化学物質の有害性について調べる
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科学技術・経済情報室 作成
化学物質は、洗剤・香料といった「生活用品」、工業生産の過程で用いられる「工業薬品」、また「医薬品」、「食品添加物」、「農薬」など、様々な用途に利用されています。身の回りの有害な化学物質としては、工業生産や廃棄物処理の過程で生じるダイオキシン類、車の排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOX)や硫黄酸化物(SOX)などが挙げられます。
ここでは、これら化学物質に関する環境モニタリングの結果や有害性評価、取扱いなどに関する調べ方を紹介します。
なお、「医薬品」、「食品添加物」、「農薬」については、それぞれリサーチ・ナビ「薬学について調べる」、「食品添加物について調べる」「農薬について調べる」をご参照ください。また、化学物質の発火などの危険性については、リサーチ・ナビ「燃料・爆発物・燃焼工学について調べる」をご参照ください。
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1. 化学物質の有害性やモニタリング結果を調べるための参考図書
- 『化学物質有害性評価書シリーズ』(化学工業日報社 2007-2008)
54品目の化学物質の同定情報、一般情報(名称、CAS番号、分子式など)、物理化学的性状(融点、比重、解離定数、土壌吸着係数、溶解性など)、発生源情報(製造量、輸入量など)、環境中運命、環境中の生物への影響、ヒト健康への影響を掲載しています。 - 『初期リスク評価書シリーズ』(製品評価技術基盤機構化学物質管理センター 2007-2009)
化学物質150品目について、環境中運命(環境中の動態・安定性など)、環境中の測定濃度と曝露評価、水生生物・陸生生物・ヒト健康への影響やリスク評価結果などをまとめています。150品目の評価書(1品目につき1冊)と『化学物質の初期リスク評価指針』【PA31-J5】の全151冊から成ります。 - 『化学物質の環境リスク評価 = Environmental risk assessment of chemicals』(環境省環境保健部 2002- 【Z74-D512】)
環境省(旧環境庁)が化学物質の環境リスク初期評価を取りまとめたもので、ヒトの健康および生態系に対する有害性について、これまでに405物質の評価を行っています。最新巻である第21巻の巻末に、これまでに評価した物質一覧と、その掲載巻号を掲載しています。
上記3資料の内容は、化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)にも収録されています。NITE-CHRIPについては「3.インターネット情報源・データベース」をご参照ください。 - 『日本の大気汚染状況』(環境省水・大気環境局編集 【Z43-46】)
二酸化窒素(NO2)、二酸化硫黄(SO2)、微小粒子状物質(PM2.5)、ベンゼン、トリクロロエチレンといった有害汚染物質の大気中における測定結果について、都道府県の測定局別に掲載しています。なお、環境省ホームページ内「大気汚染状況」で全文が公開されています。 - 『環境年表』(国立天文台編 丸善出版 隔年刊)(目次例: 第7冊(2021-2022))
大気、水、廃棄物、自然環境などに関する各種統計を掲載しています。また、「産業・生活環境」の項目で、有害化学物質のモニタリング調査結果などを一覧表で掲載しています。 - 『理科年表』(国立天文台編 丸善 年刊 【Z43-469】)
- 『理科年表 机上版』(国立天文台編 机上版 丸善 年刊 【Z43-470】)(目次例: 2021)
自然科学分野全般を網羅した便利なデータブックです。「環境部」の「化学物質・放射線」の項目で、日本産業衛生学会の勧告値に基づく化学物質の許容濃度や、国際がん研究機構(IARC)が発がん性を認めた化学物質の用途・曝露経路などを、一覧表で掲載しています。
なお、化学物質の毒性については、リサーチ・ナビ「薬学について調べる」もご参照ください。
2. 化学物質の取扱いを調べるための参考図書
- 『新毒物劇物取扱の手引』(時事通信出版局 2018.6 【AZ-581-L251】)
毒物・劇物の取扱いや関連法規などを解説しています。「各論」の章では、毒物・劇物ごとに、その性状や用途、毒性、応急処置基準、廃棄基準などを記載しています。巻末に和文・欧文索引があります。出版者のホームページから目次を閲覧できます。また、正誤表と追補版も公開されています。 - 『新・公害防止の技術と法規』(産業環境管理協会 年刊)
公害防止管理者等国家試験受験対策用テキストとして作成された図書です。ダイオキシン類編、大気編、水質編、騒音・振動編があり、公害防止の観点から、有害物質の人体影響や排出状況のほか、関連法規を解説しています。 - 『実務者のための化学物質等法規制便覧』(2023年版 化学工業日報社 2023.7 【AZ-435-M29】)
化学物質管理に関連する国内の54法律の要点のほか、関連する国際条約、GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)、SDS(安全データシート)制度、輸送関連の諸法規などを解説しています。「第7章 参考資料」では、化学物質の許容濃度や国際がん研究機関(IARC)の基準に基づいた発がん性分類リスト、感作性物質や生殖毒性物質の一覧などを掲載しています。巻末に、化学品名索引、項目別索引があります。出版者ホームページから目次を閲覧できます。 - 『化学物質取扱いマニュアル』(改訂 労働調査会 2013.4 【PA31-L53】)*
化学物質の有害性、危険性について、化学物質の知識がない人でも読めるように解説した資料です。GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)および化学物質等の表示・文書交付制度(厚生労働省)に対応しています。また、巻頭に「GHSで使用される絵表示解説」や「図表示早見表」などがあります。
3.インターネット情報源・データベース
- 化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)(製品評価技術基盤機構)
製品評価技術基盤機構(NITE)が化学物質のリスクに関するデータを収集・整備し、無料公開しているデータベースです。化学物質の番号(CAS登録番号や化審法番号など)や名称、構造式から、目的の物質の有害性情報や法規制情報等を検索することができます。 - 化審法データベース(J-CHECK)
化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和48年法律第117号。以下「化審法」)にかかわる厚生労働省、経済産業省及び環境省が作成するデータベースです。名称、CAS登録番号、MITI番号(官報公示整理番号)、構造式で化学物質を検索し、化審法上の規制分類情報などを調べることができます。 - IARC Monographs on the Identification of Carcinogenic Hazards to Humans(国際がん研究機関)
世界保健機関(WHO)の専門機関である国際がん研究機関(IARC: International Agency for Research on Cancer)は、物質ごとにヒトに対する発がん性を4段階(グループ1、2A、2B、3)で評価し公表しています。List of Classificationsに、各物質の4段階評価や、評価・分析の詳細を掲載したモノグラフの巻号が記されています。また、List of Classifications by cancer siteでは、十分(sufficient)または限定的(limited)に発がん性のエビデンスを有する物質について、がんの部位別にリスト化しています。 - Reaxys(当館契約データベース:館内限定)
化学構造式、物質名、CAS登録番号などから、化学物質の物性データや出典元となる文献情報を入手できます。化学物質の有害性については、「Pharmacological Data(薬理データ)」や「Ecotoxicology(生態毒性)」、「Exposure Assessment(曝露評価)」、「Concentration in the Environment(環境中濃度)」などを選択して、調べることができます。