江戸時代の幕臣を調べる

旗本や御家人といった徳川幕府直属の家臣、いわゆる幕臣を調べるツールを紹介します。なお、幕臣のすべて(特に御家人)を網羅的に調べられる資料はありません。
書誌事項末尾の【 】内は当館請求記号です。

1. 幕臣の概要がわかる資料

  • 大石学 編『江戸幕府大事典』(吉川弘文館 2009 【GB8-J24】)
    「第五部 基本用語編」で、「旗本」を「江戸時代、幕府における軍事上(番方)・行政上(役方)の役を果たす将軍の直属家臣団(直参)のうち、知行高一万石以下で、将軍に拝謁できる御目見以上の家格をもつ者」(p.965)、「御家人」を「一万石未満の徳川家家臣のうち、将軍への御目見を許されない下位の身分のこと」(p.882)と定義したうえ、解説しています。
  • 小川恭一 編著『江戸幕府旗本人名事典. 別巻』(原書房 1990 【GB397-E2】)
    旗本を中心とした解説ですが、御家人にも言及しています。幕臣を調べられる主な資料、関連機関なども載っています。

2. 系譜・家系から調べる

  • 太田資宗 [ほか編] ; 斎木一馬 [ほか]校訂『寛永諸家系図伝』第1-15、索引1-2(続群書類従完成会 1980-1997 【GB43-146】)
    江戸幕府の第3代将軍徳川家光の命により編纂された大名、旗本諸家1,400余家の系譜集。寛永20(1643)年完成。第15巻の巻末には、医者や茶道家の系譜が加えられています。短期間で編纂されたため、誤植なども見られます。
  • 堀田正敦 等編『寛政重修諸家譜』第1-22、索引第1-4(新訂 続群書類従完成会 1964-1967 【288.21-Ka479-H】)
    村山貴久男 編『寛政重修諸家譜. 別巻1 (葬地・寺社名索引)』(新訂 八木書店 2010 【GB43-J175】)
    村山貴久男 編『寛政重修諸家譜. 別巻2 (所領・居所名索引)』(新訂 八木書店 2012 【GB43-J308】)
    江戸幕府が編纂した近世最大の系譜集であり、旗本を調べるための基本的な資料の1つです。寛政10(1798)年までを収録しており、文化9(1812)年に完成。大名や旗本以上の幕臣などの系図を掲載し、系図中の個々人には略伝が注記されています。索引は姓氏(家名)、諱、称呼からなります。
  • [田畑吉正 著] ; 斎木一馬, 岩沢愿彦 校訂『断家譜』第1-3(続群書類従完成会 1995 【GB43-G24】)
    慶長年間(1596年~1615年)から文化年間(1804年~1818年)までの大名、旗本などのうち、絶家となった880余家をイロハ順に掲載しています。文化6(1809)年完成。旗本の場合は、御目見以上を記載しています。絶家に疎漏の多い『寛政重修諸家譜』の内容を補う資料です。

3. 人名から調べる

  • 竹内誠, 深井雅海, 太田尚宏, 白根孝胤 編『徳川幕臣人名辞典』(東京堂出版 2010 【GB12-J25】)
    徳川幕府の主な幕臣2,110人を五十音順に排列し、各幕臣の経歴、事跡を収録。与力などの御家人の経歴や、詩人、俳人などの文化人として活躍した幕臣、幕府お抱えの医師、学者なども掲載しています。各人物の項目末尾に、典拠(『寛政重修諸家譜』や参考文献も載っています。
  • 堀田正敦 [ほか著], 林亮勝, 坂本正仁 校訂『干城録』第1-15(人間舎 1997-2003)
    慶安4(1651)年までの一万石以下の幕臣約2,700名の伝記です。『寛政重修諸家譜』よりも詳しい部分が多く、出典が明示されています。日本人名情報索引(人文分野)で収録人物を検索できるほか、原本を所蔵し、本文画像を公開している国立公文書館のデジタルアーカイブでも人名から該当箇所を検索できる場合があります。(7. 幕臣関係の資料を閲覧できるウェブサイトも参照)
  • 熊井保 編『江戸幕臣人名事典』(改訂新版 新人物往来社 1997 【GB397-G4】)
    国立公文書館所蔵の多門櫓文書のうち、判読可能な「明細短冊」と「由緒書」を翻刻、編集したもので、『寛政重修諸家譜』以降の旗本(御家人も含む)の人事記録に相当し ます。
  • 小川恭一 編著『江戸幕府旗本人名事典』第1-4巻、別巻(原書房 1989-1990 【GB397-E2】)
    第1~3巻では、『寛政呈書万石以下御目見以上国字分名集』(『寛政重修諸家譜』の編纂部署が寛政11(1799)年に作成)、『幕士録』(文政10(1827)年頃)、『旗本姓名高寄』(天保9(1838)年頃)収載の旗本の禄高、知行地、本国などを旗本の姓名の五十音順に並べて掲載しています。第4巻では『懐中道しるべ』(文化元(1804)年稿)、『昇栄武鑑』(慶応2(1866)年)など6つの資料に収載された旗本の禄高、役職、屋敷などを旗本の姓の五十音順に並べて掲載しています。別巻には総索引などが収録されています。
  • 小川恭一 編著『寛政譜以降旗本家百科事典』第1-6巻(東洋書林 1997-1998 【GB397-G5】)
    『諸向地面取調書』(幕臣の拝領屋敷、抱屋敷の記録(安政2(1855)年~安政3(1856)年頃)、『江戸幕臣人名事典』、『柳営補任』などの資料に掲載された各旗本の先祖、禄高、屋敷地、役職などを姓名の五十音順に並べて収載しています。第6巻に総索引、代官一覧表、御三卿(清水、田安、一橋)重職者表などが収録されています。

4. 役職から調べる

全般

  • 根岸衛奮 [編]『柳営補任』1-6、索引 上・下(覆刻 東京大学出版会 1997 大日本近世史料/東京大学史料編纂所 編纂 【GB397-G7】)
    幕臣の根岸衛奮が編纂。江戸初期から幕末までの幕府諸役人(旗本)の任免、転任が記されています。記載されている役職数の多さ、記事内容の信頼性など高い評価を得ている史料ですが、編纂者自身の誤写、誤字などもあり、扱いには慎重を要します。
  • 深井雅海, 藤實久美子 編『江戸幕府役職武鑑編年集成』第1-36巻(東洋書林 1996-1999 【GB397-G2】)
    武鑑とは、江戸時代に民間書肆より刊行された、大名および幕府役人の名鑑のことです。本書は、正保元(1644)年~明治元(1868)年に刊行された武鑑から、「役人付」(役人の役職と人名を列挙)の部分を影印で編集・復刻したものです。索引はありません。単年度で幕府諸役人を一覧でき、『柳営補任』などに収録されていない御家人たちの役職を確認することができます。一方で誤記や欠落など、信頼性を欠く部分も見られます。
  • 渡辺一郎 編『徳川幕府大名旗本役職武鑑』第1-4(柏書房 1967 【281.035-W59t】)
    江戸中期から幕末にかけての略武鑑である「袖玉武鑑」「袖珍有司武鑑」を中心に、「会計便覧」(勘定奉行支配下の諸役人名鑑)、「県令集覧」(郡代、代官、手附、手代など天領支配諸役人の名鑑)、「国字分名集」(旗本の武鑑)などの影印が収録されています。
  • 鈴木寿 校訂『御家人分限帳』(近藤出版社 1984 日本史料選書 ; 23 【GB397-5】)
    国立公文書館が所蔵する原本(写本 17冊)を全文翻刻し、巻末に「人名索引」、「役職名索引」を付けたものです。江戸中期の幕臣22,891人が、役職別に収載されています。本書に収録された「御家人」とは広い意味での御家人で、譜代大名の一部や旗本などを含む、徳川家直属の幕府譜代の役人の総称です。代官の属僚などは含まれません。
  • 橋本博 編『大武鑑』3冊(改訂増補 名著刊行会 1965 【281.035-H272d-(s)】)
    鎌倉武鑑から明治2(1869)年の官員録まで、主な武鑑の翻刻が収録されています。江戸中期以降の江戸幕府の諸役人の一部が確認できます。下巻の巻末にある索引は、主な人名のみ掲載されており、本書収録の武鑑に記載されたすべての幕臣は検索できません。
  • 『文化武鑑』1-7、索引 上・下(役職編)(柏書房 1981-1985 編年江戸武鑑 【GB397-2】)
    文化元(1804)年~文化14(1817)年に刊行された須原屋蔵版の『新版改正武鑑』を逐年ごとに翻刻し、「大名編」と「役職編」に分けて編集したものです。索引下巻(役職編)に、収録された幕臣の五十音順索引などが収録されています。
  • 『文政武鑑』1-5(柏書房 1982-1992 編年江戸武鑑 【GB397-3】)
    『文化武鑑』の続編です。「大名編」は文政元(1818)年~文政12(1829)年を収録していますが、「役職編」は文政元(1818)年~文政8(1825)年しか収録していません。索引もありません。

勘定所関係

  • 村上直, 馬場憲一 編『江戸幕府勘定所史料 : 会計便覧』(吉川弘文館 1986 【GB391-176】)
    天保10(1839)年~安政6(1859)年に刊行された『会計便覧』(勘定奉行支配下の諸役人の名簿)が収録されています。巻末に勘定奉行補任者、勘定吟味役補任者、勘定組頭補任者の各略歴や、五十音順の人名索引、役職名索引などが付いています。
  • 村上直, 和泉清司, 佐藤孝之, 西沢淳男 編『徳川幕府全代官人名辞典』(東京堂出版 2015 【GB12-L25】)
    慶長8(1603)年から慶応3(1867)年までに郡代や代官、遠国奉行に就いた1,360人の略伝を50音順に掲載しています。
  • 西沢淳男 編『江戸幕府代官履歴辞典』(岩田書院 2001 【GB364-G57】)
    江戸初期から慶応3(1867)年12月9日王政復古の大号令までに代官(幕府直轄領の民政を担当)を勤めた1,183人が五十音順に収録されています。各代官の前職、赴任国名 陣屋名、赴任年、離任年などがわかります。
  • 村上直 校訂『江戸幕府郡代代官史料集』(近藤出版社 1981 【GB391-115】)
    寛保元(1741)年~天保9(1838)年の郡代や代官の名簿である『県令譜』を翻刻・収録しています。
  • 村上直, 荒川秀俊 編『江戸幕府代官史料 : 県令集覧』(吉川弘文館 1975 【AZ-145-28】)
    天保10(1839)年~慶応2(1866)年に刊行された『県令集覧』(郡代、代官およびその属僚たちの名簿)が収録されています。巻末に五十音順の人名索引が付いています。

5. 居住地から調べる

  • 幕府普請奉行 編『江戸城下変遷絵図集 : 御府内沿革図書』第1-20巻、別巻1-2(原書房 1985-1988 【GB16-6】
    現代の住宅地図のようにして、幕府が編集した『御府内沿革図書』に収録された幕臣の氏名を調べることができます。書名に「府内」とありますが、本所、深川は収録されていません。府内を168区画に細分し、延宝年間(1673年~1681年)から文久年間(1861年~1864年)までに描き改められた絵図が収載されています。第20巻に人名索引、地名索引が付いています。別巻「江戸城下武家屋敷名鑑」は、「人名篇」(人名から住んでいた地域名、年代を検 索可)、「地域篇」(地域名から住んでいた年代、人名を検索可)、「年代篇」(年代から人名を検索可)からなります。
  • 斎藤直成 編『江戸切絵図集成』第1-6巻(中央公論社 1981-1984 【YP6-54】)
    吉文字屋版、近江屋版、尾張屋版、平野屋版など、版元が異なる各種の切絵図が収録されています。第6巻の巻末に付いている人名索引などから、幕臣たちの屋敷の場所を 検索できます。
  • 江戸マップβ版Leave the NDL website. (人文学オープンデータ共同利用センター)
    当館所蔵『江戸切絵図』(尾張屋板・電子展示会「錦絵でたのしむ江戸の名所」として公開)に現れる地名・人名を検索し、該当箇所を表示することができます。
  • 江戸東京博物館友の会 翻刻『町方書上』1-9(江戸東京博物館友の会 2013-2014 【GC67-L49ほか】)
    町方書上とは、文政8(1825)年~文政11(1828)年に、江戸地誌編纂のため幕府が各町の名主に命じて、町の由来や現況などを報告させたもので当館の所蔵する旧幕府引継書の1つです。外神田、浅草、深川など地域ごとに収載され、各冊の巻末に「拝領地・拝領町屋敷索引」、「人名索引」、「役名索引」などが付いており、一部の幕臣について氏名、役名、拝領屋敷などを確認できます。なお、現在の中央区(日本橋周辺)は編纂の対象外だったようで、収載されていません。

6. 幕府崩壊後、徳川家とともに静岡へ移住した幕臣を調べる

  • 前田匡一郎 著『駿遠へ移住した徳川家臣団』第[1]-4編(前田匡一郎 [1991]-2000 【GB13-E52】)
    前田匡一郎 著『駿遠へ移住した徳川家臣団』第5編(羽衣出版 2007 【GB13-H167】)
    幕府崩壊後、幕臣約23,000人の内、約13,000人が徳川家に従って静岡へ移住しましたが、本書にはのべ約4,000人の移住した幕臣の履歴が収録されています。各編に姓名の五十音順に排列されていますが、総索引はありません。第4編の巻末には「屋敷地所有者(旧幕臣)一覧 明治6年8月現在」(町名ごとに旧幕臣が住んでいた屋敷の番地、地籍、旧幕臣の事歴などを記載)が付いています。また、第4編の別冊として、各町の「武家屋敷地一覧図」(7枚)が付いています。

7. 幕臣関係の資料を閲覧できるウェブサイト

  • 国立国会図書館デジタルコレクション
    当館が所蔵する江戸幕府の諸役所の膨大な記録類である「旧幕府引継書」の大部分を検索・閲覧できます。(詳細検索画面で「古典籍資料(貴重書等)」を選択しキーワード欄に「旧幕府引継書」と入力)旧幕府引継書には武鑑、県令集覧などをはじめとする、幕臣たちの氏名、役名などの記された史料が多く含まれています。ただし、幕臣名を網羅的、合理的に検索することはできません。
  • 国立公文書館デジタルアーカイブLeave the NDL website. (国立公文書館)
    江戸城多聞櫓内に残された幕府の公文書類に、旗本や御家人の実態がうかがえる資料が多く残されています。上記『干城録』のほか、幕臣の履歴書にあたる「明細短冊」や「由緒書」を、幕臣の名前から検索できます。

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