九州東海岸石炭輸送設備計画要綱

昭和13年10月25日 閣議決定

収載資料:国立公文書館所蔵公文別録 80 ゆまに書房 1997.5 112-118 当館請求記号:YC-98

我国軍需産業運営ノ根幹ヲ為ス八幡製鉄所ヲ始メ沿岸諸工場ニ依ル洞海湾ノ利用ヲシテ最モ合理的且能率的ナラシムルト共ニ関門海峡ノ交通ヲ適当ニ整理シテ其ノ安全敏速ヲ確保シ併セテ北九州重工業地帯ノ過度ノ密集並ニ石炭ノ陸上輸送路ノ一方的ナルヲ防止シテ適宜之カ分散ヲ計策スルハ現下ノ国情ニ鑑ミ産業上国防上喫緊ノ要務タリ。加之生産力拡充四箇年計画並ニ石炭需給五箇年計画ノ遂行ニ伴フ内外地石炭ノ増産計画ノ結果飛躍的ニ増産セラルル所ノ我国重工業発展ノ基礎資源タルヘキ筑豊炭ノ輸送並ニ其ノ配給ヲ円滑ナラシムルノ施設ヲ護スルコトハ是又現下ノ情勢ニ徴シ極メテ緊要ノコトニ属ス。依テ苅田ニ相当設備ヲ有スル一港ヲ新設スルト共ニ之ニ対応スル鉄道及通信ノ設備ヲ完備シ以テ叙上各種ノ要望ヲ充足セシメムトス。其ノ要綱左ノ如シ
一 港湾設備
(イ) 荷役能力九百万瓲中石炭八百万瓲雑貨一百万瓲トス
(ロ) 本港第一期工事ハ差当リ小型船ニ依ル石炭年三百万瓲雑貨年二十万瓲ニ対スル施設ヲ昭和十四年度乃至同十六年度迄ニ完成□ス
爾余ノ工事ハ情勢ノ推移ヲ見テ可及的速カニ完成ス
(ハ) 本港ハ将来石炭積出港ト併セテ工業港トシテノ利用ヲモ考慮シテ計画ス
二 鉄道輸送設備
上記一ノ港湾設備ニ対応シ新苅田港駅ノ設置並ニ必要ナル諸般ノ輸送設備ヲ整備拡充ス
三 以上ノ荷役能力並ニ工業ノ発展ニ適応シテ通信設備ヲ整備シ以テ商取引上ノ円滑ヲ図ル
四 本計画ノ実施ニ関シテハ財政上ノ都合等ヲ考慮シ別途ニ之ヲ決定スルモノトス