木材資源利用合理化方策

昭和30年1月21日 閣議決定

収載資料:弘報だより 昭和30年第4号 農林省 1955.1 pp.3-4 当館請求記号:Z610.5-Ko2

1. 方針
わが国における森林の過伐傾向は、甚しく国土の保全を危殆に頻せしめるのみならず、木材資源の枯渇を招来することは明らかであり速かにこれが対策を樹立しなければならない。
既に昭和26年森林法の改正が行われ、これに伴い木材需給対策が閣議決定をみて森林の開発培養と木材消費の合理化等が実施せられ来つたが、更に一層その成果の完きを期する必要があるので木材資源の開発保全を図ると共に重要産業及び民生安定に対する資材を確保するため、その利用合理化に関し、次の措置を強力に推進するものとする。
2. 措置
第一 木材代替資源の使用普及の促進
(1)建築不燃化の促進
イ、耐火建築の普及奨励を推進し国及び地方公共団体は率先垂範すると共にその建築費用の低下を図るため構造部材の規格化と設計の標準化の施策を推進すること。
ロ、防火地域の拡大及び防火建築帯造成の造材につとめると共に用途規模により建築物の木造禁止の範囲を拡大すること。
(2)土建材料等の耐久化の促進
橋梁、その他土木施設土木建築仮設材料、杭、柱等は、鉄鋼、軽金属、コンクリート等の耐久製品につとめて切替えるよう必要な措置を講ずると共に木材防腐を更に推進すること。
(3)包装の合理化の促進
外装用段ボール、金属製魚函等の普及に努める等包装の合理化を推進すること。
(4)家庭燃料合理化の促進
イ、都市ガス普及率の向上に努めるものとし、都市における木質系燃料は石炭ガス及び天然ガスに切替えると共に完全ガス化を可及的速かに推進すること。
ロ、農村における燃料はその熱効率の向上を目途とし優良かまどの指導普及を図ること。
第二 木材の生産、加工の合理化と高度利用の促進
(1)生産加工の合理化の促進
造材の合理化、集材の機械化及び製材、合板等の設備の近代化を図ると共に製炭歩止りの向上を促進すること。
(2)高度利用の促進
イ、廃材及び屑材の利用を促進するため、これを原料とする企業の育成を図ること。
ロ、パルプ原料としての広葉樹の高度利用を図り、併せて化繊及び紙類の輸出振興に資するため、セミ、ケミカル法及び晒クラフト法の普及を推進すること。
ハ、木材糖化の企業化の推進、松脂採取の指導奨励及びパルプ廃液の活用を図ること。
第三 森林資源の開発と保全の促進
(1)林道開設の促進
森林資源の積極的利用開発と木材生長量の増大を図るため、奥地林道及び間伐林道の開設を強力に推進すること。
(2)管理の改善普及の推進
火災病虫害等の森林被害の防止措置を推進する等管理の改善普及につとめること。
なお以上の諸措置を推進するために必要な法制上予算上及び金融上の措置を考慮すると共に更にその実効を期するため経済審議庁に木材資源利用合理化協議会を設ける外関係業界についてもその推進体制の整備を図るものとする。