江戸時代の商人を調べる
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人文総合情報室 作成
江戸時代の商人を調べるためのツールを紹介します。ここで紹介するツールで調べられる内容は、名前、業種、住所、あるいはそれらを掲載する江戸期の史料名などで、個人の詳細な履歴(生没年など)は含みません。
対象地域は江戸が中心ですが、一部のツールは京都・大坂(大阪)・近江など他の地域を含みます。
書誌事項末尾の【 】内は当館請求記号です。
1. 名前から調べる
- 江戸商人・職人データベース(A)(国立歴史民俗博物館)
「商人名」欄で、名前、屋号から検索できます。さらに「居所」、「職種・所持株」、「現在地」(区名)とかけ合わせたり、一覧表示から選択したりして、絞り込むことができます。『江戸買物独案内』(3-1.)、『諸問屋名前帳』(3-2.)などから採録しています。 - 江戸買物案内キュレーション(人文学オープンデータ共同利用センター)
『江戸買物独案内』(3-1.)から商人名や職種、居所、屋号紋などの画像を抽出したデータベースです。 - 田中康雄 編『江戸商家・商人名データ総覧』全7巻(柊風舎 2010 【D4-J293】ほか)
約74,000件の商家・商人名を採録し、五十音順に排列したものです。『江戸買物独案内』(3-1.)、『諸問屋名前帳』(3-2.)など約140点の史料から採録しています。 - 今井尭 [ほか]編『日本史総覧 5 (近世2)』(新人物往来社 1984 【GB8-122】)
「豪商系図」を収録しています。 - OCU古文書データベース(大阪公立大学)
大阪公立大学が所蔵する江戸時代の大阪の文書などを検索することのできるデータベースです。文書の差出人や受取人、内容欄に人名が記載されていることがあるため、人名で検索すると調べたい人物がヒットすることがあります。
2. 業種から調べる
- 江戸商人・職人データベース(A)(国立歴史民俗博物館)
「職種・所持株」欄で、業種から検索できます。一覧表示から選択することもできます。さらに「居所」、「現在地」(区名)とかけ合わせたり、一覧表示から選択したりして絞り込むことができます。
『江戸買物独案内』(3-1.)、『諸問屋名前帳』(3-2.)などから採録しています。 - 江戸買物案内キュレーション(人文学オープンデータ共同利用センター)
『江戸買物独案内』(3-1.)から商人名や職種、居所、屋号紋などの画像を抽出したデータベースです。 - 西山松之助 [ほか]編『江戸学事典』(弘文堂 1984 【GB8-133】)
付録として「幕府御用達商人・職人一覧」を収録しています。 - 今井尭 [ほか]編『日本史総覧 4 (近世1)』(新人物往来社 1984 【GB8-122】)
「主要問屋一覧」(京都、大坂、江戸)、「江戸幕府御用達町人一覧」を収録しています。 - 竹内理三 [ほか]編纂『角川日本姓氏歴史人物大辞典 26』(角川書店 1997 【GB12-E14】)
京都市の人名辞典です。「文献所見近世町人一覧」を収録しています。
商標
商標に商人の名が記載されていることがあるため、商標を解説する以下のような資料から商人を調べられることがあります。
- 『江戸時代名物集』([1---] 【寄別8-3-2-1】)(国立国会図書館デジタルコレクション)
江戸時代の商標など約60点を貼り込み、手書きの解説を加えたものです。 - [岡田村雄] [編], [林若吉] [校訂]『紫草 : 江戸商標集』([出版者不明] [1916] 【186-174イ】)
上記『江戸時代名物集』の翻刻を収録しています。集古叢書の第2巻として刊行された以下の資料もあります。- 岡田村雄 編, 林若吉 校訂『紫草』(集古会 1916 【186-174】)(国立国会図書館デジタルコレクション)
- 木村捨三 編著『江戸時代商標集』(木村捨三 1944 【W373-13】)
112点の商標の影印を収録、解説しています。同じ資料が、以下の『木村仙秀集』にも収録されています。- 『木村仙秀集 6』(青裳堂書店 1984 【US21-159】
- 花咲一男 編著『江戸の商標』(岩崎美術社 1987 【DC48-E2】)
商品別に、77点の商標の影印を収録、解説しています。
3. おもな江戸期の史料(影印・翻刻含む)
3-1. 買物独案内
江戸時代~明治前期に刊行された商人・職人名鑑です。買い物や飲食をする際に目的の店を探すために使われました。地域ごとに以下の資料があります。
江戸
- 中川五郎左衛門 編『江戸買物独案内 2巻付1巻』(山城屋佐兵衛[ほか] 1824 【123-229】)(国立国会図書館デジタルコレクション)
1824(文政7)年に刊行された、大江戸ショッピングガイドともいうべきものです。
構成と排列は、業種別のいろは順です。
影印版には以下があります。- 中川芳山堂 編『江戸買物独案内』(近世風俗研究会 1958 【672.136-N291e】)別冊に『江戸買物独案内人名索引』(五十音順排列)があります。
- 西山松之助 編『江戸町人の研究 第3巻』(吉川弘文館 1974 【GB374-9】)商品索引(五十音順排列)があります。
翻刻版には以下があります。 - 西山松之助 [ほか]編『江戸学事典』(弘文堂 1984 【GB8-133】)付録に『江戸買物独案内』の翻刻を収録しています。
京都
- 清水九文堂 著『商人買物独案内』(近世風俗研究会 1962 【672.162-Si374s】)
1833(天保4)年刊の『商人買物独案内』の影印版です。
大坂(大阪)
1820(文政3)年、1824(文政7)年、1832(天保3)年に、『商人買物独案内』(別タイトル『浪華買物独案内』)が刊行されました。『江戸買物独案内』と同じく構成と排列は業種別のいろは順です。
- 『商人買物獨案内』(中川五兵衛[ほか4名] 1820 【W373-N50】)
- 中川芳山堂 著『商人買物独案内 : 大阪之部』(近世風俗研究会 1962 【672.163-N291a】)
1824(文政7)年刊の『商人買物独案内』の影印版です。 - 『大阪経済史料集成 第11巻 (新田開墾雑纂.繁花風土記.浪華買物独案内.大阪商工銘家集.資料目録.総目次)』(大阪商工会議所 1977 【DC98-6】)
1832(天保3)年刊の『商人買物独案内(浪華買物独案内)』の翻刻を収録しています。
また『商人買物独案内』のほかに、以下のような『大坂商工銘家集』という名鑑もあります。
- 松岡賓翁『大坂商工銘家集』(松岡利兵衛 1846 【199-176】)
別タイトルは『浪速商工名家集』、『浪華諸匠諸商買物独案内』です。 - 『大阪経済史料集成 第11巻 (新田開墾雑纂.繁花風土記.浪華買物独案内.大阪商工銘家集.資料目録.総目次)』(大阪商工会議所 1977 【DC98-6】)
『『大坂商工銘家集』』の影印を収録しています。
『商人買物独自案内』も『大坂商工銘家集』も、国書データベース(国文学研究資料館)でデジタル画像を閲覧できます。
甲府
- 『甲府買物独案内』(伊勢屋宗助 1872 【198-469】)(国立国会図書館デジタルコレクション)
明治期に刊行されました。
3-2. 『諸問屋名前帳』
- 『諸問屋名前帳 57巻』(写 【811-21】)(国立国会図書館デジタルコレクション)
1851(嘉永4)年から幕末までの、商人仲間組合の登記簿にあたる資料です。
以下の資料に、一部の翻刻が収録されています。- 『諸問屋名前帳 : 細目 第1-4』(国立国会図書館閲覧部ほか 1961-1964 【672.136-Ko548s】)
国立国会図書館閲覧部 編『諸問屋名前帳』(湖北社 1978 【DC48-69】) - 『旧幕引継書目録 第2冊』(文生書院 2001 【A111-G112】)
- 『諸問屋名前帳 : 細目 第1-4』(国立国会図書館閲覧部ほか 1961-1964 【672.136-Ko548s】)
3-3. 『万買物調方記』
- 『万買物調方記』(刊 [1692] 【本別13-19】)(国立国会図書館デジタルコレクション)
江戸初期から中期までの江戸、京都、大坂(大阪)の名店のリストで、各店名に商人名が併記されています。
以下の資料に影印が収録されています。- 花咲一男 編『諸国買物調方記 : 江戸十組問屋便覧・東京買物独案内』(渡辺書店 1972 【DC48-24】)
長友千代治 編『重宝記資料集成 第31巻 (商業・地誌 1)』(臨川書店 2007 【GB22-H112】)
翻刻は以下の資料に収録されています。 - 『未刊文芸資料 第2期 第4-9』(古典文庫 1952 【081-M465】)第4-7
- 花咲一男 編『諸国買物調方記 : 江戸十組問屋便覧・東京買物独案内』(渡辺書店 1972 【DC48-24】)
3-4. 『諸問屋名鑑』・『江戸十組問屋便覧』
原本は当館未所蔵です。
- 住田正一 編『海事史料叢書 第2巻』(巌松堂書店 1929-1930 【593-17】)(国立国会図書館デジタルコレクション)
1833(天保4)年刊の『諸問屋名鑑』(江戸十組菱垣廻船積仲間の問屋の名前をいろは順に記載したもの)の翻刻を収録しています。 - 花咲一男 編『諸国買物調方記 : 江戸十組問屋便覧・東京買物独案内』(渡辺書店 1972 【DC48-24】)
1813(文化10)年刊の『江戸十組問屋便覧』の影印を収録しています。江戸後期の商人を調べられます。
3-5. 見立番付
「見立番付(みたてばんづけ)」は「変わり番付」ともいい、相撲番付の体裁(木版縦一枚刷)にならい、「当世はやり物見立」や「諸国産物見立相撲」など、いろいろな事物に階級をつけた一覧表を指します。
長者番付や商人・商業などに分類されている見立番付で、商人(大商人)の名前を調べられます。
- 林英夫, 芳賀登 編『番付集成』(柏書房 1973 【YP5-47】)
見立番付の影印を収録しています。下巻に「総索引」があります。 - 青木美智男 編『番付集成:決定版』(柏書房 2009 【YP5-J94】)
上記『番付集成』刊行後に発見された見立番付について、影印と翻刻(活字)の両方を見開きで収録しています。