日本語の初出・語源、ものごとの始まりを調べる

日本語の初出・語源やものごとの始まりを調べる際に役に立つ資料やデータベースについて紹介します。
ただし何をもって「初出」「語源」「始まり」とするかは諸説あることがあります。ある文献に書かれている一つの説だけが必ずしも正しいとは限らない点に留意し、複数の文献・説を調べる必要があります。

書誌事項末尾の【 】内は当館請求記号です。

1.言葉の初出・語源を調べる

ここでは言葉の初出・語源を調べる際の代表的なツールについて紹介します。言葉の初出や言葉の語源は、ものごとの始まりを調べるツールからも調べることができる場合があるため、「2.ものごとの始まりを調べる」で紹介したツールも参照してください。

1-1.図書から調べる

全般

言葉の初出・語源を調べる際の代表的な辞典類について紹介します。

  • 『日本国語大辞典 第2版』 全13巻・別巻(小学館 2000-2002 【KF3-G103・KF3-H1】
    約500,000項目、約1,000,000用例を収録する最大規模の国語辞典です。各語の意味ごとの用例とその出典を記しています。凡例の「[1]採用する出典・用例」の項目に、用例を採用する文献の基準として「(イ)その語、または語釈を分けた場合は、その意味・用法について、もっとも古いと思われるもの」とあり、言葉の初出を調べる際の参考になります。ただし記載されている用例と出典が必ずしも初出とは限らない点に注意が必要です。また各語の「語源説」の項目では、その言葉の語源とされている説を出典とともに記載しています。
    当館契約データベースのジャパンナレッジLib に収録されており、ジャパンナレッジLib版では見出しや本文の全文検索ができるほか、詳細検索から検索範囲を「語源説」に絞って全文検索をすることも可能です。

  • 前田富祺 監修『日本語源大辞典』(小学館 2005 【KF92-H18】)
    上記『日本国語大辞典』の「語源説」を整理し直し、さらに新しい文献からの説を追加した語源辞典です。約6,000語を収録しています。また巻末に「語源説 出典の解説」があり、語源説の出典として使用された約800点の文献についての解題が付されています。

  • 山田俊雄 [ほか]編修『新潮国語辞典:現代語・古語 第2版』 (新潮社 1995 【KF3-G6】)
    現代語と古語を合わせて約140,000語収録した辞典です。言葉の用例と出典が記載されています。語源の説明は「現在の言語学・国語学の領域において認められる限り、できるだけ多くの語について示し」、用例も「最古の出典から示すことに努め」たとされており、言葉の初出を調べる際の参考になります。

  • 増井金典 著『日本語源広辞典 増補版』(ミネルヴァ書房 2012 【KF92-J29】)
    日常生活で一般的に用いられている日本語を中心に外来語、慣用句、漢語、国内外の地名や姓氏のほか、語源の特定が難しいとされる一音節語や二音節語などを収録した語源辞典です。約40,000語を収録しています。各語に典拠文献の記載はなく、巻頭に参考文献が記載されています。

  • 杉本つとむ 著『語源海』(東京書籍 2005 【KF92-H19】)
    日常生活で一般的に用いられている日本語の語源を用例とともに紹介しています。各語につき、語の発生時代や語釈、対応する中国語および英語、語源解説、用例文などを記載しています。収録見出し語は約1,700語、総解説語は約6,000語です。

翻訳語

  • 惣郷正明, 飛田良文 編『明治のことば辞典』 (東京堂出版 1986 【KF7-77】)
    西洋言語の翻訳語など、主に明治時代に新しく誕生した語、意味の変化した語など1,341語を収録しています。各語につき、明治期の国語辞典、英和辞典などにおける意味が記されています。
  • 佐藤亨 著『現代に生きる幕末・明治初期漢語辞典』 (明治書院 2007 【KF3-H74】)
    西洋言語の翻訳語など、主に幕末・明治初期に新たに用いられるようになった漢語4,482語を収録しています。各語につき、江戸・明治期の文献からの引用文、意味が付され、語によっては使用が定着するまでの経緯が説明されています。各語の引用文献は古い順に排列されていますが、必ずしも初出とは限らない点に注意が必要です。
  • 石塚正英, 柴田隆行 監修『哲学・思想翻訳語事典 増補版』(論創社 2013 【H2-L1】)
    幕末から現代までの哲学、思想、科学、文芸、その他諸分野の翻訳語約200語を収録しています。主に近代以降の翻訳語の初出・語源を調べる際に参考になります。
    各語には「原語の意味」と「翻訳語の意味」の項目が設けられ、原語と翻訳語それぞれの用例と意味の歴史的変遷を調べることができ、判明している場合はその語の初出の文献を記載しています。
  • 杉本つとむ 著『江戸時代翻訳語の世界 : 近代化を推進した訳語を検証する』(八坂書房 2015 【KF91-L96】)
    江戸時代に誕生したオランダ語からの翻訳語を中心に111語を収録しています。科学用語、医学用語を多く取り上げ、当時の医学書などの用例を紹介しています。

現代用語

食べ物関係(日本)

  • 川上行蔵 著, 小出昌洋 編『日本料理事物起源 (完本日本料理事物起源)』(岩波書店 2006 【GD51-H100】)
    江戸時代の日本料理で用いられていた食材、香辛料、加工品、また料理法や調理道具について、それらの起源を、文献をもとに紹介をしています。それぞれの項目の最後に参考文献が挙がっているため、より詳しい調査をする際の手掛かりになります。
  • 岡田哲 編『たべもの起源事典』(東京堂出版 2003 【GB8-H3】)
    日本の食文化に関する1,400語を収録し、それぞれの起源について紹介しています。巻末に参考文献一覧があります。
  • 川上行藏, 西村元三朗 監修『日本料理由来事典』(同朋舎出版 1990 【E2-G257】)
    上巻及び中巻では、日本料理に関する食材や料理名や調理用語について、8分野に分類し、それぞれの語の説明をし、語が登場する文献を紹介しています。下巻は食べ物に関する民話やことわざ、酒銘の由来等を紹介しています。巻末に参考文献一覧があります。
  • 中山圭子 著『事典和菓子の世界 増補改訂版』(岩波書店 2018 【E2-L264】)
    和菓子の名称、モチーフ、素材についての事典で、このうち名称の部では、各和菓子の名前が出てくる文献についての紹介があります。巻末に主な参考文献の一覧があります。

食べ物関係(世界)

  • 岡田哲 編『世界たべもの起源事典』(東京堂出版 2005 【G2-H19】)
    日本についての『たべもの起源辞典』【GB8-H3】の姉妹編で、日本人の食文化にもかかわりの深い世界各国の料理の誕生の逸話や、料理に使用される食材の普及の経緯について紹介しています。1,240語収録しています。巻末に参考文献一覧があります。
  • ジョン・エイトウ 著『食のことば由来事典 : 食材・料理・飲み物』(柊風舎 2021 【G2-M4】)
    世界中の料理や食材に関する言葉約2,500語を収録し、それぞれの語の由来や初出と思われる文献などを紹介しています。
  • 内林政夫 著『西洋たべもの語源辞典』(東京堂出版 2004 【GG8-H6】)
    日本でも知られるようになった西洋の料理や食材に関する語314語を収録し、それぞれの語の由来を紹介しています。参考文献はついていません。

1-2.データベースから調べる

言葉の初出を調べる際に参考になる代表的なデータベースを紹介します。

1-2-1.全文検索データベース

言葉の初出を調べる際に参考になる全文検索データベースを紹介します。リサーチ・ナビ「全文検索を活用するには」でも当館の全文検索データベースの利用方法を案内しています。本項目で紹介している「国立国会図書館デジタルコレクション」「次世代デジタルライブラリー」に加え、本項目では紹介していない「NDL Ngram Viewer」「WARP」についても紹介しているので併せてご参照ください。

国立国会図書館デジタルコレクション

国立国会図書館で収集・保存しているデジタル資料を検索・閲覧できるサービスです。テキスト化を行っている資料については、全文検索をすることが可能です。
ただし、検索対象は、あくまでも当館所蔵資料のうち、デジタル化およびテキスト化がされているものだけである点に注意が必要です。また「国立国会図書館内限定」という表示のある資料については、閲覧は国立国会図書館館内(東京本館・関西館・国際子ども図書館)の端末からしかできません(検索は館外からもできます。入力したキーワードの記載がある部分だけ、スニペット表示で表示されます)。

以下の手順で資料を全文検索し、刊行年の古い順に並べ替えることができます。
「銀ブラ」という言葉が使われているできるだけ古い文献を探す場合を例に説明します。

①「詳細検索」をクリックします。

国立国会図書館デジタルコレクションの操作画面です。まず国立国会図書館デジタルコレクショントップページの検索ボックス右下になる「詳細検索」のボタンをクリックします

②「全文検索」にチェックを入れた上で、キーワード検索をします。

国立国会図書館デジタルコレクションの操作画面です。「オプション」という項目にある「全文検索」のチェックボックスにチェックを入れて、キーワード検索をします

③検索結果を「出版日:古い順」で表示させることで、当館所蔵のデジタル化済み資料の中で、該当のキーワードが出てくる資料を古い順に並びかえることができます。

国立国会図書館デジタルコレクションの操作画面です。検索結果の右上端に表示される「適合度順」というタブを「出版日:古い順」に変更することで、資料を古い順に並び変えることができます。

次世代デジタルライブラリー

国立国会図書館デジタルコレクションで提供している資料の中から、著作権の保護期間が満了した図書及び古典籍資料全部(約35万点)が検索可能です。

以下の手順で資料を全文検索し、刊行年の古い順に並べ替えることができます。
「銀ブラ」という言葉が使われているできるだけ古い文献を探す場合を例に説明します。

①検索ボックスにキーワードを入力します。

次世代デジタルライブラリーの操作画面です。まず最初に画面中央の検索ボックスにキーワードを入力します。

②ソートから「刊行年順(昇順)」を選択することで、該当のキーワードが出てくる資料を古い順に並びかえることができます。

次世代デジタルライブラリーの操作画面です。検索結果の右上端に表示されるソートから「刊行年順(昇順)」を選択することで、検索した資料を古い順に並べ替えることができます。

Google BooksLeave the NDL website.

書籍の全文検索ができるウェブサービスです。著作権保護期間が満了している書籍については全文を表示することができます。著作権で保護されている資料については、出版社および著者の許可が得られた場合のみ一部のページを表示(スニペット表示)し、閲覧することができます。
探したいキーワードが掲載されている資料を辿っていくなど、初出を調べる際のツールとして使用することができます。

ジャパンナレッジLib ※当館契約データベース(館内限定)

70以上の辞典類、叢書、雑誌などを検索することができる国内最大級の辞書・事典のデータベースです。「1-1.図書から調べる」で紹介した『日本国語大辞典』のほかに、『新編 日本古典文学全集』や『群書類従』、『古事類苑』などを収録しています。

1-2-2.雑誌記事索引データベース

雑誌記事索引から雑誌記事を探すことで、探したいキーワードが世間で一般的に使われ始めた時期を推測することができ、言葉の初出や語源を調べる手がかりになる場合があります。
ここでは初出・語源を調べる際に参考になる当館契約の主な雑誌記事データベースを紹介します。
雑誌記事についてのより詳しい調べ方についてはリサーチ・ナビ「雑誌記事索引」をご参照ください。

  • 皓星社 雑誌記事索引集成データベース(ざっさくプラス) ※当館契約データベース(館内限定)
    明治から1948年までの日本および旧植民地で発行された雑誌記事を採録している『明治・大正・昭和前期雑誌記事索引集成』全124冊(皓星社 1994-1999 【UP54-E16】)の記事を検索できます。
    またCiNii ResearchLeave the NDL website. 全国短期大学紀要論文PLUSLeave the NDL website. に含まれるデータも検索できます。

  • 大宅壮一文庫 雑誌記事索引(Web OYA-bunko) ※当館契約データベース(館内限定)
    大宅壮一文庫が所蔵する明治から現代までの週刊誌、総合月刊誌、女性誌、経済誌、専門誌などの記事を検索することができます。雑誌名、雑誌ジャンル、人物や人物の職業、記事で扱っていることがらの分類などから記事を絞り込むことができます。

1-2-3.新聞記事索引データベース

新聞記事を確認することで、探したいキーワードが一般に使われ始めた時期をうかがうことができ、言葉の初出や語源を調べる手がかりになる場合があります。
本項目では初出・語源を調べる際に参考になる当館契約の主な新聞記事データベースを紹介します。
個々のデータベースについてのより詳しい説明は「新聞記事データベースの使い方」をご参照ください。また全国紙の新聞記事をより詳しく調べたい場合は「全国紙等の記事索引・検索サービス」、地方紙をより詳しく調べたい場合は「地方紙の記事索引・検索サービス」もご参照ください。

  • ヨミダス歴史館 ※当館契約データベース(館内限定)
    読売新聞のデータベースです。1874年11月の創刊から現在までの東京本社発行の全国版の記事を収録しています。1986年9月以降の記事は全文検索が可能です。
  • 朝日新聞クロスサーチ ※当館契約データベース(館内限定)
    朝日新聞のデータベースです。1879年1月の創刊から現在までの大阪・東京本社版の記事のほか、号外、別刷、地域面なども部分的に収録しています。1984年8月以降の記事は全文検索が可能です。
  • 毎索 ※当館契約データベース(館内限定)
    毎日新聞のデータベースです。1872年(明治5)の創刊号から1999年(平成11)までの東京本社版の紙面を収録しています。また1987年から現在までの各本社版や地方面の記事検索も可能です。
  • 産経新聞データベース ※当館契約データベース(館内限定)
    産経新聞のデータベースです。1992年以降の東京本社発行の記事データと1998年以降の大阪本社発行の記事データを収録しています。

2.ものごとの始まりを調べる

ものごとの始まりを調べることに焦点を当てた代表的なツールについて紹介します。
ここでは「ものごとの始まり」とは、日本古来の習俗や、開国とともに外国からもたらされたスポーツやファッション、技術開発によって生み出された新しい製品などの起源や由来のことを指します。
ものごとの始まりは言葉の初出や言葉の語源とも関わりがあるため、「1.言葉の初出・語源を調べる」で紹介したツールも参照してください。

2-1.当館所蔵資料の調べ方

ものごとの始まりについて書かれた当館所蔵の資料の調べ方について紹介します。
国立国会図書館サーチの詳細検索から件名に「事物起原」あるいは「事物起源」と入力して検索することで、ものごとの始まりについて書かれた当館所蔵資料を調べることができます。

2-2.代表的な事典類

ものごとの始まりについて書かれた代表的な事典類や選集を紹介します。