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公的年金制度における期間通算制度要綱

昭和35年12月16日 閣議決定

収載資料:厚生年金保険50年史 厚生省年金局・社会保険庁運営部編 厚生年金事業振興団 1993 pp.82-84 当館請求記号:AZ-544-E16

一、目的
公的年金制度が多数併立している現状においては、各制度の間を移動する者について年金制度による所得保障が行なわれなくなる弊害があるので、各制度における加入期間を通算して所定の年数に達する者について年金を支給する途をひらくため、各公的年金制度を通じて所要の改正をはかるものとする。

二、通算の対象とする公的年金制度
通算の対象とする公的年金制度は、次のとおりとする。
(イ)国民年金
(ロ)厚生年金保険
(ハ)船員保険
(ニ)国家公務員共済組合
(ホ)市町村職員共済組合その他地方公務員の退職年金制度
(ヘ)私立学校教職員共済組合
(ト)公共企業体職員等共済組合
(チ)農林漁業団体職員共済組合

三、通算(退職)年金
各公的年金制度は、当該制度の老齢(退職)年金を受けるに必要な資格期間を満たしていないが、各制度に加入した期間を通算すれば所定の年数に達する者に対して通算老齢(退職)年金を支給する措置を講ずるものとする。

四、通算老齢(退職)年金の支給要件
(1)受給資格期間
通算老齢(退職)年金の支給要件は、各公的年金制度の被保険者(組合員)期間を合算して二五年以上であるか、または二五年未満であっても国民年金以外の各被用者年金の被保険者(組合員)期間を合算して二〇年以上であることとする。
ただし、
(イ)一の公的年金制度における被保険者(組合員)期間が一年(各共済組合制度においては現行の退職一時金の最低支給年限とすることができる。)以上であるものに限り、合算の対象とする。
(ロ)昭和三六年四月一日前の被保険者(組合員)期間のうち、すでに脱退手当金(退職一時金)を受けた期間は、合算の対象としない。
(注)公的年金制度において被保険者期間を換算して合算する制度があるものについては、これを認めるものとする。
(2)受給資格期間についての経過措置
経過措置として昭和五年三月三一日以前に生まれた者(昭和三六年四月一日において三一歳をこえる者)については、二五年の資格期間はその者の年齢に応じて一〇年以上二四年までに短縮する。この場合の年数は、その者の昭和三六年四月一日以後の被保険者(組合員)期間のみをとるものとする。
なお、これに伴い、その者が右の期間同一の制度に加入していた場合には、当該制度の老齢(退職)年金を受けるに必要な資格期間を満たしていないときであっても、通算老齢(退職)年金に相当する年金を支給する措置を講ずるものとする。
(3)支給開始年齢
通算老齢(退職)年金の支給開始年齢は、国民年金にあつては六五歳、国民年金以外の各被用者年金にあつては六〇歳とする。
(4)現に公的年金制度の被保険者(組合員)である者の取扱い
通算老齢(退職)年金は、受給資格期間を満たした者が六〇歳または六五歳に達した後に現にいずれかの公的年金制度の被保険者(組合員)である場合であつても、当該制度の通算老齢(退職)年金の支給は停止するが、その他の制度の通算老齢(退職)年金は支給するものとする。

五、通算老齢(退職)年金額
通算老齢(退職)年金の額は、合算の対象となつた被保険者(組合員)期間または保険料納付済期間に応じて、次に定めるところにより算定した額とする。
(1)国民年金にあつては、保険料納付済期間一年につき九〇〇円(二〇年をこえる部分については一、二〇〇円)とする。
(2)厚生年金保険にあつては、被保険者期間が二〇年(二四〇月)である場合の老齢年金の基本年金額の二四〇分の一に被保険者期間の月数を乗じた額とする。
(3)その他の制度にあつては、厚生年金保険の給付水準を下廻らない額とする。

六、脱退手当金(退職一時金)との調整
通算老齢(退職)年金の支給に必要な費用は、現行の脱退手当金、(退職一時金)の原資をもつてあてるが、なお財源に余裕のある制度においては、その限度において退職一時金を存置するものとする。

七、一の公的年金制度(恩給、旧令共済組合及び旧八幡製鉄共済組合を含む。)において受給資格期間を満たした者の取扱い
一の公的年金制度において当該制度の老齢(退職)年金を受けることができる者またはその受給資格期間を満たした者が他の公的年金制度の被保険者(組合員)となつた場合においても、通算の対象とし、その者に当該他の制度の通算老齢(退職)年金を支給するものとする。

八、被用者年金の被保険者(組合員)の妻等についての特例
被用者年金の被保険者(組合員)の妻等国民年金の任意加入被保険者についても通算は強制適用とするが、これらの者が国民年金に任意加入しなかつたときでも、通算老齢(退職)年金の受給資格期間の計算については、その任意加入しなかつた期間を任意加入したものとみなして計算することとする。
(注)国民年金の被保険者に任意加入したものとみなされた期間は、通算老齢年金額の計算の基礎とはしない。

九、経過措置
昭和三六年三月三一日以後引き続き一の公的年金制度の被保険者(組合員)であつて次に掲げるものが当該制度を脱退したときは、その者の希望により従前の脱退手当金(退職一時金)を支給することができるものとする。この場合においてその脱退手当金(退職一時金)を受けた期間は、通算老齢(退職)年金の受給資格期間の合算の対象とはしない。
(イ)明治四四年三月三一日以前に生まれた者(昭和三六年四月一日において五〇歳をこえる者)
(ロ)昭和三七年三月三一日以前に脱退した男子((イ)に掲げる者を除く。)
(ハ)昭和四一年三月三一日以前に脱退した女子((イ)に掲げる者を除く。)

十、通算のための機構
通算老齢(退職)年金の支給決定は、各制度において行ない、その支払は別途便宜な方法を考慮するが、さしあたりはそれぞれの制度において行なうものとする。

十一、通算制度の実施に伴なう各制度の調整
(1)通算老齢(退職)年金の支払期日、未支給年金の支給対象、支給順位等は、可能な限り各制度を通じて統一する。
(2)その他各制度は所要の調整を行なう。

十二、実施時期
通算制度は、昭和三六年四月一日から実施する。