国民精神総動員実施要綱
閣議決定年
昭和12年8月24日 閣議決定
収載資料:国家総動員史 資料編 第4 石川準吉著 国家総動員史刊行会 1976.3 pp.452-453 当館請求記号:AZ-668-5
一、趣旨
挙国一致堅忍不抜ノ精神ヲ以テ現下ノ時局ニ対処スルト共ニ今後持続スベキ時艱ヲ克服シテ愈々皇運ヲ扶翼シ奉ル為此ノ際時局ニ関スル宣伝方策及国民教化運動方策ノ実施トシテ官民一体トナリテ一大国民運動ヲ起サントス
二、名称
「国民精神総動員」
三、指導方針
(一)「挙国一致」「尽忠報国」ノ精神ヲ鞏ウシ事態ガ如何ニ展開シ如何ニ長期ニ亘ルモ「堅忍持久」総ユル困難ヲ打開シテ所期ノ目的ヲ貫徹スベキ国民ノ決意ヲ固メシメルコト
(二)右ノ国民ノ決意ハ之ヲ実践ニ依ツテ具現セシムルコト
(三)指導ノ細目ハ思想戦、宣伝戦、経済戦、国力戦ノ見地ヨリ判断シテ随時之ヲ定メ全国民ヲシテ国策ノ遂行ヲ推進セシムルコト
(四)実施ニ当リテハ対象トナルベキ人、時期及地方ノ情況ヲ考慮シ最モ適当ナル実施計画ヲ定ムルコト
四、実施機関
(一)本運動ハ情報委員会、内務省及文部省ヲ計画主務庁トシ各省総掛リニテ之ガ実施ニ当ルコト
(二)本運動ノ趣旨達成ヲ図ル為中央ニ民間各方面ノ有力ナル団体ヲ網羅シタル外廓団体ノ結成ヲ図ルコト
(三)道府県ニ於テハ地方長官ヲ中心トシ官民合同ノ地方実行委員会ヲ組織スルコト
(四)市町村二於テハ市町村長中心トナリ各種団体等ヲ総合的ニ総動員シ更二部落町内又ハ職場ヲ単位トシテ其ノ実行ニ当ラシムルコト
五、実施方法
(一)内閣及各省ハ夫々其ノ所管ノ事務及施設ニ関連シテ実行スルコト
(二)広ク内閣及各省関係団体ヲ動員シテ夫々其ノ事業ニ関連シテ適当ナル協力ヲ為サシムルコト
(三)道府県ニ於テハ地方実行委員会ト協力シテ具体的実施計画ヲ樹立実施スルコト
(四)市町村ニ於テハ総合的ニ且部落又ハ町内毎ニ実施計画ヲ樹立シテ其ノ実行ニ努メ各家庭ニ至ル迄滲透セシムルコト
(五)諸会社、銀行、工場、商店等ノ職場ニ就キテハ其ノ責任者ニ於テ実施計画ヲ樹立シ且実行スルコト
(六)各種言語機関ニ対シテハ本運動ノ趣旨ヲ懇談シテ其ノ積極的協力ヲ求ムルコト
(七)ラヂオノ利用ヲ図ルコト
(八)文芸、音楽、演芸、映画等関係者ノ協力ヲ求ムルコト
六、実施上ノ注意
(一)本運動ハ実践ヲ旨トシテ国民生活ノ現実ニ滲透セシムルコト
(二)従来都市ニ於ケル知識階級ニ対シテハ徹底ヲ欠ク憾アリシヲ此ノ点ニ留意スルコト
(三)社会ノ指導的地位ニ在ル者二対シ其ノ率先躬行ヲ求ムルコト