デジタルアーカイブ福井(福井県立図書館ほか)

2020年3月から新しく連携を開始させていただきました。
福井県文書館でデジタルアーカイブ福井を担当されている、長野様にお話を伺いました。
(2020年7月7日インタビュー実施)

基本情報(2020年9月時点)
アーカイブ概要福井県立図書館・福井県文書館・福井県ふるさと文学館が管理する資料を中心とした協同検索データベース。古典籍・新聞・古文書・歴史的公文書・写真などを画像とともに公開(一部についてはCC-BY4.0準拠で公開)。ふくいゆかりの人物や文学者に関する資料も調べることが可能。
https://www.library-archives.pref.fukui.lg.jp/archive/外部サイト
メタデータ件数約50万件
連携方式OAI-PMHによるAPI連携
連携調整期間
  • 連携打診:2017年5月頃
  • リリース:2020年3月

NDL:デジタルアーカイブ福井では、県立図書館だけでなく、県文書館や県ふるさと文学館などの様々な資料を検索することができます。はじめに、デジタルアーカイブ福井の構築の経緯を教えてください。

福井:まずは制度上の経緯からお話しします。平成15年に福井県文書館が開館しましたが、それから11年間は、図書館と文書館は各々別のシステムを用いて運用していました。
一方、福井県では県の情報システム最適化計画を策定し、システムを統合していこうという流れができました。それを受けて図書館と文書館もシステムを統合して、平成26年2月から共同運用することになりました。
さらに、平成27年2月には同じ建物内にふるさと文学館も開館し、上記システムに加わることになりましたが、令和元年度のシステムリニューアルに当たっては、図書館・文書館・文学館の連携をより強めたいと考え、現在のデジタルアーカイブ福井の形となりました。

NDL:なるほど、県としての方針に沿うかたちでシステム統合が進んだのですね。ちなみに、システム面以外でもそのような流れはあったのでしょうか。

福井:はい、図書館と文書館が同じ建物に入っていることもあり、業務面での連携も進んでいます。業務連携は、実務での業務交流などを少しずつ積み重ねていき進めました。
また、館長も以前は、1人ずつ置かれていましたが、兼任になりました。私自身も、司書として図書館に採用されましたが、博物館勤務などを経て、現在は文書館を本務として図書館を兼務しています。これまでに図書館と文書館、両方のシステムに関わる機会を得ました。

NDL:業務やサービスを長いスパンをかけてすり合わせ、横断的に関わる方のお力もあって、システムのリニューアルにつながったのですね。
システム構築を進められる中で印象的だったことはありましたか。

福井:図書館システム(OPAC)は採用している館が多く、いろいろな仕様書を参考にすることができましたが、デジタルアーカイブはお手本が少ないうえ、当館では登録している資料の種類と件数が多く、どのように公開するか悩みながら進めました。
結果的に、宮城県図書館でも実績のあるパッケージを使用しました。それでも、当館の資料の種類が多く、ベンダは調整に苦労したとのことです。


NDL:システムの運用は何人くらいで行われているのでしょうか。

福井:文書館で日常的にシステム運用に携わっているのは11人ほどですが、システムを専任で担当している人はいません。システムの運用は、図書館、文書館、文学館、図書館分館などから人を出してもらって、計8人で行っています。ベンダとのやりとりは、図書館(主に図書館システムとネットワーク)と文書館(主にデジタルアーカイブ)で1人ずつが担当しています。システム運用は負担も大きいので、特定の人に負担が偏らないよう、なるべく皆が1回はシステムに関わるようにしたいと考えています。そのため、構築時のメンバーから担当者を一新しました。

NDL:なるべく多くの人がシステムに関わるように機会を作るというのはよいですね。組織として、長くシステムを稼働させていくために大切なことのように思います。

福井:この他に、次の更新に向けた仕様書等の見直しも行っています。システムリプレースは5,6年毎のため、担当者が変わると、それまでの経緯などがわからなくなってしまいます。そこで令和元年度は1年をかけて、月1回、構築時の担当者が中心となり、仕様書等を見直すフィードバックの機会を設けました。

NDL:リプレース後の振り返りまではできても、仕様書の見直しなど、次のリプレースに向けての準備までは、なかなか手を付けられないな……というのがシステム担当としての実感です。勉強になります。


NDL:貴アーカイブの特徴的な資料・コレクションについて教えてください!

福井:特徴的なコレクションとしては、もともと図書館が寄託を受けてきた越前松平家資料群があり、デジタルアーカイブ全体で力を入れています。
また、カレントアウェアネスでも紹介されましたが、明治期の新聞の画像データを公開しています。他にやっているところはあまりない取り組みだと思います。
そのほか、県の行政刊行物のPDF等を収集して公開しています。これらは、図書館のOPACでも検索でき、図書館資料(紙の資料)とデジタルアーカイブの資料が紐づけられ、相互に参照できるようになっています。
今年度から県内の市立の図書館や博物館がもっているコレクションも登録を始めました。
紹介したいコレクションはまだまだありますがこのくらいで…。

NDL:越前松平家資料群というと松平文庫などでしょうか。デジタル化された松平春嶽関係の資料などもあって、充実していますね。


NDL:貴アーカイブの公開資料はどのように拡大していったのでしょうか。

福井:文書館が主導し、動き始めてから図書館、文学館に声をかけていきました。そのため、構築時からどういった資料をどのように公開するか具体的な方針があったわけではありません。
ただし、構築の大前提として、ユーザ目線を最優先にすることを意識していました。そういった面で、公開資料については、所蔵資料をまとめて見られたほうが良いと考え、新聞画像や松平家資料のアーカイブへの追加を決めました。

NDL:なるほど。ちなみに、メタデータはどのように作成されているのでしょう。例えば、公文書であれば、まとまった文書の単位と、個々の文書の単位の両方が考えられると思いますが、貴アーカイブではどのような単位で作成されているのでしょうか。

福井:原則としては、資料群(文書群)とアイテム(冊子・一紙等)の2階層で構成されています。場合によっては封筒などに複数入ったアイテムの内容が枝番で採録されることもあります。

NDL:貴アーカイブでは、図書館や文書館の他に、県政情報センターの資料も公開されているようですが、こちらとはどのように調整されたのですか。

福井:文書館の主管課は教育庁生涯学習・文化財課ですが、行政組織規則上は情報公開・法制課の分掌にも位置付けられており、その法制課内の県政情報センターとは開館以来、行政刊行物の収集においても密接な関係があります。システム関係は必要となる予算も大きいので、なるべく県の様々な部署にも加わってもらいたいと考えていました。そのような折、県政情報センターのシステムの保守契約が切れるという話を耳にし、システム統合を打診しました。現在は過渡的な措置として、同センター資料の過去受け入れ分はデジタルアーカイブ福井で、新規受け入れ分は図書館システムに登録しています(次のシステム更新時にはすべて図書館システムに移行を予定)。


NDL:貴アーカイブでは、文化庁長官の裁定制度も活用されるなどしてライセンスの表示を進められていますが、その検討経緯等について教えてください。

福井:検討は、文書館が主導で進めました。デジタルアーカイブの世界では、公文書と著作権の考え方がなじんでおらず、ライセンス表示があまり進んでいませんでしたが、福井県文書館が扱っているものには公文書だけでなく、写真や著作物もあるので、権利表示をした方がいいという話になりました。使っているパッケージにライセンスの表示機能があったことも権利表示を進めやすかった一因でした。
ライセンス付与は、網羅的には行っておらず、できるところから順次進めています。県が所有していて明らかに近世以前の資料はパブリックドメインにしていますが、新聞には付与していません。今後の課題と考えています。

NDL:最初から網羅的なライセンス付与を目指すのではなく、できるところから権利表示していくというのはとてもよいと思いました。

NDL:コンテンツについてはお話しいただきましたが、メタデータにライセンスを付与する(利用条件を明示する)ことについてはいかがでしたか。

福井:メタデータにライセンスを付与するという考えになじみがありませんでしたが、NDLから打診され、どうぞ使ってくださいとご回答しました。
メタデータはCC0でご利用いただけます


NDL:国立国会図書館サーチ(以下、NDLサーチ)と連携いただいたきっかけや背景をお聞かせください。

福井:図書館システム(OPAC)の目録については、これまでもNDLサーチと連携(国立国会図書館総合目録ネットワーク(ゆにかねっと)における蔵書目録の連携)していました。また、自分でも仕事やプライベートで調べものをしようと思ったら、NDLサーチを引きます。文書館の調査業務でもNDLサーチを使っています。
このようにNDLサーチとの付き合いがある中で、NDLサーチの連携先が拡大していることは意識しており、先にNDLサーチと連携していた他の都道府県立図書館に追随したいと考えていました。
また、内部で「より大きな巨人の肩に」という声もあり、デジタルアーカイブ福井の資料についてもNDLサーチで検索できるようにしたいと考え、こちらから連携について打診しました。

NDL:連携の打診をいただけるのは大変ありがたいです。ユーザの方と連携機関の資料をつないでいけるよう、今後も使いやすいシステムを目指していきたいと思います。連携対象についてはどのように選定いただいたのでしょうか。

福井:連携の対象については、最初は古典籍のみ連携することを考えていましたが、NDLとも調整を重ねながら検討し、最終的に、文書館を含めた、全ての資料を検索対象とすることにしました。基本的には、提供できるものは提供する、という考えで進めています。

NDL:ありがとうございます。結果として松平家の資料から、福井県の公文書、東京オリンピック時の福井県内の聖火リレーの写真まで、幅広い資料と連携できたと考えております。

NDL:NDLサーチとは、OAI-PMHを使って連携頂いておりますが、具体的な連携方式なども仕様書に書いておられたのでしょうか、それとも、調整の過程で決定されたのでしょうか。

福井:OAI-PMHを使用して外部との連携を実現するということは仕様書で指定していましたが、他は、NDLサーチと国立公文書館と連携するということだけ明記していました。ただし、図書館システムとデジタルアーカイブではベンダ内の部署が違ったため、仕様の調整を進めるのは大変でした。

NDL:DC-NDLのマッピング項目でわかりづらいものはありましたか。

福井:文書館側の担当者として特に苦労した点は思い当たりませんが、ベンダ側では苦労したとのことです。コレクションの種類が多いため、それぞれ異なるデータをDC-NDLとして出力するのが難しかったようです。
また、デジタルアーカイブ福井では、新聞資料について紙面と記事、それぞれにデータベースがあり、いずれもNDLサーチと連携していますが、紙面と記事が相互に紐づいておらず、その記事がどの新聞の記事かわからないという課題があります。今後、修正していければと考えています。


NDL:貴アーカイブの今後の発展として、考えられていること等ありましたら教えてください。

福井:現在は3館によるアーカイブですが、県内のなるべく多くの施設に参加してもらえるよう、県内の博物館や市町の図書館など連携機関をさらに広げたいと考えています。連携先を広げることで、予算面やアーカイブの運用にもメリットがあると考えています。

NDL:県としてもデジタルアーカイブ事業は基盤の一つとして考えられているのでしょうか。

福井:ここ10年ほどで国内のオープンデータ化が進み、県内でも理解が進んできたと感じています。例えば、画像利用に申請が必要という考えは、手続きが増えるだけであまり意味がないのではという認識も広がりつつあります。

福井:また、IIIFについても不十分ながら対応できてきており、今後も少しずつ対象を広げていきたいと考えています。また、「みんなで翻刻」のような、アーカイブを活用するイベントなども行いたいと考えています。


NDL: NDLサーチに今後期待することがありましたら、ぜひ伺わせてください。

福井:仕事やプライベートで文章を書くときに民間のサービスを利用していて、全文検索に可能性を感じています。ノイズが多いのは確かですが、わずかな言葉でも手がかりにして検索できることは大きなメリットだと思います。NDLサーチでも、今後、OCRなどを活用して資料の中身の検索がどこまでできるようになるか、また、当アーカイブでも対応できるかが気になっていますが、そのような流れはあるのでしょうか。

NDL:NDLサーチはメタデータ中心なので、全文検索の流れからは遠いかもしれません。ただ、著作権法の改正に伴い、OCR化を検討している図書館もあるので、今後いろいろと広がり、メタデータとして本文情報が一般的なものになれば、可能性はあるかもしれません。

NDL:連携先のデータベースで新たな試みがなされたときに、その変化に対応してより良いサービスを提供できるようなNDLサーチでありたいと考えています。ご回答いただき、ありがとうございました!今後ともよろしくお願いいたします。


※長野様には、第22回図書館総合展フォーラムでも、NDLサーチとの連携についてご報告いただきました。
以下のページに資料を掲載しています。