大潮は潮干狩日和
歳時記
春の大潮は一年の中で潮の干満が特に大きくなるため、潮干狩りに最適です。江戸の人々は春の大潮の頃に、芝浦・高輪・品川沖、深川洲崎等に潮干狩りにでかけました。大潮の時期は、朝のうちに小舟を出し沖に進んで潮が引くのを待ちます。昼頃に潮が引き、遠浅の干潟ができて船底が砂地についたら舟を下ります。いよいよ潮干狩りの始まり、魚や貝類を収穫します。
では、その様子をご紹介しましょう。
ここでは洲崎の潮干狩りの様子を中心にご紹介します。洲崎は現在の東陽町あたりですが、「深川洲崎十万坪」と呼ばれた景勝地でもありました。
『東都三十六景 洲さき汐干狩』には、小舟が干潟のそばに描かれています。舟に乗ってきたのでしょうか、女性が近くで貝を採って、かごにたくさん入れています。
潮干狩にはハプニングもあります。干潟で蛸が暴れて大騒ぎ。これもまた楽しい思い出になります。
潮干狩をしている女性たちの中には、本格的に帯を外して腰帯だけになり、袖は紐でたくしあげ、手ぬぐいをかぶって日除けをしている人もいます。子連れで潮干狩に来ている人もいます。
明治時代になってからもしばらくは、同じように潮干狩りをする風景が見られました。
楽しい潮干狩は潮が満ちてきたら終了です。小舟に再び乗って、採った戦利品をもって帰りました。『潮干のつと』には潮干狩のお土産が描かれています。いろいろな貝類が採れたようです。
現在は品川沖、洲崎も埋め立てによって干潟はなくなり、潮干狩りをすることはできなくなりました。春の風物詩であった潮干狩りは、東京では行える場所が限られてしまいましたが、店頭に並ぶ蛤、浅利、ツブ貝、蛸、烏賊などの魚介類が春の訪れを知らせてくれます。
関連電子展示会
江戸時代の潮干狩りの様子については、本の万華鏡「天下タイ平~魚と人の江戸時代~」でも紹介しています。こちらもぜひご覧ください。
参考文献
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歳時記