシ之カ財源ニ付イテハ別途考慮スルコト
四、満洲国ノ出資財産ヲ担保トスル借款ノ権利確保ニ付適当ノ措置ヲ講スルコト