特需の減少及び駐留軍、国連軍の引揚に伴う対策について

昭和31年2月3日 閣議了解

収載資料:防衛施設庁史 第2巻 各論編 第2部 防衛施設庁史編さん委員会編 防衛施設庁総務部総務課 1983 pp.276-277 当館請求記号:AZ-675-19

駐留軍及び国連軍に使用されている労務者は、昭和30年12月末現在15万6千人であり、軍関係の直傭労務者及び特需関係産業の労務者を加えると約22万人にのぼると推計される。しかるに駐留軍の引揚げ並びに特需の漸減に伴って、毎年大量の人員整理が、地域的、時期的に集中して行われることを余儀なくされ、この傾向は今後も益々強くなるものと予測せられる。
政府は、かかる事情を特に考慮し、一般失業対策にあわせて、左記の諸対策を講ずるものとする。

一 事前措置
1 人員整理又は発註量の削減に当っては、その量及び期間を按配して、計画的且つ漸減的となるよう要望するとともに整理又は削減予定の事前通報が相当期間前に受けられるよう更に強力に要望すること。
2 駐留軍及び国連軍の使用する施設、機器等のうち、軍の引揚又は発註減に伴い、遊休化するもの又は使用度が著しく低くなるものに関しては、次のような対策を行うこと。
(一)提供施設で日本側需要についても利用し得るものについては、共同使用も認めるよう要望すると共に、軍隊の引揚又は特需の発註減に伴い遊休化する提供施設及び区域の返還の促進をはかること。
(二)提供施設及び区域に所在する駐留軍又は国連軍所有の設備、機械器具等の中、日本側にとって必要なものは譲渡するよう要望すること。
(三)駐留軍によって占有されている民有の旧賠償指定機器の早期返還につき要請するとともに、これが使用料の支払につき解決の促進に努めること。
3 特需関係産業にあっては、企業の責任性を一層明確にし特需の滅少に備え予め自主的に経理の万全を期するよう努めさせるととともに、離職予定者に対しては、極力同一企業内又は系列企業への配置転換を行うよう指導し、失業者をなるべく少くするように努めること。
また特需関係産業における補充増員にあっては、特需関係産業離職者の優先的採用及び配置転換による充足をはかるよう指導すること。
4 駐留軍労務者の補充増員にあたっては、既に整理されたものの優先的採用及び配置転換による充足を要請すること。
5 自衛隊要員の補充に際しては、駐留軍特需等関係労務者を採用するように努めることとし、その計画については、事前に関係庁に連絡すること。
6 駐留軍特需等関係労務者の転職を可能ならしめるため、職業指導、職業補導等の実施に努めること。
7 特需の減少、駐留軍、国連軍の引揚等のため大量の離職者を生ずる府県及び地元市町村は、これら労務者の就業斡旋、配置転換、自営援助その他総合的離職者対策の推進をはかるため特別の措置を講ずること。
二 事後措置
1 一の2により譲渡をうけた設備、機械器具及び返還を受けた国有財産については、特に離職者の吸収措置を考慮し、最も効果的な活用をはかり得るように措置すること。
2 防衛庁の車輌等の修理発註にあたっては、特需の調達のために使用されている機械、器具等(米国所有のものを含む)を有効に活用するように配慮すること。
3 特需の減少等に対処して、企業が自主的発意と計画とによって行う事業のうち、適当なものに対しては、融資斡旋等の方法により援助すること。
4 離職者の自立更正を促進するため離職者による企業組合の育成について援助指導を行うとともに、事業資金及び生業資金の融資については、これを潤弁ならしめるよう配慮すること。
5 特需の減少、駐留軍、国連軍の引揚等のための著しく失業者の増加した地方に対しては、地方公共団体の財政状況に応じ、昭和31年度においては、失業対策事業の補助率を引上げる等所要の措置を講ずること。
6 失業者の就労対策としての各種事業を、失業状況に応じて適切に実施し、再就業までの間の労働力保全に努めること。
7 特に重要と認める具体的案件については、特需等対策連絡会議において協議し、これが解決の促進をはかるものとすること。