古典籍のつくり
描かれた動物・植物―江戸時代の博物誌―
「さまざまな情報が盛り込まれている書物も実にさまざまなバリエーションがあります。ここではその装丁の仕方から多種多様な書物の形態を見てみましょう。なお、装丁の名称には異説もあります。参考程度の取り纏めとご理解ください。
一枚物・畳み物
一枚物(摺り物とも)とは、資料を折らず畳まず1枚のままのものをいいます。それを畳んだものは畳み物と呼び、前後別々の表紙をつけたものもあります。どちらにしても記載できるスペースが限られ、長大な文書には適しませんが、地図や図表など全体を一覧するには好都合な形態です。今回の展示では、「小おもと名寄」や「八翁草」、「水虎十二品之図」、「姉羽鶴之図」、「ガランテウ図」などがこの一枚物・畳み物にあたります。また、「植物図説雜纂」や「錦窠禽譜」などは、資料の中にたくさんの一枚物が貼り込んであります。
巻子本(かんすぼん)
巻子本は料紙を横に継いで記録量を増大させたものです。「外国珍禽異鳥図」や「外国産鳥之図」、「禽鏡」のような巻物がこれにあたります。書物の装丁としては最も古い簡便な形態で、巻き込むことにより収納スペースも小さく済みますし畳まないので折り目が脆くなって切れてしまう心配もありません。反面、途中や巻末を見たいときでも初めから順々に広げていかないとならず閲読には不便ですし、見終わってから巻き戻すのもなかなか面倒です。同じ形態でも「[享保十四年渡来]象之図」や「海獣図」など、縦方向に開くものは掛け軸と呼ばれます。
折本(おりほん)
折本(帖装本)は、巻子本のマイナス面である繙読の不便を解消するもので、巻物を初めから同じ幅に折り畳み前後に表紙を付けたものです。「勇魚取絵詞」や「異魚図賛」、「植物写生図帖」などがこれです。この前後の表紙をひと繋がりにして背の部分を包み込むようにしたものを旋風葉と呼ぶこともあります。
蝴蝶装(こちょうそう)
蝴蝶装(粘葉装)は、本文用紙の字面を中に折って重ね谷折りにし、用紙の折り目の部分で糊付けしたものです。一枚ずつ開くとちょうど蝶が羽を開いたようになるところからの命名といわれています。
綫装本(せんそうぼん)・袋綴じ
蝴蝶装を改良したものが綫装本です。糊で用紙を繋ぐのではなく、紙縒と糸とで綴じてあります。また、本文用紙の字面を外表にして紙を重ねて、いわゆる袋綴じにして、その上を厚手の紙で前後別々に表紙をつけたものです。古典籍の装丁の中で最も多いのがこの綫装本です。「本草綱目」や「耕織図」などがこのタイプです。
列帖装(れつじょうそう)
列帖装は、本文用紙を数枚重ね合わせて谷折りにして、折り目に綴じ穴をあけて綴じ合わせたものを次々に綴じ繋いでゆくものです。折り目が背にくる点では蝴蝶装に似ていますが、糊ではなく糸で、しかも数枚ずつ重ね合わせた折ごとに綴じています。刊本(印刷された資料)よりも、手書きの資料(写本、稿本)に多く用いられています。
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